トロルドと戦う!
トロール族の村に着くと、いきなりリリーがトロール族の族長トロルドと戦うことになった。一進一退の中、身体の大きなトロルドの攻撃でリリーが怪我を負った。今、僕の前には怪我をしたリリーがいる。リリーの傷ついた姿を見て、身体の底から闘気が膨れ上がって来た。僕は必死で抗ったが、意識が薄らいでいく。次の瞬間、僕の全身から漆黒のオーラが爆散した。そして、背中に真っ黒な翼を生やした僕がいた。
「リリー! 交代だ! こいつはオレが相手をする。後ろに下がっていろ!」
女のような姿だった僕が、口調も姿も完全に男に変化した。見物人もトロルドも驚いている。
「俺様は構わないぜ。姿が変わった程度で、俺様に勝てるつもりか?」
オレは瞬間移動してトロルドの後ろに回った。両手両足を切り落とす。それは一瞬の出来事だ。トロルドは胴体と頭だけになって転がっている。オレは、両手に魔法を発動する。
『シャドウボール』
両手で真っ黒な球体を持ち上げている。この球体が直撃すれば、跡形もなく消し去るのは誰の目にも明らかだ。オレの鋭い眼光に、トロルドは完全に戦意を失った。トロルドは恐怖で声を震わせながら言った。
「参った! 降参だ! やめてくれ!」
オレが両手の魔法を解除すると、リリーがオレに駆け寄って抱き着いてきた。その瞬間、オレはその場に倒れた。
気が付くと、僕の頭はリリーの膝の上だ。そして、リリーが話しかけてきた。
「気が付いたのね。やっぱり、シルバーは強いわ!」
セリーヌもゆっくり頷きながら歩いてきた。周りを見ると、身体がバラバラになったトロルドが再生を始めていた。周りの見物人達が何やら騒いでいる。
「おい! 見たかあの強さ! あの方は伝説の魔王、アンドロメダ様じゃないのか?」
完全に再生したトロルドが起き上がって僕に片膝をついて言った。
「私の負けです。あなた様の強さには驚きました。これから、我らはあなた様に従います。」
僕には状況がよくわからない。
「リリー! 何があったの?」
「シルバー! あなたがここにいるトロルドを一瞬で倒したのよ!」
「それ、本当? 信じられないんだけど。」
するとセリーヌが言った。
「リリーの言うことは本当だ。お前の隠れた力が再び解放されたんだ!」
「ごめん。僕、覚えてないや。でも、また少しだけ記憶が戻ったよ。」
「どんな記憶?」
「僕は以前とても大切な人を失ったんだ。すごく、悲しくて悲しくて。」
自然と僕の目から涙が溢れた。そうだ。僕がたくさんの人を殺めたのは、僕の大切な人を奪われたからだ。でも、一体いつの記憶だろう。それに、あの大切な人は誰だったんだろう。
「シルバー様。いかがでしょうか? 私達を家来にしていただけないでしょうか?」
「ごめん。僕はトロルドさんと戦ったことを覚えてないんだ。それに、もしそうだとしても、トロルドさん達を従わせるために戦ったわけじゃないよ。ただ、武闘大会に参加するのに王都に行きたかっただけなんだ。」
「どういうことでしょう?」
トロルドがリリーに聞いた。
「シルバーは封印がかけられているのよ。だから、普段は優しくて可愛らしい女の子のようになるの。」
「何と、そうだったんですか。ならば、私も同行しましょう。これからはあなた様の盾となりましょう。」
僕はセリーヌとリリーを見た。恐らく断ってもついてくるだろう。ならば、一緒に同行することを許可したほうがいい。そして、その日はトロールの村に滞在することにした。ものすごい歓迎だ。目の前には食べきれないほどの食事が用意されている。当然だが、トロールは巨人族だ。必然的に食べる量も半端ではない。自分達と同じつもりで用意したのだろう。
「トロール族って初めて会ったけど、すごく紳士的よね。それに、女性も美人の人が多いわ。」
「そうだね。でも、目のやり場に困るよ。」
すると、慌ててリリーとセリーヌが自分達の胸を隠した。トロール族の男性は腰に布を巻いているだけの姿だ。女性も、胸と腰に布を巻いている。だが、女性達の胸が大きく、布に収まりきらずにはみ出しているのだ。
「シルバー! どこ見てるのよ! 嫌らしいわね!」
「だって、あれだけ大きいと目に入るじゃないか!」
そこに族長のトロルドがやってきた。
「シルバー様。食事はお気に召しましたか?」
「トロルドさん。『様』はやめようよ!」
「いいえ。そういうわけにはいきません。シルバー様はいずれこの国の王、魔王になられるお方ですから。」
「トロルドさんには申し訳ないけど、僕は魔王にはならないよ。」
「どうしてですか?」
「だって、魔王って魔族で一番強いんでしょ。リリーやセリーヌならまだしも、僕には無理だよ。それに、魔王って人望が必要なんでしょ? こんな風になよっとした僕には無理だよ。」
するとリリーが言った。
「そんなことないと思うよ。封印を解除したら、シルバーは最強だもの。」
僕の困った顔を見て、隣ではセリーヌが微笑んでいる。
「シルバー様。もしよかったら、トロール族の中で気に入った女性を妻に娶ってください。第1夫人とは言いません。第2でも第3でも構いませんから。」
トロール族の女性が一斉にこっちを見た。みんなうっとりした視線で僕を見ている。やっぱり魔族だ。強いものに憧れるようだ。するとリリーの顔が引きつった。
「僕はまだ、未成年だよ。それに、リリーといるのが楽しいから。」
「そうですか。では、いずれまたお考え下さい。」
僕の言葉を聞いてリリーが上機嫌になった。
「シルバー! 今日マッサージしてあげる! 長旅で疲れたでしょ。」
「いいよ。それより、次の村はどんな種族なの? セリーヌ!」
「そうだな。道順で行けば鬼人族の村だな。」
「鬼人族か~。」
「どうした? 鬼人族に知り合いでもいるのか?」
「そういうわけじゃないけど。なんか懐かしさを感じるんだよね。」
するとリリーが言った。
「なら、もしかしたら、鬼人族に会えばシルバーの記憶が戻るかもしれないわね。」
その日、僕達3人はトロルドの屋敷に泊まることになった。家も大きいが、家具も大きい。ベッドは5人以上が寝れるぐらいの広さがある。僕とリリーはいつものように同じベッドで寝た。そして翌日、トロルドと僕とリリーとセリーヌで鬼人族の村に向かった。




