魔王シルバー誕生!!!
決勝トーナメントが始まった。バンパイア族のブラッド、リリーが順調に勝ち上がった。そして、いよいよオレの番だ。試合会場の中央にはオレとエックスがいた。
「貴様は何者だ?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「俺様の情報に貴様とリリーとかいう小娘の情報はなかった。いきなり現れたから聞いたまでのことだ。」
「それより、ずっと僕達を見張っていたよね?」
「何故知ってるんだ?」
「だって、魔力が駄々洩れだったもん。エックスさんて悪魔族なんでしょ?」
「どうしてそれを?」
「だって、予選の時“自己再生”してたじゃん。自己再生できる種族って、限定されるよね。それに、魔力が悪魔族のものだよ。」
「やはり、お前は只者じゃないな。こうなれば仕方がない。」
エックスは試合開始の合図を待たずに、僕を殺す気で攻撃を仕掛けてきた。
『シャドウスネイク』
エックスの身体や地面から無数の毒蛇が現れた。僕に毒液を吐いて攻撃してくる。すかさず僕は後ろに飛びのいた。僕のいた地面が紫色に溶けている。僕は魔力を高めた。そして、魔力と闘気を一気に解放した。すると、顔つきが精悍な男の顔になり、背中には漆黒の翼が出た。
「お前じゃ役不足なんだよ。そんな小細工を使わないで、本気でかかって来いよ。」
オレの姿や言葉が変化したことにエックスは驚いた。
「貴様! 何者なんだ? その姿がお前の本当の姿か?」
「すべてが本当の姿だ。貴様のような低級の悪魔には言っても理解できんだろうがな。」
オレの言葉にエックスは顔を真っ赤にして激怒した。そして、身体がどんどん膨れ上がり5mほどの大きさになった。体は筋肉の塊のように頑強で、頭からは2本の角が出ている。さらに、背中には真っ黒な翼が出た。
「やはりグレーターデーモンだったようだな。」
「この姿を見た以上、お前には死が待っているだけだ。」
「それはどうかな? 貴様ごとき相手にならんと思うぞ! どこからでも、攻撃してきな。」
エックスは魔法を放った。真っ黒な光線がオレに向かってくる。オレは、それを片手で受け止めた。
「それがお前の全力か? やはり低級だな。」
「き、き、貴様!」
エックスの顔に焦りが見えた。そして、その焦りは恐怖へと変わる。オレの身体から出た真っ黒なオーラが会場全体を覆いつくす。そして、上空には真っ黒な雲が現れた。
「フン!」
「ビシッ ビシビシッ」
オレが体に力を入れると、オレを中心に地面に大きなクレーターができた。
「これからお前には死よりも辛いことが待っているから、覚悟するんだな。」
「や、やめてくれ! 見逃してくれ!」
「見逃すわけないだろう。」
『滅却斬』
オレが右腕をゆっくりと上から下に降ろすと、エックスの両腕両足が切断された。精神体のエックスの身体からは血が流れない。そして、切断された個所に黒い霧状のものがまとわりついていて、自己再生しようにも自己再生できない。
「ああ、言うのを忘れていたが、滅却斬できられた場所は自己再生できないからな。それに、肉体を分離して逃げようとしても無駄だ。既にお前の魂には、オレの魔法がかかっている。逃げたら、お前は永遠に地獄の苦しみを味わうことになるぞ!」
オレはエックスの身体を黒い鎖で拘束した。両腕両足を切断されたエックスには身動き一つできない。
「勝者シルバー!」
「・・・・」
観客は茫然としている。何が起こったのか理解できていないようだ。最初の目的であるサタンの部下の拘束は終わった。次は大会で優勝するだけだ。そのために、これ以上試合をするのも無駄なことだ。そこで、オレは次の一手に出た。
「オレの名前はシルバーだ! この大会に出たのは魔王になるためだ。勝ち残っている全員を相手に戦おうじゃないか。魔王ならそのぐらいできて当然だろう。どうだ!」
観客席からは大歓声が上がる。それは新たな魔王の誕生を期待する声だ。シルバーコールが会場内に鳴り響く。
「いいぞー! やっちまえ!」
「シルバー! シルバー! シルバー!・・・・・」
すると目の前にブラッドが現れた。恐らく、ブラッドはオレの正体を知っている。その上で彼は大きな声で言った。
「いいでしょう! ですが、魔族最強の私達全員を相手に、本当に勝つつもりでいるのですか?」
「当たり前だ! 魔王は最強でなくてはならない。そして、この国の魔族を新たな時代へと導く存在でなければならないのだ!」
竜人族のロンと天狗族のグーテ、それにリリーもやってきた。そして、竜人族のロンが言った。
「4対1で本当に勝つつもりなのか?」
「当たり前だ。」
すると観客席から声が飛んだ。
「やれー! 戦えー!」
すると、ブラッドが周りを見ながら言った。
「ならば、あなたが真なる魔王の器かどうか確かめてみましょう。他の皆さんもそれでよろしいですね?」
「ああ、1対1じゃないのが気に入らないが、こいつの強さは本物だ。一人じゃ無理だろうな。」
「俺も同じ意見だ。魔王の器かどうか確かめてやるよ。」
「シルバー! 私はどうすればいいの?」
「リリー! オレが魔王になるための戦いだ。本気でかかってこい!」
「わかったわ。」
いよいよ4対1の試合が始まろうとしていた。観客席ではセリーヌとトロルド、モモカが真剣に見ている。
「始め!」
ブラッドが霧状に姿を変えて、オレに攻撃を仕掛ける。そして、ロンは真っ白なドラゴンへと変身してオレにブレスを吐きだした。天狗族のグーテは風魔法で竜巻を起こす。ロンの炎とグーテの竜巻で、炎の竜巻が発生した。リリーは漆黒の翼を出し、最大の魔法で攻撃してきた。
『シャドウドラゴン』
漆黒のドラゴンが大きな口を開けて俺に襲い掛かる。オレは動かない。すべての攻撃がオレに直撃した。土埃が上がり何も見えない。しばらくして土埃がおさまると、そこには無傷のオレが立っていた。オレが天に向かって手をあげると、先ほどと同じように上空に真っ黒な雲が現れる。
『サンダーバースト』
オレが手を下ろすと、黒い雲から無数の雷が地上に向かって降り注ぐ。
「グハッ」
「ギャー」
「ゴボッ」
「グホッ」
光が収まると地面にはブラッド、リリー、ロン、グーテが横たわっていた。
「勝者シルバー!」
「ワ—————!!!」
「オ—————!!!」
どこからともなく始まったシルバーコールが響き渡る。
「シルバー!シルバー!・・・・・・」
すると、試合会場にセリーヌ、トロール族のトロルド、鬼人族のモモカが現れた。そして、全員に聞こえるように宣言した。
「新たな魔王の誕生だ———————!!!」
「オオオオオオオ—————————!!!」
「シルバー!シルバー!・・・・・」
オレは倒れているブラッド、リリー、ロン、グーテに魔法を発動する。
『オールリカバリー』
すると、上空から光の雨が降り注ぎ、彼らの身体を温かい光が包み込み、全員の身体の傷を癒していく。激しい火傷の後もすべて消え去った。
トロルドがぽつりと言った。
「わが主シルバー様は神なのか?」
「いいや。オレはなりたての魔王だ。」
そして、オレとセリーヌとリリー、トロルド、モモカが試合会場を後にして、選手控室に戻った。そこに、ブラッド、ロン、グーテ、スペリオ、エルメスが片膝をついて挨拶をしてきた。
「新たな魔王シルバー様。おめでとうございます。」
「ありがとう。みんなにもこれから協力してもらうからね。」
「何をですか?」
「オレは、魔族だけでなくこの世界を平和にするつもりだから。」
「承りました。魔王シルバー様。」
ここに魔王シルバーが誕生した。




