いざ! 新たな旅へ!
最初は人族の国に行くことにした。オレがローズおばあちゃんと暮らしていた場所は、エドパルド大陸の最南端に位置するベテルギ王国だ。まず、ベテルギ王国の王都イスカントに行く。まず、リリーと一緒に登録したギルドのあるハーネストに転移し、そこから王都イスカントまで向かうつもりだ。オレは魔王であることがばれないように、元の姿に戻った。すると、口調も元に戻ってしまった。
「何でセリーヌが一緒についてくるの?」
「俺、いや、私はリリーに頼まれて、シルバーが、いや、魔王様が他の女に取られないように見張っていてくれって言われたから、言われまして。」
「セリーヌさ~! 別にいいけど、その話し方、何とかならないかな? 無理しなくていいよ。別に僕は魔王になっても、シルバーはシルバーだし。今まで通り話してくれた方が嬉しいな。」
「わかりました。———わかった! なら、今まで通りで。」
「それから、くれぐれも僕のことを『魔王』とか言わないようにね。」
「わかった。今までのようにシルバーと呼ぼう。」
「そうそう、その喋り方の方が僕は好きだよ。」
なんかセリーヌが顔を赤くしてもじもじしていた。僕はこれからどうするのかセリーヌに聞いた。
「この国の王都に行こうと思ってるんだけど。どうすしようかな~?」
「なら、ギルドに行くべきだな。」
「どうして?」
「王都までの護衛の仕事があるかもしれないからな。そうすれば、怪しまれないし、お金も手に入るだろ!」
「なるほどね。さすがはセリーヌだね。」
「ギルドに行ってアカネに聞いてみるか?」
「うん。」
僕とセリーヌはハーネストの冒険者ギルドに行った。どっからどう見ても、今の僕は普通の人族の子どもだ。セリーヌも容姿だけなら子どもなんだけど。僕達がギルドに行くと、受付にはいつものようにアカネがいた。
「あれ?! もしかして、シルバー君?」
「こんにちは! アカネさん。」
「シルバー君、大分久しぶりよね! 何かあったの?」
「どうして? 別に何もないよ。」
「そう。でも、今日はリリーちゃんは一緒じゃないの?」
「なんか用事があるみたいで。」
「そうなの。それでセリーヌさんと一緒なのね。他の女の子と仲良くしてると、リリーちゃんに怒られるわよ!」
「別に違うから。」
すると、後ろからセリーヌが割り込んできた。
「アカネ! 俺とシルバーは王都まで行くつもりだが、護衛の仕事はないか?」
「えっ?! シルバー君も王都に行くの?」
「うん。王都に用事があるんだ。」
「わかったわ。ちょっと待ってて!」
アカネが奥に入って行った。そして暫くして、依頼書を持って奥から出てきた。
「1件だけあるわよ。」
「どんな依頼だ?」
「王都にキソ商会っていうのがあるのよね。そこの店主がこの街に木材の買い付けに来てるのよ。明後日、王都に向けて帰るのに護衛を探しているわよ。」
「護衛の予定は何人だ?」
「そうね~。特に記載はないけど、今日の午後にこの2Fで説明会があるわよ。」
「そうか。なら、俺とシルバーを参加者の名簿に加えておいてくれ。」
「わかったわ。」
「シルバー! それまで時間があるがどうする?」
「服を買いに行こうよ?」
「わかった。」
僕とセリーヌは一旦ギルドを後にした。そして、街の服屋に向かうことにした。
「どんな服を買うんだ?」
「僕のじゃないよ。セリーヌの服を買うんだよ。」
すると、セリーヌが赤くなってしどろもどろになった。
「俺は、べ、別に服なんか・・・・。」
「服は何着あってもいいよね。それに、セリーヌにはすごく世話になってるしね。お礼をさせてよ。」
「わ、わかった。そういうことなら、遠慮なく買ってもらおうか。」
「あの服なんてどう? セリーヌにぴったりだと思うんだけど。」
僕が指さした先には、フリルの付いた可愛いブラウスとキュロットを着せた人形があった。それを見てセリーヌが真っ赤になって言った。
「シルバー! お前は俺にあんな服を着せたいのか?」
「セリーヌはすごく可愛い顔してるから、絶対に似合うと思うんだけど。」
セリーヌがもじもじして言った
「そこまで言うなら着るだけ着てみるが、笑うなよ! 絶対だぞ!」
セリーヌが試着室に入った。そして、試着室から出てくると、めちゃくちゃ可愛い。
「セリーヌ! めちゃくちゃ可愛いよ! 思った通りだ! よく似合ってるよ! ついでにこれも被ってみて!」
僕はフリルの付いた帽子をセリーヌに被せた。
「凄いよ! なんか、どこからどう見てもお嬢様だね。これ買おうよ。」
「わかった。シルバーがそういうなら、そうしよう。」
会計を済ませて店を出た。当然、セリーヌは買ったばかりの服を着ている。すると、セリーヌが僕の手を握って来た。
「どうしたの?」
「お前がはぐれない様に、手を握ってるだけだ。」
「そう。」
それからお洒落なレストランで食事をして、ギルドに戻った。ギルドには護衛を希望する冒険者達が何人もいた。普段のセリーヌと服装が違うので、誰も『雷使いのセリーヌ』だとは気が付かない。
「お嬢ちゃん達。ここはお子様が来るところじゃないんだよ。危ないからおうちに帰りな。」
親切なのか嫌味なのかわからないが、冒険者が僕達に言ってきた。その取り巻き達も笑いながら僕達を見ている。だんだんセリーヌの表情がこわばっていく。そこで、僕は冒険者達に言った。
「僕達も護衛の依頼を受けるんだよ。おじさん達は強いんでしょ? なら、僕達も守ってもらえるね。“セリーヌ!”」
すると、冒険者達の顔がどんどん青白くなっていく。
「もしかして、『雷使いのセリーヌ』か?」
セリーヌは指に電流を流して、パチパチさせている。僕達を見下していた冒険者達は、その場から立ち去ってしまった。残っているのは、僕達2人と5人組のパーティーだけだ。そして、いよいよ説明会が始まった。
「皆さん。集まっていただいてありがとうございます。私はキソ商会の店主のゴルドバと言います。では、早速説明しますね。私どもは王都イスカントに向かいますが、その前にフローレンスに寄っていく予定です。2週間の旅を予定しています。報酬は1日、1人金貨5枚です。宿代は私どもが負担しますが、飲食代は皆さんがお支払いください。」
すると、5人組パーティーのリーダーらしき男性が立ち上がって言った。
「俺は冒険者パーティー『天空の嵐』でリーダーをしているジャッカルだ。よろしく頼む。メンバーは、剣士のマーチ、盾のジュン、魔法使いのジュリー、弓使いのセプトの4人とオールラウンダーの俺を合わせて5人だ。」
リーダーのジャッカル、剣士のマーチ、盾のジュンは20代か30代の男性だ。魔法使いのジュリーと弓使いのセプトは10代後半か20代前半の女性だ。ジャッカルに続いて、今度はセリーヌが立ち上がった。
「俺はセリーヌだ。こっちは相棒のシルバーだ。よろしく頼む。」
品定めをするようにこっちを見た後、ジャッカルが言ってきた。
「セリーヌのことは知ってるさ。『雷使いのセリーヌ』って言えば有名だからな。当然、戦力になるのは分かる。だが、そっちのシルバーっていうのは戦力になるのか? 俺にはただの女の子にしか見えないんだがな。」
「大丈夫だ。俺の相棒だ! 安心しろ!」
ここで、商人のゴルドバが言った。
「では、総勢7名で護衛をしていただくということでよろしいですかな。明後日の早朝に出発しますので、よろしくお願いします。」
そして、解散となった。
「セリーヌ。気が付いたかな?」
「ああ、気づいたさ。ゴルドバって奴だろ?」
「なんかあの人からキナ臭い匂いがするんだよね。それに、近くにいた使用人達も血の匂いがしたよ。」
「同感だ。注意してみるようにした方がいいな。」




