シルバーとロザンヌ、誘拐される!
その頃、僕は辺境伯の屋敷にいた。セリーヌはキングコブラのアジトを探索に向かっている。できれば、奴隷として捕まっている者達がいないかどうかも調べる予定だ。
「ロザンヌ。迎えに来たよ。」
「シルバー様。約束を覚えていてくれたんですね。」
「当然だよ。」
「セリーヌ様はどちらに行かれたんですか?」
「セリーヌは一人で観光するみたいだよ。」
「そうですか? では、早速出かけましょう。」
僕とロザンヌは手を繋いで貴族街から街に向かった。最初に向かったのは服屋だ。ロザンヌが僕の服を買いたいらしい。ロザンヌと街を歩きながら、セリーヌに念話を送った。
“セリーヌ。捕まっているもの達が、どこに捕らえられているか調べてくれる?”
“わかった!”
店の前まで来るとロザンヌが言った。
「シルバー様はどんな服がお望みですか?」
そう言われても特に僕は服にこだわりがない。
「特にないよ!」
「なら、私が選んで差し上げます。」
2人で店内に入った。すると、さすが辺境伯の御姫様だ。店の従業員が走って奥に行ったと思ったら、オーナーらしき人が急いでやって来た。
「これはロザンヌ様。お久しぶりです。」
「久しぶりね。マーカスさん。今日は、ここにいるシルバー様の服を買いたいの。」
「そうでしたか。シルバー様はどこの国の王族ですかな?」
何か誤解している。さすがに、辺境伯の御姫様が手をつないで一緒にいるのだ。間違えられても不思議ではない。
「僕は王族じゃないよ。平民だよ。」
「そうでしたか。それは失礼をしました。」
早速、服の飾ってある場所に案内されるが様子がおかしい。女性もののコーナーに案内された。
「マーカスさん。シルバー様は男性ですよ。」
「な、なんと。それは誠に失礼しました。奇麗なお顔立ちをしていましたから。てっきり女性とばかり思ってしまいました。」
「別にいいよ。いつものことだから。」
僕とロザンヌは女性の店員達に囲まれている。試着コーナーに案内されて、僕は着せ替え人形のように何度も服を着ては脱いでを繰り返した。その度、ロザンヌも女性店員達も喚声を上げる。
「シルバー様は何を着てもお似合いです。」
「本当ですわ。どの服を着ても素敵です。」
結局5着ほど購入した。現在は貴族のような服を着せられている。この動きずらい服で街を歩くのかと思うと疲れる。店を出たところで、僕は視線を感じた。どうやら、複数人でロザンヌを見張っているようだ。相手からは敵意が感じ取れた。ロザンヌを誘拐するつもりなのだろう。
「シルバー様。次は私の大好きなレストランに行きましょう。デザートが本当に美味しいんですよ。」
「いいよ。」
“セリーヌ! どう? 見つかった?”
“まだだ。アジトはすぐにわかったが、捕えらている者達がどこにもいないんだ! どこかほかの場所で捕まっているのかもしれんな。”
“わかったよ。なら、僕とロザンヌが囮になるよ。”
“シルバーはともかくとして、ロザンヌは大丈夫なのか?”
“大丈夫さ。僕が一緒だからね。”
レストランで食事をした後、僕はロザンヌには何も言わずにわざと人目に付きづらい場所に行った。
「こんな場所に何かあるんですか? シルバー様!」
なんか、ロザンヌが勘違いしているようだ。顔が真っ赤になり、手は汗びっしょりになっている。
「こんな人目に付かない場所に来て・・・・」
ロザンヌが何か言いかけた時、建物の陰から大勢の男達が現れた。最初から、誘拐目的のようだ。男達は一言もしゃべらずに、僕とロザンヌの体を拘束すると、目隠しと猿轡をして馬車らしきものの中に放り込んだ。僕も逆らうことなく、されるがままだ。いくら目隠しをしても音は聞こえる。どうやら、街中を走っているようだ。しばらくして、馬車が止まった。僕とロザンヌは馬車から降ろされて、少し歩かされた後、階段を下に降りていく。そして、うす暗い部屋の中に押し込められ、身体の拘束が解かれた後、目隠しと猿轡がはずされた。
「あなたたち何者よ! こんなことしてただで済むと思っているの?」
「うるせぇガキだ! いくら騒いでも、どこにも聞こえないぜ!」
男がロザンヌに触れようとした。だが、その時、入り口の方から声が聞こえた。
「おい! 早く来い! マムシ様がお呼びだぞ!」
「お~!わかった! すぐ行く!」
男はそのままその場から立ち去った。
「シルバー! ごめんね。私のせいで、こんなひどい目にあわされて。」
「大丈夫だよ。それよりここどこだろうね。」
耳を澄まして周りの音を聞いた。どうやら、他の牢屋にも捕まっている者達がいるようだ。僕は近くの牢屋に声をかけた。
「誰かいるの?」
「・・・・・」
「シルバー! 誰もいないんじゃない?」
僕は手からライトを出して、周りの牢屋を照らした。すると、やはり捕まっている者達がいた。
「大丈夫だよ。僕は君達の仲間だから。」
すると、小さな声が聞こえてきた。
「助けて~! ここから出して~! お父さ~ん!」
すると、次から次へと助けを求める声が聞こえてきた。
「大丈夫さ。君達は僕が必ず助けるから!」
明かりに照らされた僕を見て、正面の牢屋の獣人が言った。
「君も人族だよね。人族はみんな同じよ! みんな敵よ!」
すると、ロザンヌが必死に謝る。
「ごめんなさい。でも、信じて! 人族にもいい人はいるのよ!」
「信じられない! 森で遊んでただけなのに、こんなところに連れてこられて。お父さん、お母さんに会いたいわ! ワ~ン」
みんなの話を聞くと、どうやら獣人族だけらしい。この国の南側には、海を渡って獣人族の国がある。そのため、獣人族が狙われたのだろう。
“セリーヌ! 聞こえる?”
“シルバー! 無事なの?”
“うん。捕まっている者達を見つけたよ。街の中心から馬車で20分のところ。どこかわかる?”
“その距離だと、怪しい場所はないぞ。”
“地下だと思う。地下がありそうな建物は?”
“そうだな~。貴族屋敷ぐらいだな。”
“誰の屋敷だ?”
“ちょっと待ってろ。降りてみるから。”
しばらくしてセリーヌから連絡が来た。
“マルメット公爵の屋敷だ!”
“間違いないね。その建物の地下だよ!”
“これからどうするんだ?”
“セリーヌはエドモント公爵とスチュワート辺境伯に伝えてくれるかな?”
“わかった!”
“それと、ゲーテに言って、キングコブラの連中をマルメット公爵の屋敷に集めさせて欲しいんだ。”
“何するつもりだ?”
“面倒は一回で済ませたいよね。”
“なるほどな。”




