王都アテナ散策
第1回の報告会議が終了した。幹部達を中心にすべてが順調にいっている。オレは、会議が終了した後、リリーと訓練場に向かうことにした。ロンに頼まれたゴーレムを作るためだ。訓練場に行くまでの間、今後の予定をリリーに話すことにした。
「リリー! 保護している獣人族の子ども達を家に帰してやりたいんだけど、一緒に行くかい?」
「いいの?」
「ああ。また、一緒に旅をしようか。」
リリーの目から大粒の涙が流れた。そして、オレに身体を預けてきた。オレもしっかりと受け止め抱きしめた。
「ウッホン」
咳払いの方向を見るとセリーヌがいた。ニタニタ笑っている。
「熱いのはいいけど、俺の存在にも気が付かないとはな。それに、シルバーはロザンヌとかいう人間の娘と仲良かったではないか。」
セリーヌがリリーの前で爆弾発言をした。リリーの顔がどんどん変わっていく。
「どういうこと? シルバー!」
さらにセリーヌが追い打ちをかける。
「確か、シルバーはロザンヌと手をつないで王都イスカントを歩いていたよな。」
「シルバー!」
「違うから。誤解だから。リリー! 落ち着いて!」
オレはいろいろと言い訳を考えたが、何も思いつかない。こうなったら最後の手段だ。オレはリリーを抱き寄せた。そして、頬にキスをした。
「ずるいわ! シルバー!」
「いいじゃないか。また、一緒に旅ができるんだから。」
そんなこんなでひとまずリリーは落ち着いた。そして、オレとリリーは現在訓練場にいる。訓練場にはロンと兵士達が大勢いた。オレの姿を見るとロンが駆け寄ってきた。
「魔王様。早速来ていただきありがとうございます。」
「ロンが一生懸命だからね。それに応えたかっただけさ。」
「ありがとうございます。」
ロンも褒められて嬉しそうだ。
「じゃあ、作るよ。」
『クリエイト』
オレが魔法を発動すると、地面から黒い靄が現れた。それがどんどん形を作っていく。そしてしばらくすると5mほどのゴーレムが現れた。オレは以前ダンジョンで討伐したリッチキングの魔石を空間収納から取り出して、ゴーレムの身体に埋め込んだ。ここからが大事だ。魔石にオレの魔力を注ぎ込む。あまり多いと前回のような事態になってしまう。かといって少なすぎると弱すぎて訓練にならない。オレは注ぐ量を気にしながら魔力を魔石に送った。
「できたよ。心配だから、ロンの指示に従うように魔石に書き込んだから。」
「ありがとうございます。さすがは魔王様です。」
兵士達は全員が驚きのあまり固まってしまった。
「おい! 何をしている! 魔王様が作ってくれたんだ! すぐに訓練を始めるぞ!」
「ハッ!」
兵士達がゴーレムに突っ込んでいくが、とても歯が立たない。中には口から炎を出して魔法で攻撃する者もいたが、ゴーレムはビクともしない。
「シルバー! 強すぎなんじゃない?」
「そんなことないと思うよ。」
オレは空間収納から剣を取り出して、ゴーレムに切りかかった。
「シュン」
「ドサッ」
ゴーレムの左腕が地面に落ちた。
「オオ——————!!!」
兵士達は驚いている。困った顔をしているのはロンだ。
「魔王様。せっかく作っていただいたのに、これでは片腕が無くなってしまいました。」
「大丈夫さ。」
リッチキングの魔石を使用したのは自己再生の能力があるからだ。ゴーレムの左腕がどんどん再生されていく。
「な、な、なんと?! このゴーレムは自己再生するのですか?」
「そうさ。これで、いくら戦っても問題ないよね。」
「ありがとうございます。これなら、遠慮なく訓練できます。」
「さすがね。シルバー!」
「まあね。」
オレとリリーは訓練場を後にした。
「ねぇ。シルバー、帰って来てからまだ王都を歩いてないでしょ?」
「そうだな。」
「なら、これから行こうか。」
オレとリリーは2人で王都アテナを散策することにした。オレは魔王の姿のままだが、相変わらずリリーはオレと手を繋いでくる。魔王の姿の自分が女性と手を繋ぐのは少し恥ずかしかった。
「凄いな。トロルドたち。あのわずかの時間でこれほどまでの街を作るとはな。」
街はしっかりと区画整理されている。道も広く、すべて石畳だ。トロルドが石のブロックを欲しがった理由がわかる気がした。魔王城から降りた丘の麓には、各種族の代表者である幹部達の屋敷がある。その周りにはそれぞれの種族の家が並んでいる。そして、そこから大きな道路が走り、中央には噴水のある広場ができていた。通りの左右には様々な店が並んでいる。そして、大通りの突き当りには、巨大な城門があった。
「なあ、あれが病院と学校だろ?」
「そうよ。どうして?」
「あの2つの建物は凄く大きいから、すぐに学校と病院ってわかったよ。でも、もう一つあるあの大きな建物はなんだ?」
「あれはナルーシャ様を祭る聖堂よ。」
「魔族が聖堂なんか作っていいのか?」
「だって、ナルーシャ様はこの世界の神様だし、シルバーをこの時代に送り出してくれた神様じゃない。当然よ。魔族のみんなもナルーシャ様を崇拝してるわよ。」
「そうなんだ~。」
意外なことにオレ達が街を歩いても、オレが魔王だとは誰も気が付かない。だが、リリーのことはよく知られている。学園の生徒だろうか、少女がオレ達に近づいてきて声をかけてきた。
「学園長先生! どうしたんですか? もしかしてデート?」
「違うわよ。この方は魔王様よ!」
「魔王様~!!!」
少女の大きな声を聞いて、街の人々が一斉にオレを見た。そして、全員が道路に平伏した。
「みんな! やめてくれ! オレは魔王だけどみんなと同じこの国の国民だ! そんなに偉い存在じゃないんだ! お願いだ! みんなそのまま仕事してくれ!」
オレが大きな声で言うと、一人立ち、また一人立って、次々と立ち上がる。そして、再び仕事にとりかかった。だが、やはり気になるようだ。オレのことをチラチラと見ている。そこで、オレはみんなを安心させるため、手から巨大な花火を空に打ちあげた。
「バ————ン パリパリパリ」
空に大きな花が咲いたようだった。
「オオ————」
「すげ————」
「奇麗ね~!」




