闇組織キングコブラ
辺境伯スチュワートの娘ロザンヌが目を覚ましてから2日が経った。僕達は馬車で王都に向かうことになった。
「シルバー様は王都イスカントに行ったことがありますか?」
「ないよ。ハーネストにはよく行ったけどね。」
するとスチュワートが言ってきた。
「そうすると、シルバー殿とセリーヌ殿はハーネストの近くに住んでいるんですね。」
余計なことを言ってしまった。
「そうだね。」
すると、畳みかけるようにロザンヌが質問してきた。
「シルバーの父さんとお母さんもそこにいるの?」
僕が返事に困っていると、セリーヌが助け舟を出してくれた。
「シルバー! そろそろ森に入るぞ。私達は馬車の外に出て、警護に当たった方がいいだろう。盗賊に扮した連中に襲われるかもしれないからな。」
「そうだね。スチュワートさん。ロザンヌ。僕とセリーヌは外に行くけど。」
「えっ?! 警護ならいるじゃないですか?」
「セリーヌも僕もそれなりに強いからね。」
その後、馬車は森の中に入って行った。しばらくは何もなかったが、森の中心に差し掛かった時に複数の魔獣の反応があった。
「シルバー!」
「うん。これはホーンウルフだね。」
セリーヌが護衛の兵士達に注意を促した。
「前方の森にホーンウルフの群れがいるぞ!」
「了解した。———みんな、戦闘態勢に入れ!」
「ハッ」
僕とセリーヌを除いて、護衛は10人ほどだ。辺境伯という身分からすると少ないようだが、それなりの精鋭達だ。すると、森の草陰から『カサカサ』と音がした。
「ホーンウルフが来るよ。」
「了解した!」
ホーンウルフが森の中から集団で攻撃してきた。兵士達が剣で応戦する。僕とセリーヌは前面に出るのでなく、兵士達の援護に回った。かなりの数を討伐したが、まだホーンウルフがたくさんいる。
「シルバー! 何かおかしくないか?」
「そうだね。森の中から魔力を感じるよ。僕、行ってくるね。」
「ちょ、ちょっと待て!」
「セリーヌは兵士の援護をよろしくね。」
僕は森の中に入って行った。すると、奥から光が漏れている。ゆっくりと近づいてみると、光っているのは召喚の魔法陣だ。その隣には、魔法使いのような人物がいた。
「そこで何やってるの?」
「き、貴様! 見たな!」
すると、魔法陣から出たホーンウルフが僕に向かってきた。僕は、剣を抜いてホーンウルフに向かって走った。そして、すれ違いざまにホーンウルフを倒した。恐らく、魔法使いには僕の動きは見えていない。
「な、な、何が起こったんだ?!」
「ホーンウルフを討伐しただけだよ。それより、一緒に来てもらうよ。」
魔法使いは僕に向けて魔法を放つ。氷の槍が僕に向かって飛んでくる。
『グラトニー』
僕の手から出た黒い渦に氷の槍は吸い込まれた。魔法使いは慌てて逃げようとしたが、僕は魔法使いの前に転移して、腹に拳をめり込ませた。
「グホッ」
魔法使いを動けないように拘束して、兵士達のところに戻った。兵士達は馬車の周りで座って休んでいた。馬車の横にはセリーヌとスチュワートさんとロザンヌがいる。
「シルバー! どうだった?」
「森の中に魔法使いがいたから、拘束したよ。誰か来て欲しいんだけど。」
すると、スチュワートが兵士を呼んで僕と一緒に行くように命令した。僕と兵士達が森の中に入って行くと、そこには僕が拘束した魔法使いがいた。兵士達が魔法使いを連行して、一緒に森から出た。
「さすがシルバー殿ですな。それで、この者は?」
「魔法陣を使ってホーンウルフを召喚していたんだよね。」
すると、スチュワートさんが尋問を始めた。
「貴様は、誰に頼まれたんだ? 言え!」
「誰が言うもんか! 殺せ! 早く殺せ!」
魔法使いは大きな声で叫んだ。すると、セリーヌが魔法使いの前に立って剣を抜いた。
「シルバー! ロザンヌを向こうに連れて言ってくれ。惨いところは見せたくない。」
セリーヌの言葉で、これから何が始まるのか予想できる。同時に、魔法使いも恐怖で震え始めた。
「おい! 俺の名前はセリーヌだ。『雷使いのセリーヌ』って聞いたことがあるか? 俺は簡単には殺さないぞ! お前が『もう殺してくれ!』と頼んできてもな。俺の言っている意味が分かるよな。」
魔法使いはセリーヌの迫力に耐え切れずに失禁してしまった。そして、あれだけ大きなことを言っておきながら、簡単に口を割った。因みにセリーヌはまだ何もしていない。
「ならば、お前に命令したのは闇組織『キングコブラ』の首領のマムシなんだな。」
「そうです。俺は命令されただけなんです。」
僕達は再び王都に向かって出発した。そして、森を抜けたところで、エドモント公爵領の街ベルトニアに立ち寄り、魔法使いを衛兵に引き渡し、この街で1泊することとなった。
「シルバー殿とセリーヌ殿のお陰で無事にここまで来ることができました。感謝します。」
するとセリーヌが言った。
「いいや。俺達はほとんど何もしていないぞ。それよりもスチュワートのところの兵士達は強いな! 怪我人を出すこともなく、あれだけの数の魔獣を退治するとは見事だったぞ!」
「彼らも日ごろから厳しい訓練をしておりますので。」
酒場で一緒にご飯を食べている兵士達も、自分達が褒められて嬉しいようだ。ご機嫌で酒を飲んでいる。
「それで、『キングコブラ』って何なの? スチュワートさん。」
「そうですな。シルバー殿が知らないのも当然ですな。『キングコブラ』はこの国で最大の裏組織です。キソ商会のゴルドバもその組織の幹部でした。貴族達の中にも幹部がいるようです。」
「もしかして、マルメット公爵も幹部の一人なの?」
「わかりません。ですが、関係していることは間違いないでしょうな。」
「セリーヌ! 王都に行ったら、その組織潰そうよ。」
「そうだな。」
すると、スチュワートが驚いた顔をしていたが、すぐに言ってきた。
「いくらシルバー殿とセリーヌ殿でも、そのようなことが簡単にできるとは思えません。相手は、この国でも最大の組織なんですよ。それに、今まで敵対したものは何人も殺されています。2人ともお気を付けください。」
「僕達は大丈夫だよ。それよりもスチュワートさんの方が心配さ。」




