表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王シルバーの異世界冒険  作者: バーチ君
アマゾル大陸
48/137

魔王城でのひと時

 オレはリリーを連れてアマゾル大陸に行くことを決めた。だが、リリーはアスラ魔王国の文部大臣だ。後任を選ばなければリリーを連れて行くことができない。そこで宰相のブラッドに相談した。すると、ブラッドはしばらく考えてから答えた。



「ダークエルフ族のエルメスがふさわしいと思います。ダークエルフ族は本来エルフ族の血を引いています。長生きにして、知識の宝庫のような存在です。彼ならば、見事役目を果たすことができると具申します。」


「わかった。すぐにエルメスを呼んでくれ。」


「畏まりました。」



 しばらくして、エルメスがやって来た。以前の尖った部分は見られない。本来ダークエルフ族は、バンパイア族と同じで紳士的な種族だ。



「お呼びでしょうか。魔王様。」


「よく来てくれた。エルメス。明日からお前はこのアスラ魔王国の文部大臣だ。明日、オレは王立学園に行くつもりだが、そこに同席して欲しい。生徒達にお前の紹介をしたいんだ。」



 今まで無役だったエルメスの顔が輝いた。そして、感無量の様子で泣き始めた。



「どうしたのだ?」


「申し訳ございません。各種族の代表が幹部としてそれぞれ重要な役割を与えられる中、同じ幹部の私だけが無役でしたので、みんなが羨ましくて羨ましくて。これで、やっと私もこの国のため、魔王様のためにお役に立つことができます。」


「お前にそんな思いをさせているとは思わなかった。すまなかったな。」


「何を仰せですか。魔王様。魔王様が謝ることはありません。魔王様は適材適所で役割をお決めになりました。私にその力がなかっただけのことでございます。」


「そうか。そう言ってくれると助かる。」



 この状況の中、本当は忘れていただけなんて口が裂けても言えない。ここで、ブラッドがエルメスに声をかけた。



「エルフ族もダークエルフ族も『森の賢者』と呼ばれる種族だ。魔王様がお前に大いに期待しているのだ。頑張れよ。エルメス!」


「ありがとうな。ブラッド!」



 男の友情もいいものだ。あらためてそう思う瞬間だった。それから、オレとリリーは夕食を食べるために食堂に行った。そこにはローズおばあちゃんと獣人族の3人娘がいた。



「おや。リリーにシルバーじゃないか。丁度よかった。久しぶりに一緒に食べようかねぇ。」


「ローズおばあちゃん。庭の野菜はどう?」


「ありがとうよ。たくさん採れるさね。今日、これから出てくる野菜もわしが庭で育てた物じゃよ。」


「よかった~。」


「何じゃ。シルバー! わしのことを心配してくれていたんか? 心配せんでもいい。わしら堕天使族には寿命があって無いようなもんじゃからな。」


「そうだけどね。」



 すると、ローズおばあちゃんが隣の席のミーアの頭をなでた。



「懐かしいのう。リリーもシルバーも以前はこうじゃったからな。」



 頭をなでられたミーアは不思議そうな顔でローズおばあちゃんを見た。



「魔王様もリリー様も小さい時があったのかにゃ?」


「ああ、そうだよ。お前達ぐらいの時があったんじゃよ。」


「へぇ~」



 すると、ここでキャロットが爆弾発言だ。



「私、大きくなったら魔王様の奥さんにしてもらうぴょん。」


「ずる~いにゃ。私も魔王様の奥さんになりたいにゃ!」


「私もですコン。」



 なんか賑やかな食卓だ。そんな中、料理が運ばれて来た。どれも美味しそうだ。一口食べると懐かしい味だ。



「どうだい? シルバー!」


「もしかして、この料理は・・・」


「そうさ。わしがこの城の料理人達に教えたのさ。」



 自然とオレの目から涙が溢れる。オレがこの世界で初めて食べた味だ。記憶を失って不安だらけのオレを、暖かく迎え入れてくれたあの優しい味だ。



「魔王様が泣いてるぴょん。」


「泣き虫魔王様にゃ。」


「泣かないでコン。」


「ほら、シルバー! せっかくの料理が冷めちゃうわよ!」



 オレはリリーに言われて再び食べ始めた。そして、食後にはデザートが出てきた。冷たく冷やされた甘いクリームだ。もの凄く美味しい。獣人族の子ども達も顔をクリームだらけにしながら食べている。リリーの顔にもクリームがついている。オレはリリーの鼻に付いたクリームを手で取って食べた。すると、子ども達が騒ぎ出した。



「リリー様だけずるいにゃ!」


「私のも食べて欲しいぴょん。」

 

「私は直接舐められたいコン。」



 なんかヨーコだけ発想がおかしい。



 みんなで食事をした後、それぞれの部屋に戻った。オレは久しぶりにゆっくりと風呂につかっている。なんせこの魔王城の風呂は室内にあるが、空間魔法で拡張してものすごく広くなっている。しかも、露天風呂のような作りとなっているのだ。まるで森の中にいるように、たくさんの木々が生えている。すると、湯気の向こうから誰かが入って来た。よく見るとリリーだ。



「キャー」



 リリーはオレを見るとタオルで前を隠した。でも、しっかり見えたけどね。



「何でシルバーがいるのよ~!」


「何でって言われても、ここは魔王城だからね。」


「仕方ないわね~!」



 そのまま出るかと思いきや、リリーは後ろ向きで軽く体を流して浴槽に入って来た。



「懐かしいわね。昔はこうして、私とシルバーとおばあちゃんで一緒にお風呂に入ったもんね。よく背中を洗いっこしたよね。」


「そうだね。でも、少しは成長したじゃないか。」



 真っ赤な顔でリリーが怒鳴った。



「当たり前でしょ! 私だってもう15歳よ。堕天使族でも成人なんだからね。」

 

「そうなんだ~。でも、セリーヌはこれからどうするのかな~? 彼女は時間を止めてるんだろ?」


「そうね。彼女は自分の時間を止めてるのよね~。」



すると、どこからともなく声が聞こえた。



「再び、時間を動かしたぞ!」



 声のする方を見ると、奥の湯気の中からセリーヌの顔が見えた。



「いつからいたのさ。」


「お前が入ってくる前からだな!」


「何で黙ってるのさ!」


「恥ずかしいじゃないか!」



 すると、オレとリリーがハモッた。



「えっ————! 恥ずかしい————?」


「当たり前だ。俺も女だぞ!」


「なら、リリーと同じようにこれから成長するんだね!」


「シルバー! お前、失礼だぞ!」


「そうよ! 失礼よ!」



 リリーもセリーヌの味方だ。だが、その味方意識も一瞬で崩れる。



「残念だが、俺はシルバーと同じで自分の姿をいくらでも変えられるんだ。小娘のリリーと一緒にするな。」



 リリーが落ち込んでしまった。



「大丈夫さ。リリー。リリーだっていつか成長するんだし。」


「バシッ」



 リリーが怒って出て行ってしまった。



「お前は女心をもっと勉強した方がよさそうだな。」



  セリーヌも出て行ってしまった。オレは一人で寂しく、のぼせるまで風呂にはいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ