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魔王シルバーの異世界冒険  作者: バーチ君
ベテルギ王国
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王都に向けて出発

 メイドが、辺境伯の娘ロザンヌに毒を飲ませようとしていた。寸前のところで、僕はメイドから毒を取り上げて、半年の間、寝たままの状態のロザンヌに回復の魔法をかけた。すると、ロザンヌが目を覚ました。辺境伯にとっては奇跡的な出来事だ。すべてを見ていた辺境伯にとっては信じられないことばかりだ。僕とセリーヌはその場を立ち去ろうとしたが、辺境伯に止められた。



「待ってくれ! お礼を! 君達にお礼を!」


「別にお礼なんていらないよ。そろそろ行かなくっちゃ。このメイドを操っていた人を始末しないとね。」


「ならばなおさら待って欲しい。私も娘をこんな目に合わせた犯人を知りたいのだ。」


「セリーヌ! どうする?」


「そうだな~。この国のためにも辺境伯の力を借りて、膿を出し切った方がいいかもな。」



 僕とセリーヌの話を聞いて、辺境伯は僕達が神の使徒だと思ったようだ。



「この国の改革に、是非とも使徒様達のお力をお貸しいただきたいのです。」



 すると、寝転んでいたロザンヌが起き上がって言った。



「助けていただいてありがとうございます。どうか、父に協力していただけないでしょうか?」



 セリーヌを見ると頷いている。



「わかったけど、僕達は使徒じゃないよ。僕はシルバー。彼女はセリーヌ。名前で呼んでね。」


「畏まりました。シルバー様。セリーヌ様。」


「『様』はいらないからね。」


「では、『シルバー殿。セリーヌ殿。』ではいかがでしょう。」



 セリーヌが頷いている。



「いいよ。」



 すると、ロザンヌが僕をじっと見つめている。



「女神様みたいです。」



 セリーヌが後ろを向いて噴き出した。



「あの~。ロザンヌさん。僕は男だよ!」


「すみませんでした。あまりに美しいお顔でしたので。」


「ありがとう。」



 ロザンヌが真っ赤になって下を向いてしまった。



「辺境伯さん。そこのメイドを捕えてね。」


「そうでした。ですが、私のことはスチュワートと呼んでください。」


「わかったよ。なら、スチュワートさんって呼ぶね。」



 スチュワートは兵士を呼んでメイドを連行させた。



「スチュワートさん。彼女に毒を渡した人物が市場で薬屋をしてるんだよね。捕まえに行くけど、一緒に行く?」


「はい。是非ともご一緒させてください。」



 念ため、セリーヌにはスチュワートの屋敷に残ってもらい、僕とスチュワートが兵士を連れて市場に向かった。



「おじさん。おじさんが薬を渡していたメイドは捕まえたよ。」


「何のことだ?」


「惚けても無駄だよ。あのメイドさん、すぐに口を割ると思うよ。」



 すると、薬屋の店主は本性を現した。



「あの役立たずが! もはやこれまでのようだな。」



僕の後ろに目をやり、スチュワートと兵士達の姿を見た薬屋の主人は諦めたのか、口から血を流して死んだ。恐らく、奥歯に毒薬を仕込んでおいたのだろう。兵士が薬屋の男が死んだのを確認した。スチュワートは独り言のように言った。



「しくじったな。これでは本当の黒幕が誰かわからんな。」


「このおじさんに指示を出した人がいるってこと?」


「はい。恐らくは。」



 兵士達が薬屋の店主の遺体を片付け、店内の捜索を始めている。恐らく手掛かりになるようなものは残されていないだろう。

  


「シルバー殿。今日はもう遅い。セリーヌ殿とともに我が屋敷にお泊り下さい。」



 スチュワートが親切に言ってきた。確かに宿代が浮くし、ありがたいと言えばありがたい。僕達が屋敷に戻ると、セリーヌとロザンヌが仲良く話をしていた。



「お帰り。大丈夫だったか? シルバー!」


「自害されちゃったよ。」


「そうか。だが、まだあのメイドがいるからな。あのメイドから話を聞けばいい。」



 するとロザンヌがニコニコしながら僕に話しかけてきた。



「セリーヌ様はシルバー様のお姉様なんですね? あまり似てないから恋人か何かだと思っていました。」



 僕はセリーヌを見た。セリーヌが舌を出している。



「まあね。姉は強いけど、わがままで困ってるんだよね。」



 少しの仕返しだ。そして、その日はスチュワートの屋敷に泊まることになったのだが、困ることが発生した。セリーヌが僕と姉弟と言ったために、同じ部屋にされたのだ。しかもベッドは一つだ。今更、別々の部屋にとか、ベッドを2つとか言えない。仕方がないので、一緒に寝ることにした。すると、セリーヌが小さな声で言ってきた。



「夢のようだ。シルバー。まさか、アンドロメダと一つベッドで寝ることができるなんて。」


「そうだよね~。前世でもなかったからね。セリーヌには申し訳ないと思ってるよ。」


「いいや。アンドロメダにはアテナがいたからな。アンドロメダと私がこの時代に転生したということは、もしかしたら、リリーも・・・」


「多分ね。本人は気が付いてないけどね。」


「やはりそうか。」



 セリーヌが少し寂しそうに言った。僕はそのまま寝てしまった。頬に水滴が落ちた気がしたが、気のせいかもしれない。



 翌日、朝食を食べた後、僕とセリーヌはスチュワートに連れられて、メイドが拘束されている牢屋に行くことになった。



「シルバー殿。セリーヌ殿。昨日はゆっくりお休みになられましたかな?」


「ありがとう。ベッドが広くてふかふかだったよ。」


「それは良かったです。」


「ところで、昨日のメイドは?」


「そろそろです。この建物の一番奥の部屋に捕らえていますので。」



辺境伯邸のすぐ隣の建物だ。僕達が兵士に案内されていくと、メイドはすでに死んでいた。状況を確認すると、首のところに毒針で刺された跡があった。ここに来る途中、ゴルドバ達が使っていたものと同じだ。



「スチュワートさん。実は、この街に来る時にキソ商会の護衛を引き受けたんだけど、彼らは人身売買の盗賊でね。20人ほどの仲間と襲ってきたんだよね。他の冒険者達と一緒に全員始末したんだけど、彼らも同じ毒針を使ってたよ。何か関係があるかもしれないね。」


「そうですか。実はキソ商会は王都でも有名な商会でして、つながりのある貴族は多いんですよ。」


「この国には奴隷制度があるの?」


「そうなんです。私はエドモント公爵様と奴隷制度には反対しているんですが、賛成している貴族も多いんですよ。」


「奴隷ってどんな人達なの?」


「そうですね。基本的には人族ですね。罪を犯した者や借金の返済ができなかった者達ですね。ですが、裏ではでエルフ族や獣人族、ドワーフ族が闇取引されているという噂もあります。たまに魔族の女性もいるようですよ。魔族の女性は大白金貨10枚でも買えないという話です。」

 


 その話を聞いて、セリーヌの身体から怒りのオーラが出始めた。



「セリーヌ!!!」



 僕が注意すると、セリーヌのオーラは消えた。



「僕とセリーヌは王都に行くけど、スチュワートさんはどうする?」


「ロザンヌの体調も良くなりましたから、私もロザンヌを連れて一緒に行きます。エドモント公爵様とともに国王陛下を諫めないといけませんから。」


「国王陛下ってどんな人なの?」


「ガゼル陛下は気が弱い方なんです。第2婦人のメリッサ殿の言うなりなんです。」


「第2婦人ですか?」


「ええ。奴隷推奨派のマルメット公爵の妹ですよ。」


「他に国王にふさわしい方はいないの?」


「シルバー殿。めったなことは言わないほうが。」


「ごめんなさい。」


「いえいえ。この屋敷内では大丈夫ですが、他人に聞かれると不敬罪となりますので。」



 すると、周りを気にしながらスチュワートが小声で言った。



「エドモント公爵様はガゼル陛下の実弟です。本来、エドモント公爵様の方が相応しかったのですが、前国王の弟であるマルメット公爵の強い後押しがありまして、ガゼル陛下が国王になられたんです。」


「なるほどね。」



 その日は、王都に向けての準備をするため、僕とセリーヌはフローレンスの街に買い出しに行くことになった。何故かロザンヌが一緒だ。しかも、僕の手を握っている。



「シルバー様。あそこの屋台、美味しんですよ。」



 ロザンヌは僕の手を引っ張って屋台まで行った。屋台では、柔らかいパン生地の中に甘い煮豆のようなものを詰め込んだものを売っていた。



「おじさん。それ3つ頂戴!」


「ロザンヌ様~! お久しぶりです。お元気になられたようですね。良かった良かった。」


「ありがとう。おじさん。」

 


 僕もセリーヌも初めて食べるものだ。一口食べると、甘さが口の中に広がった。すると、セリーヌが大きな声で言った。



「旨い! これは旨い!」


「そうでしょ! この街の名物なのよ! 回転焼きって言うのよ!」


 

 その後も、服屋に行ったり、パーラーのような店で甘いデザートを食べたりといろんな場所に連れていかれた。



「あの~。ロザンヌ~! 聞きたいんだけど?」


「なんでしょう? シルバー様。」


「ロザンヌには兄弟やお母さんはいないの?」


「お母様は私が小さい時に亡くなりました。でも、王都には兄弟もいるし、私のことを本当の娘のようにかわいがってくれるお母様がいますよ。」


「そうなんだ~。ならいいけど。」



 するとセリーヌが聞いてきた。



「どうしたの? 急に。」


「スチュワートさんの屋敷には、ロザンヌの母親らしき人がいなかったからさ。」


「私のことを心配してくれたんですね。シルバー様!」



屋敷に戻った後、セリーヌが僕に声をかけてきた。



「シルバー! あまり仲良くすると、あの子が悲しむぞ!」


「どうして?」


「お前には女の気持ちが分からんのか? あの子は既にお前に惚れてるからだ。」


「そうなの?」


「ああ。間違いないな。それに、あんまり他の女と仲良くするとリリーに言いつけるからな!」



 なんかセリーヌが怖い。でも、別に僕はリリーに言われて困ることは何もしていない。


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