鬼人族の村
僕達はトロール族の村で一晩止めてもらった。そして、トロール族の族長のトロルドを仲間に加えて、4人で王都を目指すことになった。
「シルバー様。お気を付けください。この辺りの森にはホーンウルフの群れがいますので。」
しばらく歩いていると、トロルドの言った通りホーンウルフの群れに遭遇した。驚くほど体が大きい。体長3mはありそうだ。リーダーと思われるホーンウルフには2本角があった。
「リリー! 僕がやるよ!」
「いいけど、怪我しないでね!」
「大丈夫さ。」
「お一人で大丈夫ですか? 私がともに戦いましょうか?」
「トロルドさん! セリーヌも手を出さないで! これは僕の修行なんだから!」
「承知しました。」
僕は剣を抜いてホーンウルフに切りかかった。さすがにホーンウルフも速いが、不思議と僕にはゆっくりに感じる。恐らく、トロルドもギリギリ見えているかどうかだろう。
3匹を倒したが、まだまだ数が多い。シルバーウルフが僕を囲い込むように陣取った。
「これからが本番さ! 見てて!」
『シャドウアロー』
上空に黒い矢が数本現れる。シルバーウルフが僕に襲い掛かろうとした瞬間、矢が一斉にシルバーウルフに襲い掛かる。動き始めた時だけに、シルバーウルフは避けきれない。
「ギャインギャイン」
土埃がおさまった後には、シルバーウルフの死体が数体転がっていた。他のシルバーウルフは逃げて行ってしまったようだ。僕はそれを一つ一つ魔法袋に仕舞っていく。
「どうだった? リリー!」
「動き始めを狙ったのは良かったわね。」
「やっぱりね。」
すると、トロルドが後ろから声をかけてきた。
「先日のシルバー様とは別人のようですな。やはり、封印のせいですか。」
すると、セリーヌが気になることを言った。
「シルバーは記憶が戻るたびに力が増しているようだな。」
「そうかな~?」
自分ではあまり実感がわかない。でも、セリーヌがそういうなら間違いないかもしれない。
「なら、シルバーの記憶が全部戻ったら、封印が完全に解除されるってこと?」
「恐らくな。だが、意識のない時のシルバーは完全に別人だ。封印が解除された後、シルバーが今のシルバーのままかどうかはわからんぞ。」
「なら、僕は今のままがいい。リリーのことを忘れるのは嫌だもん。」
リリーが真っ赤になって下を向いてしまった。何故かトロルドが僕とリリーをチラチラと見る。
「トロルドさん。違うから! リリーと僕は姉弟だからね!」
最初は兄妹の関係だったが、いつのまにか立場が逆転してしまった。今では人に紹介するときは、姉弟と説明している。
「そうですか。知らぬこととはいえ、失礼しました。」
4人は鬼人族の村に向かって、再び草原地帯を歩き始めた。かなりの時間歩いたと思う。日が暮れ始めてきた。
「今日はこの辺で野宿でもするか!」
「そうですな。鬼人族の村まではまだ距離がありますので、その方がよろしいでしょうな。」
僕とリリーは食材を探しに行くことにした。草原地帯で丸々太ったホーンラビットを見つけた。僕はセリーヌに言われたことを確かめるために意図的に魔法で攻撃した。
『シャドウビーム』
僕の指から黒い光が放たれた。そして、黒い光は一瞬にしてホーンラビットの身体を貫く。
「セリーヌが言った通りね。やっぱりシルバーの魔法の威力が上がってるわ。」
「なんか不安なんだけど。」
「大丈夫よ。シルバーなら。」
仕留めたホーンラビットを持って帰ると、セリーヌとトロルドが何やら真剣な表情で話をしていた。僕達に気付くと話をやめ、ホーンラビットをさばいて調理を始めた。
「このホーンラビットは丸々太っていて、美味しそうですな。」
「トロルドさんは体が大きいんだから、たくさん食べてね。」
「感謝します。シルバー様。」
その日も、セリーヌが僕達の寝る範囲に結界を張ってくれた。お陰で全員がぐっすり寝ることができた。そして、翌朝、僕達は再び鬼人族の村に向けて出発した。鬼人族の村に着いたのは丁度昼頃だった。
「この村って何か人族の農村に似てるわね。」
すると、リリーの疑問に答えるようにセリーヌが教えてくれた。
「そうだろうな。鬼人族は元々人族と交流が盛んだった種族だ。人族の文化がそのまま残っているんだろうさ。」
僕達が村に入ると、兵士のようなかっこをした男達がやってきた。全員が鎧のようなものを身につけている。
「お前達は何者だ? トロール族までいるではないか?」
「僕達は武闘大会のために王都まで行く途中なんだ。」
「そうか。村に入ったからには、我が族長に挨拶してもらうぞ!」
するとセリーヌが言った。
「いいだろう。族長のところに案内しろ!」
鬼人族の兵士達の腰には、剣とは違う形状をした武器があった。
「皆さんが腰に下げている武器は何ですか?」
「あ~。これか? これは昔から鬼人族に伝わる刀という武器だ。」
「なんか面白い形をしてるわね。」
「恐らく、鬼人族が昔の時代に人族との交流で知ったのだろうな。」
そんな話をしていると、族長の屋敷の前に着いた。普通の家と造りが違う。庭には池があり、池の中にはカラフルで大きな魚が泳いでいた。
「中に入れ!」
リーダーらしき兵士に案内されて、建物の中に入ることにした。トロルドは外で待っている。僕達が族長の部屋の前に来ると、部屋の奥からかなり強い『気』が感じられた。注意しながら扉を開けて部屋の中に入ると、そこには巨乳の美女がいた。
「よくぞ参った。」
「初めまして。僕はシルバーです。」
「私はリリーよ。」
「俺はセリーヌだ!」
「私は鬼人族の族長をしているモモカだ。お前達は武闘大会に出ると聞いたが。」
「そうよ。私とシルバーの2人が出るつもりよ。」
「そうか。武闘大会に出て魔王にでもなるつもりか?」
「別に僕は魔王とか興味ないんだけど。」
「私もよ。」
「なら、なぜ武闘大会に出るんだ。」
ここではサタンのことは伏せておきたい。
「僕もリリーも、自分がどれだけ強いのか知りたいだけだよ。」
「なる程な。力試しか。よかろう。ならば、私がお前達の力を確かめてやろう。裏手の武闘場まで来い。」




