獣人族の大陸アマゾルの現状
アスラ魔王国の王都アテナを散策していたオレとリリーは、国民達から『魔王様』と騒がれたが、その騒ぎを見事に片づけ、再び2人で大通りを歩きはじめた。
「やっぱりシルバーは凄いわね。今日の会議もすごかったけど。」
「別に大したことじゃないさ。それよりも、こうして一生懸命生きている人達の方が偉いと思うよ。」
「変わらないわね。シルバー。」
「何が?」
「昔からあなたは謙虚なのよ。魔王になったんだから、もっと偉そうにすればいいのに。」
「偉そうなオレと今のオレと、リリーはどっちが好きなんだ?」
「今のシルバーに決まってるでしょ!」
「そういうことさ。オレはリリーに嫌われたくないからね。」
リリーの握る手に力が入った。
「あの店何?」
オレが指さした方を見ると、そこにはホルスの絵が描かれた店があった。
「あそこは美味しいデザートがあるのよ。料理も美味しいから入ってみる?」
「ああ。行こうか。」
中に入ると甘い匂いがする。何か懐かしい匂いだ。店の中に入ると、様々な種族がいる。驚いたことにトロール族の女性もいた。
「リリー! どうしてトロール族がいるの? どうやって体を小さくしたのさ?」
「店の前に大きな水晶があったでしょ? あの水晶は実は魔石なんだよね。あの魔石に、シルバーがトロルドさんに与えた指輪と同じ魔法が記憶されてるのよ。だから、あれに触るとトロール族だけは体の大きさが変えられるのよ。」
「誰が考えたの?」
「おばあちゃんよ。」
「もしかしてローズおばあちゃん?」
「そうよ。伊達に歳はとってないわよね。」
「もしかして、学校にも設置してあるの?」
「当然じゃない。そうしなければトロール族はどこにも入れないでしょ!」
「そうだよな~! そこまで考えてなかったな~。」
「他にもあるのよ。」
「何?」
「あそこの女性を見て! 彼女達はアラクネ族よ!」
「えっ?」
「ローズおばあちゃんが、アラクネ族が振れると人化できるような魔石を作ったのよ。」
「やっぱり、ローズおばあちゃんは天才だな。」
「今度言っとくわね。」
「いいよ。自分で言うから。」
そんな話をしていると料理が運ばれて来た。やはり、リリーは肉料理だ。オレにはバランスよく、肉と野菜が乗っている皿が運ばれて来た。
「美味しいな~。」
「そうでしょ! ここのメニューはほとんど食べたけど、どれも美味しいのよ。」
オレがいない間、何をしていたのだろうかと思ってしまった。食事を終えた後、噴水広場のベンチで休んでいると、獣人族の3人娘がバンパイア族のメイドにつれられて見学していた。オレを見つけると、一目散に駆け寄って来た。
「魔王様~! あの屋台のお肉食べたいにゃ!」
「私も食べたいコン!」
「私はあっちの屋台の野菜ステッキがいいぴょん。」
しょうがないので、オレはそれぞれの屋台で買って3人娘に渡した。
「申し訳ありません。魔王様。」
「いいよ。それより、子ども達の相手は結構大変でしょ?」
「そんなことないですよ。私は子どもが好きですから。」
なんか、メイドがオレを見てうっとりしている。リリーがオレの尻を摘まんだ。
「痛ッ」
「どうかなさいましたか?」
「いいや。何でもないさ。それより、子ども達はオレ達が城まで連れて帰るから、もういいよ。」
「そうですか。なら、私は先に城に帰っています。」
「バイバ———イ」
ミーア、キャロット、ヨーコがメイドに手を振っている。
「魔王様。この街ってすごく平和だぴょん。」
「そうだな。獣人族の街は違うのか?」
すると、3人が少し考えこんでから話し始めた。
「獣人族には2つの国があるにゃ。ライオネル王国とティガ王国にゃ。仲が悪くていつも戦争してるにゃ。」
3人の顔が悲しそうだ。
「昔から仲が悪いのか?」
「違うコン。私は生まれてなかったけど、昔は仲よくしてたみたいだコン。」
3人は顔を見合わせた。
「『知恵のある者』っていうのが現れてからにゃ。」
ここまで黙っていたリリーが聞いた。
「『知恵のある者』って何なの?」
「多分、人族だぴょん。いろいろなことを教えてくれるぴょん。肥料の作り方や井戸の掘り方、魔法の使い方、いろんなことを教えてくれるぴょん。」
「どうしてそれで、2つの国が争うんだ?」
「一番は領地の問題にゃ。肥沃な川沿いはどっちのものにゃとか、魔石がとれる魔鉱山はどっちのものにゃとか、争ってるにゃ。」
「『知恵のある者』はどっちの国に暮らしてるんだ?」
「どっちにも屋敷を持ってるコン。いつも待遇のいい方に行くコン。だから、王様達の貢物がどんどんエスカレートしてるコン。」
「噂だと、女や子どもが貢がれてるぴょん。」
オレはリリーを見た。リリーも同じ考えだろう。
「放っておけないわね。」
「そうだな。」
そして、その日は3人の子ども達を連れて城に戻った。すると、ゲーテがやって来た。
「魔王様、3人の面倒を見ていただいてありがとうございました。」
「大丈夫さ。それより、いろいろと勉強になったよ。ブラッドを謁見の間に呼んでくれるかな。」
「畏まりました。」
オレは謁見の間で、玉座に座って待っている。その隣にはリリーが立っていた。
「何かございましたか? 魔王様。」
「獣人族の国が争っているようなんだ。オレが行ってみようと思うんだけど。」
「ならば、私の使い魔に調べさせましょう。」
「頼む! それと、リリーを連れて行きたいんだけど。誰か文部大臣を任せられるものはいないか?」




