第1回報告会議
オレとリリーは一旦自分の部屋へと戻り、身支度を整えて会議室へと向かう。オレは、この国の王であり、魔王だ。それなりの服装が要求される。会議室に入ると全員が席を立って挨拶をしてきた。オレが席に着くと全員が着席し、みんなを代表してブラッドが挨拶する。
「おはようございます。魔王様。」
「おはよう。みんな。今日はみんなの仕事の進捗状況を報告してもらう。」
オレが上座の中央に座り、その右に宰相のブラッド、左には直轄のセリーヌが座る。ブラッドの隣が軍部大臣のロン。セリーヌの隣が文部大臣のリリー、ロンの隣が建設大臣のトロルド、リリーの隣が厚生大臣のスペリオ、トロルドの隣が治安維持大臣のモモカ、スペリオの隣が司法大臣のグーテだ。報告は、ロンから反時計回りに進んで行く。
最初に、軍部大臣の竜人族ロンからの報告だ。
「魔王様にご報告します。国防軍に関しましては、竜人族以外の各種族からも参加者が多数あり、現在10,000人の規模となっております。兵士達の訓練の一環として、チームに分かれてこの大陸の魔獣討伐を行っております。そのため、魔獣討伐の兵士は特に募集しませんでした。」
「ご苦労。何か困ったことはないか?」
「ハッ! 兵士の訓練につきまして困ったことがあります。王都の治安を守る部隊の者達は、魔獣討伐の実践訓練に参加できません。何か良い方法はないかと考えております。」
「わかった。後でオレが訓練場にゴーレムを作ることにしよう。それで訓練したらいい。」
すると、横からブラッドが口をはさんできた。
「魔王様。ゴーレムを作る時は、相手のことを考えてお創りください。死人が出たら元も子もありませんから。」
「わかってるさ。今回は間違えないから。」
「お願いしますよ。以前の時は、暴れたゴーレムを抑え込もうと、四天王全員で戦っても倒せなかったんですから。」
会場の全員の顔が引きつっている。
「じゃあ、次はトロルドだな。」
トロール族のトロルドは、以前シルバーに身体の大きさを変える魔法を授けられた。会議に参加するときは、身体を人並みの大きさにしている。
「ハッ! 王都の建築はほぼ終了しました。現在は王都を中心に各街までの街道の整備を行っております。」
「あとどのくらい時間がかかりそうだ?」
「地面に敷くブロックの制作に時間がかかりますので、およそ3年はかかると思われます。」
「そんなにかかるのか?」
「はい。ブロックさえあれば1年もかからないのですが。」
「ちょっと待っててくれ。」
オレは魔法を発動する。
『クリエイト』
すると、オレの手に袋が現れた。
「トロルドにこれを渡そう。これを使うように。」
トロルドが席を立って袋を取りに来る。そして、袋を手にして自分の席に戻った。
「その袋は魔法袋だ。頭の中にブロックを想像して手を入れてみるがいい。」
トロルドが袋に手を入れて叫んだ。
「これは何ですか?!」
袋から取り出した手にはブロックが握られていた。
「自分が欲しいブロックの形や大きさ、色を想像して手を入れるだけだ。その袋から必要なブロックをいくらでもが取り出せるさ。」
「ま、ま、まさか、そのようなことが。」
ブラッドとセリーヌを除いて全員が驚いている。
「魔王様は神なのか?」
ロンが思わず口に出した。
「いいや。オレは魔王さ。神なんかじゃない。それに、その袋はブロック以外作れないからな。」
すると、トロルドが席を立って地面に平伏して言った。
「魔王様! これはトロール族の家宝にします。」
「ダメだ! 使わなきゃ意味がないだろ! 早く席に戻れ!」
会議室の全員が大爆笑した。
「次は、モモカだな。」
「はい。」
鬼人族のモモカはいつ見ても美人だ。胸も大きく、大人の色気が溢れ出ている。つい、目が泳いでしまう。すると、リリーがオレを睨みつけてきた。オレは慌ててモモカの報告を聞いた。
「私の指揮する治安維持部隊は大きく2つに分かれています。1つは正面から犯罪行為を取り締まる部隊です。これは、我ら鬼人族が中心となって行っています。もう一つは、陰から犯罪を取り締まる隠密捜査です。これは、ブラッドにお願いしてバンパイア族にお願いしています。」
「困ってることは?」
「今のとことありませんが、魔王様とお会いできないのが寂しいです。」
すると、リリーとセリーヌの顔色が変わった。
「モモカ。悪いな。オレは世界中を回らないといけないんだ。」
「承知しています。」
「じゃあ、続いてグーテ。法律の進捗状況を教えてくれるか。」
「おお。魔王様! 法律は奥が深いぜ! 同じ犯罪行為でも、その時の状況や犯罪を行った者の環境によっては、罪の重さを変えなきゃいけないからな。」
「確かにな。グーテが言う通りだ。だが、基本的な法律を作っておいて、そこから刑罰を重くしたり軽くしたりすればいいんじゃないのか?」
「そうだがよ~! 犯罪者は一つの犯罪とは限らねぇんだよ。例えば窃盗と脅迫の2つの罪を犯した場合はどうするんだ?」
すると、セリーヌが言った。
「そんなもの殺してしまえばいい!」
「待て。セリーヌ。それだと裁判を行う意味がないだろ。エドモント公爵も言っていただろ! 殺すんじゃなくて、裁判で刑罰を決めて償わせるんだって!」
「そうだったな。」
「グーテ。複数の罪を犯したら、刑罰を加算すればいい。そして、一定の基準を超えたら終身刑か死刑だな。」
「さすが魔王様だぜ。俺も同じ考えで法律を作ったぜ。モモカと相談しながら作ったから、後で目を通してくれ。」
さすがは教養深い天狗族のグーテだ。オレが考えていることを既に実行している。法律は刑罰だけではない。他にも各種族がこれまで培ってきた慣習法というものがある。それを一つにまとめるのだ。もの凄く大変な作業だ。口調はぶっきらぼうだが、グーテのこの国に対する思いがひしひしと感じられた。
「ご苦労。後でじっくり見るよ。」
リリーがそわそわし始めた。そこで、少し落ち着く時間を与えようと、敢えて順番を変えた。
「次はスペリオ。病院はどうだ?」
「はい。トロルドの協力で、無事に王都の病院は完成しました。それに、鬼人族や天狗族の方にも協力してもらって、現在はポーションも作成しています。」
「困ってることはあるか?」
「はい。普通のポーションは完成しているのですが、欠損部位のある怪我人には効きません。トロルドやブラッドのような自己再生能力を持たない種族もいますので。」
ここでオレは考えた。オレのように『リカバリー』を使えるものがいればいいが、この治癒魔法は特別だ。恐らく、オレ以外につかえるものはいないだろう。すると、ブラッドが言った。
「我々の自己再生能力は血液が関係しています。恐らく、トロール族も同じでしょう。ならば、ポーションを作る際にバンパイア族かトロール族の血液を入れて確かめてみたらいかがですか?」
「なるほど。是非試してみたいです!」
そして、最後はリリーだ。リリーを見るとかなり緊張している。
「リリー! 君の番だよ!」
「うん。」
リリーが背筋を伸ばして報告を始めた。
「文部大臣として報告します。学校の建物はトロルドによって完成しました。教員も、各種族から代表者が来てくれています。教育内容に関しても教員達で会議を開いて議論しながら決めています。問題な点は、種族によって能力差があることです。能力の高い種族が能力の低い種族を見下す傾向があります。」
リリーはしっかりと自分の責任を果たしているようだ。
「リリー。オレが一度学校に行くよ。魔王としてな。」
「いいの?」
「ああ。生徒達に是非伝えたいことがあるんだ。」
そして、会議は解散となった。




