幼い日の約束
その翌日から、リリーと僕の魔法の練習が始まった。朝一番で野菜を収穫して、村に野菜を売りに行く。帰ってきたらすぐに魔法の練習だ。毎日。頭がくらくらするまで魔法を使うが、一向にうまくならない。でも、頭がくらくらするまでの時間が少しずつ長くなっている気がする。
「シルバーもリリーもだいぶ魔力量が増えたようじゃな。だが、2人とも魔力の制御ができていないんだ。だから、威力が小さすぎたり大きすぎたりするんじゃ。」
「おばあちゃん。制御ってどうすればいいの?」
「体の中の魔力はわかるね?」
「うん。」
「その循環させる速度をできる限り早くするんじゃ。ほれ! やってみぃ!」
僕もリリーも言われた通り魔力の循環を早くした。だが、なかなか早くならない。そして、その日は頭のくらくらがひどくなったのでやめることにした。
「シルバー! どっちが早く魔力の制御ができるか競争しようよ!」
「いいよ。」
「負けた方は、勝った方の言うことを何でも一つだけ聞くのよ!」
「ええ~! やだ~!」
「何よ! シルバーは男でしょ! 情けないわね~!」
「わかったよ。やるよ。でも、無理な命令は嫌だよ!」
「そんなことしないわよ!」
僕とリリーのやり取りをローズおばあちゃんはニコニコしながら見ている。まるで本当の姉弟のようだ。そして翌日、野菜を売りに村まで行ってきた後、リリーが言ってきた。
「シルバー! 昨日の約束、覚えてるわよね!」
「覚えてるよ。」
「なら、すぐに練習始めるからね。先に制御できた方が勝ちよ!」
僕はリリーの様子が気になって練習どころではない。リリーは我武者羅に練習している。そんなこんなで1週間が過ぎた。
「できたわよ! シルバー!」
リリーが手のひらに炎を出した。その炎が、小さくなったり大きくなったりしている。
「どう?」
「僕の負けだね。」
一方の僕は、リリーよりもはるかに大きな炎は出せるが、小さくできない。
「約束よ! 何でも言うことを聞いてもらうからね。」
「言ってみてよ。」
すると、リリーが顔を真っ赤にしてもじもじ始めた。
「どうしたの?」
「ちっと待ちなさいよ! そんなに急がせないでよ! 心の準備があるのよ!」
「心の準備? 何それ?」
「うるさいわね! 大人になったらシルバーは私の夫になるのよ! いいわね!」
「え~?!」
「約束したじゃない。何でも言うこと聞くって言ったでしょ! 私のことがイヤなの?」
「違うよ。でも、僕はリリーよりも弱いよ。僕なんかでいいの?」
「いざとなったら私が守ってあげるわよ!」
「わかった。ならいいよ。」
「約束よ。」
「うん。」
その日、街に言っていたローズおばあちゃんが帰って来た。どうやら僕とリリーの服を買いに行っていたようだ。
「リリー! シルバー! おいで!」
僕とリリーが行くとローズおばあちゃんが床に服を広げていた。見ると、どれも女の子用の服のようだ。すると、リリーが僕に服を当ててきた。
「こっちの服はシルバーね! 私はこっちがいい!」
どっちも普通のシャツにキュロットのようなパンツだ。2人が着るとどう見ても姉妹に見える。
「2人ともよく似合っているじゃないか。」
「おばあちゃん! ありがとう。」
「ありがとう。ローズおばあちゃん。でも、僕、もっと男っぽいのがいいな~。」
「そうかい。良く似合っているじゃないか。すごく可愛いよ。」
ローズおばあちゃんが僕の頭をなでてきた。最近自分でも自覚してきたが、どうやら僕の容姿は、少年というよりも少女のようだ。確かに村に言っても、「可愛い」とは言われるが、「カッコいい」とは言われない。僕が少しへこんでいるとリリーが言ってきた。
「シルバーは、私よりも可愛いんだから自信持ちなさいよ!」
リリーは励ましたつもりだろうが、僕の心は一層暗くなった。そして、翌日ローズおばあちゃんが買ってくれた服を着て、僕とリリーは村に行った。すると、いつもの通りマーサさんとダンテさんがいた。
「おや。今日はリリーちゃんとシルバー君はペアルックなのね。良く似合ってるわよ。可愛いわね~。」
「ありがとう。」
リリーが元気に返事をするが、僕は下を向いたままだ。すると、ダンテさんが声をかけてきた。
「マーサ! シルバーは男だぞ! 可愛いなんて言われたって嬉しかないぞ! そうだろ! シルバー!」
僕は小さく頷いた。
「やっぱりな。シルバーは、可愛いって言われるよりカッコいいって言われたいんだよな!」
再び小さく頷いた。すると、リリーが僕の背中をたたいて言った。
「シルバーは十分カッコいいわよ! でも、誰から見ても可愛いんだからしょうがいないでしょ!」
「アッハッハッ! リリーちゃんは姉さん女房になるな!」
今度はリリーが真っ赤になって下を向いてしまった。そして、荷物をすべて下した後、僕とリリーはいつものように荷車を引いて家まで帰ろうとすると、村の子ども達がいた。何やら木の剣で戦っている。
「ねぇ! 何やってるの?」
「おお。シルバーとリリーじゃねぇか! 俺達は剣の練習をしているのさ。将来父ちゃんのように強くなりたいからな!」
僕とリリーはしばらく様子を見ていた。すると、不思議なことに早いはずの剣の動きがゆっくりに感じた。その時は、あまり気のもせずそのままリリーと家に帰った。そして、いつものように魔法の訓練だ。




