サウルス島
魔族の国アスラにむって出発した僕達は、セリーヌの転移魔法でエドバルド大陸の最西端まで転移した。
「さて、ここからは飛翔していくが、途中にサウルス島っていう島があるんだ。大きな島だからすぐにわかると思うが、そこで休憩していくからな。」
「了解。」
僕達3人は背中に翼を出して、上空に舞い上がった。ある程度のスピードを出すために、3人とも自分に結界を張っている。6時間ほど飛翔したところで眼下に島が見えてきた。かなり大きな島だ。セリーヌが島に降りた。僕とリリーも、セリーヌの後に続いてサウルス島に舞い降りる。
「なんか、この島っていろんなものが大きくない?」
「そうだね。木も大きいし、そこにいる蟹もやたら大きいよ!」
僕が指をさすと、リリーの足元に大きな蟹がいた。
「キャー」
リリーは悲鳴を上げて僕に抱き着いてくる。すると、ニヤニヤ笑いながらセリーヌが教えてくれた。
「我々魔族が、なぜマジカル大陸に住んでいるのか知ってるか?」
「どうして?」
「魔素が濃いからだ。我々魔族は他の種族と違って、生活するのに魔法をよく使う。そのためには魔素を使用するんだ。当然、マジカル大陸に近いほど魔素が濃くなるから、生物も大きく成長するのさ。」
「なら、マジカル大陸ではもっと大型化するの?」
「そうだな。ここよりは大きいな。」
僕達はマジカル大陸に行く前に、このサウルス島を探索することにした。当然、島に道などない。道なき道を歩くしかない。だが、この島全体がジャングルのようになっている。そうなると、大型化した昆虫もいる。
「キャー」
「どうしたの? リリー!」
「あれ!」
リリーの指さす方向を見ると、かなり大きなイモムシがいた。
「あいつはアガーハの幼虫だ。焼いて食べると旨いぞ!」
僕もリリーも食べる気がしない。だが、セリーヌがどうしても捕獲するようにうるさいので、僕は氷魔法で討伐して空間収納に仕舞った。
「あれは何?」
リリーの指さす方を見ると、大きな木の上の部分に巨大な壺のような形のものがあった。
「あれはジャイアントビーの巣だな。あの巣からとれる蜜は絶品なんだぞ! 採りに行くぞ!」
セリーヌがどんどん先を進む。僕達も後をついて行く。近くに見えていたが、巣までは意外と遠い。すると、遠くの方から大きな音が聞こえてきた。
「ブ~ン ブ~ン」
「ギャー」
何かが争っているのかもしれない。僕達は足音を立てないように近づいた。すると、目の前で、大きな蜂の群れと巨大なホーンベアが戦っていた。
「あのホーンベアが蜜を狙っているんだな。それをジャイアントビーが攻撃しているんだ!」
「セリーヌ! どうするの?」
「簡単なことさ。見てろよ!」
セリーヌは背中に翼を出し、瞬間移動でジャイアントビーの巣まで行った。そして、木から巣を切り離し、巣を持って再び転移して戻って来た。その下では、何も知らずにジャイアントビーとホーンベアが戦っている。すでに巣がないことに気付いていない。
「アッハッハッ! どうだ!」
「なんか、あの魔物達が気の毒だね!」
「これも頭脳戦の勝利だ!」
魔法袋に仕舞って、3人は急いでその場を離れた。浜辺に戻った後、セリーヌが調理を始めたので、僕とリリーは果物の採取に向かった。森の中を探しながら歩いていると、目の前に巨大なピンキーがあった。
「ここのピンキーって、私達が普段食べるものの2倍はあるよね。これだけでお腹いっぱいになりそう。」
「リリーは多分2個ぐらいいけるんじゃないかな?」
「何よ! 私はそんなに大食いじゃないわよ!」
「僕はたくさん食べてるリリーが好きだけどね。」
「えっ?! そうなの?」
「だって、いつも口一杯に頬張って、まるで栗鼠のようじゃないか?」
「ひどーい!」
僕達は大きなピンキーを魔法袋に仕舞って、セリーヌのところに戻った。何か香ばしくていい匂いがする。
「お帰り。ご飯の用意はできてるぞ!」
「美味しそう!」
リリーも僕も腹が空いていたこともあり、ガツガツと食べた。そして、魔法袋からピンキーを取り出した。
「ピンキーじゃないか。旨そうだな。」
すると、セリーヌから思わぬ言葉を聞かされた。
「お前達が食べた料理は・・・・」
すると、セリーヌが言いかけた時、リリーが言った。
「オークでしょ? すごく美味しかったもん。もしかしたら、ジェネラルだったりして。」
「違うぞ! お前達が食べたのは昼に捕ったアガーハの幼虫だ!」
「えっ?!」
セリーヌの言葉を聞いて、僕達の顔色が青く変化した。僕もリリーも急に吐き気をもよおす。
「おい! 2人とも大丈夫か?」
「大丈夫だよ。」
その後、口直しにピンキーを食べてみんなで寝た。朝方、地面が揺れるのを感じて起きると、セリーヌも起きていた。
「あの音、何?」
「シルバー! 早くリリーを起こせ! 奴が来る!」
「奴って?」
「この島で最強の肉食魔獣だ!」
僕はすぐにリリーを起こした。だが、リリーはまだ寝ぼけている。目をこすりながら、寝言のように言った。
「アガーハは嫌よ!」
「リリー! しっかりしろ! ティラノが来るぞ!」
すると、森の中から目の前に巨大なオオトカゲが現れた。トカゲのくせに2本足で立っている。しかも、口からは巨大な牙が上下2本ずつ出ていた。リリーの眠気が一気に覚めたようだ。
「セリーヌ! なに? あれ!」
「この島の最強生物だ。気を付けろ!」
ティラノは僕達を睨みつける。そして、大声をあげながら大きな口を開けて突進してきた。
「ゴー」
『アイスカッター』
リリーが魔法を放つが固い鎧のような皮膚に跳ね返された。ティラノはリリーを睨んで、リリーを尻尾で攻撃してきた。すかさずセリーヌが剣でそれを防ぐ。
「ありがとう。セリーヌ。」
「油断するなって言ったろ!」
僕もティラノに向けて魔法を放つ。
『シャドウアロー』
すると、空中に何本か黒い矢が現れ、ティラノに向かって放たれた。矢はティラノの顔を中心にあたるが悉く跳ね返される。だが、1本だけティラノの右目に当たった。ティラノは右目を潰され、一瞬立ち止まったが、再びものすごい勢いで僕達に向かってきた。
「2人とも上空に飛翔しろ!」
僕達3人は上空に逃れた。だが、ティラノは口から火を吐く。その攻撃はあまりにも強烈で、巨大な火炎放射器のようだ。
「このままだとまずいな。この島の森に火が移るぞ!」
「なら、どうするの?」
僕はティラノの注意をひくために、ローズおばあちゃんからもらったミスリルの剣で切りつけた。さすがミスリルの剣だ。ティラノの足から血が流れた。
「ギャー」
ティラノは怒って、大きな手と足で攻撃してきた。その攻撃は何とかかわしたが、後ろから巨大な尻尾で叩きつけられた。僕は後ろに大きく弾き飛ばされ、巨大な木にぶつかった。
「グハッ」
「シルバー!!!」
リリーの顔が怒りの表情に変わり、全身から真っ黒なオーラが出た。そして、魔力がどんどん高まっていく。
「よくも私の大切なシルバーをいじめたわね! 許さない!」
『サンダー』
すると、空は晴れているにもかかわらず、上空から巨大な稲妻がティラノに落ちた。
「ドドドドッ————ン」
ティラノは口から煙を吐き出しながら地面に倒れた。セリーヌとリリーが僕のところにやってきた。
「さすがだな。リリー!」
「やっぱりリリーはすごいや。」
「そ~お? なんか頭に来ちゃって!」
「リリーの怒りの感情が爆発したんだろうな。」
「それより、シルバー! 大丈夫? 立てる?」
「何とかね。ありがとう。リリー!」
「やっぱり、私がお姉ちゃんね。」
「そうだね。」
「アッハッハッ 痛っ!」
ティラノを魔法袋に仕舞って、僕達は再びマジカル大陸に向けて飛翔した。




