リリーの両親の仇、その名はサタン!
ピッツデリーのダンジョンで修行を終えて家に帰ると、ローズおばあちゃんは庭の畑で野菜の手入れをしていた。
「おばあちゃん! ただいま~!」
「おお、帰って来たか!」
「ローズおばあちゃん! ただいま!」
「2人とも元気でよかったよかった!」
すると、後ろからセリーヌが姿を見せた。
「母さん! 久しぶり!」
「セリーヌか?! やはり変わらんな~! お前は!」
「時間を止めてるんだから、当たり前だろ!」
「家の中に入れ! リリーとシルバーの成長を聞かせておくれ!」
4人は家の中に入った。そして、セリーヌが話し始めた。
「今回はピッツデリーのダンジョンに行ってきたんだ!」
「確か、あそこのダンジョンは、お前が最初に踏破して管理者になってるところじゃないのかい?」
「おばあちゃん。管理者って何なの?」
「管理者っていうのはダンジョンの中の魔物の種類やドロップ品を決めたり、魔物の強さを設定できたりする存在じゃよ。」
「え————! そうなの?!」
リリーが驚いて聞いた。
「ああ、そうさ。」
今度は僕が質問した。
「もしかして、最後に最下層に行ったのはなんか理由があるの?」
「ダンジョンのレベルを戻していたんだ! お前達のためにレベルをあげといたからな。」
「そうだったの? どうりで最後のリッチキングが強かったわけよね~!」
リリーがセリーヌを睨んでいる。すると、ローズおばあちゃんがセリーヌに聞いた。
「それで、2人はどうだったんじゃ?」
「リリーはAランクぐらいになっただろうな。」
リリーが僕の方を見た。それに合わせるようにローズおばあちゃんも僕の方を見た。
「シルバーはどうじゃ?」
「ああ、こいつもAランクぐらいだろうな。だが、こいつの能力はまだまだ未知数だ。どこまで強くなるのか俺にも想像つかん!」
「やはりそうじゃったか。恐らくシルバーには封印がかけられておるんじゃな。」
ローズおばあちゃんもセリーヌも同じ意見だ。
「母さん。シルバーの封印は解除できないのか?」
「いいや。解除できるかどうかはやってみなけりゃわからんが、本人がそれを望んでおらんのじゃよ。」
「シルバー! 本当か? 解除できれば、お前の力は俺以上になるかもしれないんだぞ!」
微かに戻った記憶の中で、僕はたくさんの人達の命を奪った。もし、ローズおばあちゃんやセリーヌが言う通り、僕の力が強大だったら、そう思うと怖くてたまらなくない。僕は慌てて言った。
「僕はそんなに強い存在じゃないと思う。それに、少しだけ記憶が戻ったけど。僕には強くなる資格がないんだ。」
「シルバー! お前、記憶が戻ったのかい?」
「少しだけだよ。でも、ぼんやりしていてはっきりしないんだ。」
「お前は、どうして森で倒れてたんだい?」
「わからないよ。僕が思い出したのは、過去の嫌な記憶だよ。それもなんとなくだけどね。」
「じゃが、 お前を見つけた時はまだ7歳ぐらいの子どもじゃったぞ!」
言われてみればそうだ。なら、あの記憶はいつのものだろう。自分でも不思議になった。すると、セリーヌが言った。
「もしかしたら、前世の記憶かもしれないな。」
「どういうことじゃ?」
「ああ、シルバーはリリーが殺されそうになった時に、怒りと憎しみの感情が爆発したんだ。その結果記憶が戻ったんだ。過去に同じようなことを経験しているのかもしれないだろ! そうなると、前世の記憶かもしれないってことさ。」
「なるほどな。可能性はあるな。」
なんかセリーヌとローズおばあちゃんで話がまとまったようだ。それよりも、僕は魔族の国に行くことの方が大事だ。早く、ローズおばあちゃんに許可をもらいたい。そう思っていると、リリーがローズおばあちゃんに聞いた。
「おばあちゃん。私とシルバー、魔族の国アスラに行っていい?」
「何じゃと?!」
「僕もリリーもセリーヌに言われて、アスラに行きたいんだけど。ダメかな?」
ローズおばあちゃんは困った顔をしている。
「母さん。もう昔のことはいいんじゃないか?」
リリーがセリーヌに尋ねた。
「セリーヌ! 昔のことって?」
すると、ローズおばあちゃんが悲しい顔をしてぽつりと言った。
「リリー! お前の両親のことじゃよ。」
「お父さんとお母さんのこと?」
リリーも僕も、リリーの両親のことは一度も聞いたことがない。聞いたらいけないことのような雰囲気があった。だから、暗黙の了解のもと、一度も口に出さなかったのだ。
「お前の父親のアルトは堕天使族の中でも最強じゃった。じゃから、魔王が不在なのが許せなかったのじゃろう。毎年魔族で開かれる武闘大会があるんじゃが、それに参加したんじゃ。恐らく、自分が魔王になるつもりでいたんじゃろうさ。じゃが、殺戮禁止の大会でありながら、お前の父アルトは悪魔族のサタンに殺されたんじゃ。それも、卑怯な反則行為でな。わしもお前の母のベガもサタンに文句を言ったが、奴は聞く耳を持たなかった。その帰り道、お前の母ベガとわしはサタンとその仲間達に襲われてな。わしはベガを助けることができなかったんじゃ。許しておくれ。リリー!」
ローズおばあちゃんの目から大粒の涙が溢れだした。
「母さんは悪くない! 悪いのはサタン達だ! 俺さえ近くに居れば・・・・・」
セリーヌも悔しそうだ。力こぶしを握り締めている。リリーが怒りの表情で聞いた。
「セリーヌ! サタンとその仲間はどうしてるの?」
「行方不明だ! 俺が話を聞いて兄貴の仇を取ろうとしたが、すでに身を隠したらしくどこのもいなかったんだ。」
僕も心の底からサタンに対して怒りが込み上げてきた。
「なら、生きてるんだね! そいつら!」
「多分な。」
僕はリリーを見た。リリーも僕を見ている。
「リリー! 両親の仇を取ろうよ!」
「うん!!!」
「ちょっと、あんた達、待っておくれ! あんた達まで殺されたら、わしはもうどうしたらいいかわからんじゃないか!」
「ローズおばあちゃん。大丈夫だよ。セリーヌもいるし、僕はあまり役に立たないかもしれないけど、命に代えても必ずリリーを守るよ。」
僕はローズおばあちゃんの手を握り締め、目を見ながら話した。ローズおばあちゃんも僕の意志が固いことを悟ったのだろう。その後は何も言わなかった。




