シルバー10歳になる。
それから3年が過ぎた。リリーは10歳だ。僕と身長が変わらない。僕の正確な年齢は分からない。だが、周りの人達には僕も10歳ということにしている。
「リリー! シルバー! お前達、学校はどうするんじゃ?」
「おばあちゃん! 私は学校なんか行かないよ!」
「あんた! 何言ってるんだい! それじゃあ、お前の亡くなった父さんと母さんに顔向けできないじゃないか。」
僕は学校について何も知らない。
「ローズおばあちゃん。学校って何をするの?」
「ああ。勉強や魔法、剣術なんかを学ぶんじゃよ。」
すると、リリーがムキになり始めた。
「魔法はおばあちゃんが教えてくれてるじゃない!」
「だが、剣術や勉強は教えてやれないからね。」
「剣術だって、シルバーといつも練習してるもん。」
「ああ。そうじゃの。確かにリリーもシルバーも魔法や剣術は習う必要はないかもしれんの。だが、算術や座学はどうにもならんじゃろう?」
確かにそうだ。魔法も剣術も、2人がかりならなんとか魔獣を倒せるぐらいには上達している。学校に入学しても、あまり意味がないかもしれない。だが、この国のことや世界のことは全くわからない。
「シルバーはどうするんじゃ?」
「ローズおばあちゃん。学校ってどこにあるの?」
「この村にはないね。この近くだと、辺境伯様の領都フローレンスじゃな。」
「毎日通うの?」
「いいや。それは無理じゃな。領都までは遠いからのう。学生寮に入るしかないじゃろうな。」
僕は倒れていたところをローズおばあちゃんに拾われた。ローズおばあちゃんは自分の孫と同じようにかわいがってくれた。でも、僕はローズおばあちゃんに何も恩返しができていない。なによりも、ローズおばあちゃんもリリーも僕にとっては家族だ。ローズおばあちゃんとは離れたくない。そう思った。
「僕、学校には行かない。」
「シルバー! どうしてじゃ?」
「だって、僕はこの家にずっといたいもん。多分、リリーも同じだよ。」
ローズおばあちゃんは僕とリリーの気持ちが分かったようだった。
「お前達は優しい子じゃな。」
ローズおばあちゃんは僕とリリーをそっと抱き寄せた。
「なら、今度街に行ったときに、2人のために本を買ってこないとな。」
「なんの本を買うの? おばあちゃん。」
「リリーとシルバーが、ここでも勉強できるようにいろんな本を買うんじゃ。」
「げっ! お勉強するの~? 嫌だな~! 魔法の勉強ならいくらでもするけど。」
「リリー! 少しはシルバーを見習わんか!」
リリーは逃げるように僕の手を掴んで、その場から逃げた。
「シルバー! 山に行こ!」
僕はリリーと一緒に山に行った。山にはいろんな野生動物がいる。しかも、たまに魔獣がでることもある。だから、僕達は山に行くときはいつも木の剣を腰にぶら下げている。山に来た僕達は、果物や木の実を取ることにした。
「シルバー! 本当は学校に行きたいんでしょ?」
「どうしてさ。そんなことないよ!」
「だって、あなたの魔法は特別じゃない! おばあちゃんも言ってたよ。シルバーの魔法は特別だって!」
「そんなことないよ。僕は器用貧乏なだけさ。リリーだって炎の魔法なんか凄い威力じゃないか。」
「当たり前じゃない! あんなに特訓したんだから。でも、私が自慢できるのは炎の魔法だけよ! 他の魔法なんか使えないんだから。シルバーなんていろんな魔法が使えるじゃない! 羨ましいわよ!」
確かにそうだ。僕はすべての魔法が使える。でも、威力はそれなりにしかない。
「僕達はまだ魔法の練習を始めたばかりだから、リリーも僕もこれからもっと魔法が上手になるよ。」
「そうね。これからよね。」
僕は高い場所に実っていた桃のような果物を、風魔法で枝ごと落とした。その一つをリリーに手渡す。
「はい! リリー!」
「ありがと!」
「リリー! これすっごく甘いよ!」
僕に言われてリリーも一口食べた。
「うん。このピンキー最高! おばあちゃんにも持って帰ろ!」
僕とリリーは、ローズおばあちゃんから魔法の袋を貸してもらっている。山に行くときはいつもだ。目の前にはたくさんの木の実や果物ができていた。両手だけでは持ちきれない。採った木の実と果物を袋に詰めて、僕達は山を下りることにした。
「そろそろ帰ろうか。」
「うん。」
いつものように僕はリリーと手をつないで帰る。家に着くといつものようにローズおばあちゃんが夕飯の支度をしていた。
「おばあちゃん。今日もたくさん採れたよ。」
「そうかい。なら、明日、村の市場で売ってきておくれ。」
「うん。でも、おばあちゃんの分はこっちに置いておくからね。」
「ありがとうよ。」
夕飯はいつも柔らかいパンとスープ、それにお肉料理だ。ローズおばあちゃんの料理はどれも美味しい。
「いただきま~す!」
「リリー! そんなに急いで食べると,のどにつかえるよ。」
「ゴホン! ゴホン!」
リリーはリスのように口一杯に食べ物を入れる癖がある。その結果、喉につまらせるのだ。
「シルバー! お水! お水を頂戴!」
僕は魔法でカップに水を出して、リリーに渡した。
『ゴクン!』
「ありがとう! 死ぬかと思ったわ!」
「そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ!」
「だって、お腹空いてたんだもん!」
ローズおばあちゃんが2人のやり取りを見て笑っている。そして、その日もお風呂に入る。今はさすがに僕は一人でお風呂に入るようにしているが、たまにリリーが来る。
「シルバー! 背中流してあげようか?」
僕は慌てて前を隠した。
「いいよ! 自分で洗えるから!」
「何を恥ずかしがってるのよ!」
「いいだろ! ゆっくり1人で入らせてよ!」
「はいはい!」
リリーはスタスタと居間の方に行ってしまった。僕がお風呂からあがると、ローズおばあちゃんとリリーが話をしていた。
「シルバー! 出たのかい? 早いね~!」
「ねぇ。シルバー! 明後日、おばあちゃんが私とシルバーを街に連れて行ってくれるんだって!」
因みに、僕もリリーも一度も街に行ったことがない。というよりも、山の麓の村以外に行ったことがないのだ。もの凄く楽しみだ。ローズおばあちゃんから話には聞いたことがある。でも、実際に自分の目で見ることができるとなると嬉しくていられない。
「シルバーもリリーも明後日は早くに出かけるからな。」
「わかったわ。明後日が楽しみで寝れないかもしれないわね。シルバー!」
お風呂は別々だが、寝るベッドは一緒だ。なぜなら、この家にベッドは2つしかないからだ。リリーは寝相が悪くてたまに蹴られることがある。この前はいきなり殴られた。寝れないかもしれないと言っていたのに、リリーはベッドで横になるとすぐに寝てしまった。




