学園長交代
そして翌日、オレとリリーとエルメスは王立学園に出向いた。王立学園は10歳~15歳の6年間だ。そう考えると、オレやリリーと同じくらいの年の者達もいる。ただ、種族によっては年齢があって無いようなものだ。
「おい! 学園長の隣にいるのって、もしかして魔王様か?」
「おい! 魔王様だぞ!」
「魔王様が学校に来たぞー!」
なんかもの凄い歓迎ぶりだ。今日のオレは、ブラッドに言われて黒いマントを羽織り、いかにも魔王のような姿をしている。
「いよいよ始まるわよ。」
リリーがオレに声をかけてきた。校庭には300人ほどの生徒達がいる。それぞれの担任が生徒達を整列させている。すると、どこからともなく学校全体に大きな声が響き渡った。
「これより全校集会を始める。まず、今日は魔王陛下がおいでだ。魔王陛下より話をしていただく。」
オレは、わざと魔力を少し解放し、威圧するように壇上に登った。生徒達の顔が楽しみ、喜びの顔から恐怖へと変化していく。
「諸君。おはよう。今日はオレからみんなに大事な話がある。よく聞くがいい。」
リリーとエルメスは平然としているが、教師達もオレの魔力に圧倒されている。
「お前達は、今、このオレの魔力に恐怖を感じているはずだ。当然だ。それは、オレがこの世界で最強だからだ。だが、本当にそれでよいのか? それが最強の者のやることなのか? よく考えろ!」
みんな、オレが何を言っているのかわからないようだ。
「強いものが弱いものをいじめる。それが強者のやることか? 違うだろう? 強者なら弱者を助けろ! 食べ物がなくて困っている者がいれば食べ物を分け与えろ! 寝る場所がない者には寝る場所を提供しろ! 転んでいる者がいれば手を差し伸べろ! それこそが強者だ! 違うか!」
何人かの生徒達が下を向いた。
「弱者をいじめるものは自分が強いとうぬぼれているからだろう。そんな者はこの学校にいる資格はない! このアスラ魔王国には不要だ! もし、それでも自分は強いと思うものがいるなら、いつでもオレが相手になってやろう!」
オレは手を上空に向け魔法を発動する。すると、真っ黒なドラゴンが巨大な口を開けて彼らの上を飛び回り、どんどん上昇していく。オレはそのドラゴンに向けて、さらに魔法を放つ。すると、オレの手から眩しい光がドラゴンに向かって進んでいった。
「ドッガーン」
ドラゴンが砕け散ると同時に、空から暖かい光の粒子が振ってくる。その光の粒子はものすごく幻想的だ。まるで、母に抱かれるかのような暖かさと優しさに包み込まれていく。自然と生徒達の目から涙がこぼれる。
「オレは平和が好きだ。この世界を平和にしたい。それだけだ。」
オレは魔力を戻して壇上から降りた。オレの熱い思いが伝わったのか、会場は静まり返っていた。続いてリリーが壇上に上がった。
「パーン」
リリーが両手で大きな音を鳴らした。すると、生徒全員がリリーに注目した。
「我らの魔王様は世界の平和をお望みだ。我らは魔族であることを誇りに思い、魔王様とともに世界の平和を実現しようではないか。この学園で、その第一歩を踏み出して欲しい。」
リリーの言葉で会場内から歓声が上がる。
「魔王様~!」
「学園長様~!」
「アスラ! アスラ! アスラ!・・・・・」
最後はアスラ魔王国の大合唱だ。しばらくして、リリーが話し始める。
「諸君に伝えたいことがある!」
すると、生徒達は全員がリリーに注目する。
「本日をもって、私は学園長を交代する。新たな学園長を紹介しよう。」
リリーの突然の言葉に生徒達は大混乱だ。尊敬する学園長が急に交代すると言い出したのだから無理もない。エルメスが壇上に上がり、リリーの横に立った。
「新たな学園長は、『森の最高の賢者』と言われるエルメス先生だ~!」
エルメスが自己紹介を始めた。
「私はダークエルフ族だ。だが、この学園ではすべての種族を平等に扱う。そして、ここにいる君達が卒業するときには、魔王様の役に立てるだけの力を身につけられるように指導したいと思う。」
エルメスが両手を上にあげると、光輝く弓矢が現れた。そして、光り輝く矢を放つと、空からパラパラと光の雨が降って来た。それは、魔王であるオレが生徒達にはなった魔法と同じものだった。あの一瞬で、エルメスはオレの魔法を解読して真似をしたのだ。生徒達は、神の御業とも思えるオレの魔法をエルメスが使ったことに驚愕した。
「諸君! 私とともに研鑽しようではないか!」
「オオ———————!!!」
「エルメス! エルメス!・・・・・・・・」
会場内にはエルメスコールが鳴り響いた。そして、全校集会も終わり、オレとリリーとエルメスは学園長室に行った。
「まさか、エルメスにオレの魔法を真似されるとは思わなかったよ。」
「私などまだまだです。私の魔力では、魔王様のようにシャドウドラゴンを作り出すことなどできませんから。」
「そんなことはないさ。エルメスの魔力量はかなり多いと思うよ。ただ、魔力操作が十分でないだけさ。」
「そうですか。自分ではかなり訓練を積んできたつもりなのですが。」
「ちょっと手を貸してごらん。」
オレは、かつてリリーが魔法を教えてくれた時と同じようにエルメスの手を掴んだ。
「いくよ!」
オレは、魔力を少しづつ流していく。エルメスの手もオレの手も光り輝き始めた。
「どう?」
「はい。魔力がものすごい速さで、体中を駆け巡っています。」
オレはエルメスの手を放して説明した。
「エルメスの魔力量はものすごく多いんだ。だから、どうしても魔力の動きが遅くなってしまう。だから、今みたいに魔力の循環速度を上げられれば、信じられないほどの魔法を放つことができるさ。」
エルメスはオレの顔を見て茫然としている。
「どうしたの?」
「魔王様は私よりはるかに魔力量が多いはずですが、今の速さで循環させているのですか?」
「今のはほんの少しだけだよ。本気で循環させたら、エルメスの身体が消滅してしまうからね。」
「恐れ入りました。魔王様。私はあなた様にお使いできて、本当に幸せです。どうか、私にこれからも魔法の深淵をお教えください。」
隣ではリリーがニコニコとほほ笑んでいる。そして、オレとリリーは学園を後にした。学園の出口までくると、学園の全生徒がリリーに別れの挨拶をしに来ていた。リリーも花束を贈られ、目から涙を流している。
「みんな。元気でね。また来るからね。」
「はい!!!」




