セリーヌとシルバーの前世
オレは女神ナルーシャ様にあった。そこで、記憶も力もすべての封印が解除された。リリーやセリーヌにすべてを話そうかと悩んだが、当面は秘密にすることにした。オレとリリーの横にはセリーヌとトロルドがいた。
「シルバー! お前、まさか封印が解けたんじゃないのか?」
「まぁね。でも、記憶が全部戻ったわけじゃないよ。まだ、頭の中がぼんやりしているんだよね。」
「そうか。」
オレはみんなに嘘をついた。まさか、オレが伝説の魔王アンドロメダの生まれ変わりだとは言えない。同時に、姿も口調もシルバーに戻すことにした。
「あっ! シルバーが元に戻ってく~! カッコよかったのにな~!」
リリーが残念そうだ。そして、セリーヌが疑いの目で見ながら言った。
「封印が解けたなら、また、姿を変えられないのか?」
「自分で意識してるわけじゃないもん。無理だと思う。」
すると、トロルドが泣きながら近づいてきた。
「シルバー様。良かったです!」
トロルドも心配してくれていたようだ。トロルドの横に目を向けると、巨乳美女がいた。モモカだ。
「シルバー様。この度は申し訳ありませんでした。あなた様のお力がこれほどとは思ってもいませんでした。どうかお許しください。許していただけるのでした、私を好きにしていただいて結構ですので。」
すると、リリーが僕の上に覆いかぶさった。
「ダメ! シルバーは私のものなんだからね。」
僕はゆっくり起き上がって、みんなに言った。
「早く王都に行かなきゃ。リリーと武闘大会に参加するんだもん。」
「ならば、私もお供させてください。」
モモカまで同行すると言い出した。トロルドと同じように、断ってもついてくるだろう。ならばと思い、同行を許可した。そしてその日は、鬼人族の村に泊まることになった。僕達はモモカの家に行くことになったが、トロルドは体が大きくて中に入れない。そこで、僕は魔法を使うことにした。
「トロルドさん。ちょっとこっちに来てくれるかな。」
「なんでしょう。シルバー様。」
「トロルドさんに便利な指輪をあげる。」
僕は魔法で指輪を作った。その間、僕の姿は神々しい光に包まれた。そして、できた指輪をトロルドに渡した。
「こ、こ、これは」
「体の大きさを変える指輪だよ。」
「そんなことができるのですか?」
「うん。いろんな魔法を思い出したからね。」
『ビッグアンドスモール』
僕が教えた魔法をトロルドが唱えた。すると、指輪が光り、トロルドの身体がどんどん小さくなっていった。
「な、な、なんと?!」
魔法を唱えた本人が驚いている。
「ほ~! それはすでに失われた魔法だな。」
まずい。セリーヌは魔法のスペシャリストだ。僕の秘密がばれてしまう。
「なんか、うっすらとした記憶の中で思い出したんだよね。」
「そうか。ならばいいが。やはり封印が解除されたようだな。」
僕達は全員でモモカさんの家の中に入った。先ほどの部屋とは違い、奥の部屋へと案内された。そして、そこには大きな像があり、その人物に見覚えがあった。
「この像は、我らが先祖のイブキ様です。太古の昔、魔王アンドロメダ様とともに、世界を平和へと導いたお方です。」
「イブキ様は世界が平和になった後、どうされたんですか?」
「私も詳しいことは知りませんが、アンドロメダ様が行方知れずになってから、アンドロメダ様の側近達はそれぞれの種族のもとに戻ったと聞いています。イブキ様も同じように鬼人族の村に戻ってこられたようですが、晩年は家に引きこもりがちなったそうです。」
「そうですか?」
僕の悲しそうな表情をセリーヌは見逃さない。
「どうして魔王アンドロメダは行方知れずになったんだろうな?」
わざと僕に聞こえるようにセリーヌが言った。
「さあ、そこまでは私も知りません。今お話ししたことも、先祖たちからの言い伝えですから。」
その後、広場で僕達の歓迎会が開かれた。歓迎会ではトロール族の村と同じように食べきれないほどの食料が出された。だが、僕はイブキのことを考えるとあまり食欲がわかなかった。
「どうしたの? シルバー! 元気ないよ! 食べないの?」
「そうですぞ! シルバー様! これほどの料理、トロールの村でもなかなか食べられませんぞ!」
リリーが心配そうに声をかけてきた。トロルドは料理を端から食べまくっている。
「シルバー! ちょっといいか?」
僕はセリーヌに呼ばれてみんなから少し離れた場所に連れてこられた。すると、セリーヌがいきなり僕に攻撃してきた。普通の人間ならその場で死んでいただろう。手に魔法をかけ、光の剣で切りかかってきたのだ。僕は身動き一つしない。しかし、不思議なことに光の剣は僕の身体を通り抜けていく。まるで、僕の身体が実体でないようだ。
「いきなり何するんだ! セリーヌ!」
「確かめさせてもらったんだよ。シルバー! いや、魔王アンドロメダ!」
「・・・・」
「お前の今の魔法はアンドロメダ以外には使った記録がない。正直に答えろ!」
僕は悩んだ。すると、セリーヌが語り始めた。
「ふざけた話と思われるかもしれないが、俺はアンドロメダとともに世界を平和に導いた四天王の一人、ビーナスの生まれ変わりだ。アンドロメダが行方知れずになってから、俺は堕天使族に戻った。だが、どうしてもアンドロメダのことが忘れられずにいたところを、女神ナルーシャ様にお会いしたのだ。そして、ローズばあさんの子どもとして転生したのさ。最初に会った時から、お前からは、あの懐かしいアンドロメダの匂いがするんだよ。正直に言ってくれ! シルバー!」
セリーヌが出した名前、ビーナスは確かに僕の仲間だった。その仲間が、今自分の目の前にいるのだ。嬉しくないわけがない。僕の目から自然と涙が溢れた。
「ビーナス。すまなかったな。オレの我がままに突き合わせてしまって。確かにオレはお前の言う通り、魔王アンドロメダの生まれ変わりさ。だが、お前と違って親はいない。姿を変えられて、この世界に送り込まれたのさ。」
「やはりな。会いたかったぞ! アンドロメダ!」
セリーヌがオレに抱き着いてきた。オレにとって四天王達は家族も同然だ。特にビーナスがオレに恋心を抱いていたことも知っている。
「セリーヌ。このことは2人だけの秘密だ。オレがアンドロメダということは内緒にしてくれ。当然、お前がビーナスの生まれ変わりということもだ。」
「どうしてだ?」
「ナルーシャ様にお願いされたなんだよ。再び乱れ始めたこの世界の秩序を守るようにとな。」
「またか?! いつになったら、世界に争いが起きなくなるんだ! そうして、お前は世界を平和にしたら、また俺の前から姿を消すんだろ?」
「それはわからない。神の意志はオレ達には分らないだろ。」
セリーヌが拳を強く握りしめながら、涙をこらえている。そして、言った。
「わかった。でも、リリーにもローズばあさんにも内緒にするのか? お前はそれでいいのか?」
「時期が来たら話すさ。だが、今はその時じゃない。」
「いいだろう。なら、俺も黙ってるよ。」
「ありがとう。ビーナス。」
「な~に、いつものことじゃないか。お前は昔から我がままだからな。」
僕とセリーヌはみんなのところに戻った。セリーヌに話して少し気分が晴れた。僕は戻った後、目の前の料理を思いっきり食べた。
「どうしたの? なんか元気が出たようだけど。セリーヌと何かあったの?」
「何でもないよ。」
「そう。」
リリーは僕にそれ以上何も聞かなかった。恐らく聞いたらいけないと思っているのだろう。




