シルバーの魔法練習
僕はリリーに魔法の使い方を学ぶことになった。リリーは魔法の使い方を丁寧に教えてくれた。
「最初に、自分の体の中の魔力を感じるのよ!」
「魔力って?」
自分の身体の中に神経を集中させたが、何も感じない。
「何も感じないよ!」
すると、悩むようにしていたリリーが手を差し出した。
「私の手を掴んでみて。」
リリーの手を掴むと、体の中でビリビリと何かが流れるのを感じた。
「どう? 何か感じた?」
「うん。なんかビリビリしたものがお腹に向かって流れたよ。」
「感じたんだ~! なら、シルバーも魔法が使えるかもしれない!」
「本当?」
「そのビリビリが魔力だもん。」
「ふ~ん。」
「そしたら、そのビリビリを手のひらに集めるのよ。そして、詠唱するの。」
「詠唱って何?」
「『燃え上がる火よ。我に従いたまえ。』って、言うのよ。」
僕は手のひらを上に向けて、言われた通りやってみた。だが、うんともすんとも言わない。
「やっぱりダメみたい。」
「諦めちゃだめよ。何回も練習しなくちゃ!」
その日はローズおばあちゃんが帰ってくるまで魔法の練習をした。練習を始めて3時間ほどした頃、なぜか頭がくらくらし始めた。
「リリー! 頭が痛いんだけど!」
「魔力切れね。少し休んだ方がいいわ。」
ローズおばあちゃんが帰ってくる前に、僕とリリーはお昼ご飯の用意をした。子どもの作るものだ。簡単な料理しかできない。するとローズおばあちゃんが帰って来た。ローズおばあちゃんの様子がなにかおかしい。服のところどころが破れている。それに、手を怪我しているみたいだった。
「おばあちゃん! 大丈夫?」
「ああ、大丈夫さ。」
「どうしたの?」
「魔獣を退治してきたんじゃよ。ほれ!」
ローズおばあちゃんは袋の中から巨大なクマの魔獣を取り出した。僕は思わず悲鳴を上げてしまった。
「ギャー」
すると、リリーが腹を抱えて笑い始めた。
「シルバーったらおかしい! 『ギャー』だって!」
なんか少し腹が立ってきた。初めて見る魔獣だ。怖くたって仕方がない。それにいきなり目の前に出されたら、誰でも驚くだろう。
「リリー! 笑いすぎだよ!」
「ごめん。ごめん。プッ」
当分、リリーのことは無視しよう。
「ローズおばあちゃん。お昼ご飯の用意できてるよ。」
「これはお前達が作ったのかい?」
「うん。」
ローズおばあちゃんが僕とリリーの頭をなでてくれた。
「ありがとうよ。手を洗ってきたらいただくよ。」
ローズおばあちゃんが外の井戸に手を洗いに行った。リリーはいまだにクスクスしている。
「フン! 僕、もうリリーとは絶交だよ!」
「ごめん! もう笑わないから許して!」
今度は真剣な顔で謝って来た。
「いいよ。許してあげる。それより、ご飯食べようよ。」
ローズおばあちゃんも戻ってきたので、3人で椅子に座ってご飯を食べ始めた。
「リリー。シルバー。お前達、今日は何をしてたんだい?」
「魔法の練習よ! ねっ! シルバー!」
「うん。」
僕が寂しそうに答えると、ローズおばあちゃんが聞いてきた。
「その様子だと、シルバーは魔法が使えなかったのかい?」
「うん。僕には無理みたい。」
「なら、後でわしが指導してやるよ。」
「本当?!」
「おばあちゃん。私にも教えて!」
「いいさ。リリーも一緒に練習しようかの~。」
昼食を食べ終わった後、裏庭で魔法の練習が始まった。僕はリリーに教わった通り、手のひらを上にして詠唱を始めた。すると、途中でローズおばあちゃんに止められた。
「ちょっと待ちな! シルバー! お前は詠唱している間に何を考えておるんじゃ。普通なら詠唱すると魔力が高まるというに、お前の場合は逆だ。魔力が拡散してしまっておる。」
「火が出なかったらどうしようか・・・・」
「そうか。自信がないんじゃな。いいかい! リリーもよく聞くがいいさ! 魔法っていうのはな、 想像力なんじゃよ。どんな想像をするのか。どんだけ強く念じるかによってその威力も変化するんじゃ。」
「そうなの?」
「ああ、本当じゃ。」
「なら、すっごく強い炎を想像すれば強い炎が出るの?」
「ああ、そうじゃよ。ただし、魔力量があればの話じゃがな。」
「魔力量って増やせないの?」
「増やせないことはないさ。だが、それぞれ個人によって器の大きさは決まっておるんじゃ。いくら頑張っても限界はあるじゃろうな。」
ここまで黙っていたリリーが、真剣な顔でローズおばあちゃんに聞いた。
「魔力量はどうやって増やすの?」
「頭が痛くなるまで使うのさ。常に限界を意識して使い続ければ、魔力量は自然と増えるもんじゃ。」
さっき頭が痛くなったあれのことだ。でも、あの痛さを何度も経験したくはない。
「さて、シルバー! 今度は真っ赤に燃え上がる炎を想像しながら魔法を使ってみな。」
「うん。」
僕は手のひらを上にして精神を集中させた。そして、言われた通り激しく燃え上がる炎を想像しながら、詠唱を唱え始める。すると、詠唱を始めた瞬間、僕の手のひらに轟轟と燃え上がる炎が出た。しかも、その炎は青白かった。
「何と!」
「シルバー! すご———い!」
魔力量が回復していないのか、炎はすぐに消えた。
「ローズおばあちゃん。ありがとう。できたよ。」
「そうじゃな。」
おばあちゃんは何かを考えこむようにしながら返事をした。続いてリリーが魔法を発動するが、先ほどのように『ポッ』っと小さな炎が出るだけだった。それでも、ローズおばあちゃんはちゃんと褒める。
「私もシルバーのように大きい炎を出したい!」
「そのうちできるじゃろ! まだ、魔力が小さいんじゃよ。リリーは。」
「シルバーは私より魔力量が多いってこと?」
「そうじゃな。シルバーは生まれつき魔力量が多いようじゃ。」
「なんか、ずる~い!」
その日の魔法練習はそれだけで終わった。その後はみんなで畑仕事をしてから夕食を食べた。
「リリー! お風呂、あんまり熱くしないで~!」
「だって、私は熱いのが好きだもん。それに、おばあちゃんも熱いのが好きよ。」
「じゃあ、僕、一人で入りたい!」
「何を贅沢なこと言ってるの? 背中の洗いっこはどうするの?」
「僕、一人で洗えるもん!」
「いいよ———だ! なら、もうシルバーとは一緒に寝てあげないもん!」
「それは困る!!!」
「なら、我慢しなさい!」
「・・・・・」
そう、僕は一人で寝られない。なぜか、不思議と暗いのが怖いのだ。仕方がないので、お風呂の熱さは我慢することにした。




