僕は一体何者?
セリーヌの指導の下、僕とリリーはピッツデリーのダンジョンを踏破した。そして、その日は、前回とは異なるピッツデリーの宿屋に泊まることになった。
「久しぶりにお風呂にはいれるわ!」
「そんなにお風呂に入りたかったの?」
「当たり前じゃない!」
宿屋の前には『マメゾン』と看板に書かれていた。中に入ると、恰幅のいい女性がいた。
「おや! 珍しいね! セリーヌじゃないか? その後ろの子たちは友達かい?」
「いいや。親類だ! それより今日泊まりたいんだが、部屋を用意してくれるか?」
「何部屋だい?」
「お前達はどうするんだ?」
「僕達はいつも1部屋で寝てるから。」
「そうか。なら、2部屋だな。」
セリーヌがお金を払い、僕達は部屋に案内された。部屋は意外と広く清潔だった。ベッドも大きく、いつものように2人で寝ても大丈夫だ。最初に、リリーが風呂に入ってそれから僕が入る。キレイさっぱりしたところで食事に行った。食堂には、すでにセリーヌがいた。
「セリーヌ。待たせたね。ごめん。」
「大丈夫だ。それより、先に注文するぞ。」
僕はおすすめのマメゾン定食にした。セリーヌとリリーはやはり肉料理だ。飲み物は果実水を頼んだ。
「早く、15歳になりたいな~。」
「リリー! 15歳になるといいことでもあるの?」
「だって、お酒が飲めるようになるじゃない。」
「僕はずっと果実水でいいや。」
「シルバーは酒に興味がないのか?」
「ローズおばあちゃんが飲んでるのを、隠れて少し飲んだことがあるけど僕は苦手だよ。」
「ああ~! おばあちゃんに言いつけてやろう!」
「勘弁してよ! ローズおばあちゃんが怒ると怖いんだから!」
「確かにな。あのばあさんは怒らせると怖いわな。」
その頃、ローズおばあちゃんは自宅で一人で食事をしながらくしゃみをしていた。
「シルバー! 食事をしたらお前の部屋に行くからな!」
「シルバーに大事な話があるんだっけ? 私はいない方がいいのかな?」
「気にするな。リリー! お前も一緒に聞くんだ!」
女将が料理を運んできてくれた。久しぶりにまともな料理だ。3人とも無言で食べた。そして、食後、僕達の部屋に移動した。
「じゃあ、これから修行の成果を話す。最初に、リリー!」
リリーが緊張した顔で聞いている。
「リリー! お前の実力はAランク冒険者のレベルかそれ以上だろう。よく頑張った!」
「本当? ありがとう!」
そして、少し時間を空けてセリーヌが話し始めた。
「シルバー! 普段のお前の実力もAランク並みだな。だが、お前には隠された力が備わっているようだ。もしかすると・・・・・」
すると、リリーが聞いた。
「セリーヌ! 『もしかすると』って何よ! 魔王アンドロメダの生まれ変わりかもしれないってこと?」
「どうしてそれを?」
「やっぱりね。おばあちゃんが言ってたもん。」
「ばあさんも俺と同じことを言ったのか?」
「そうよ。」
なんか話の様子がおかしい。僕は、リッチキングとの戦闘の際に少しだけ記憶が戻った。自分が魔王アンドロメダの生まれ変わりかどうかはわからない。でも、僕は過去か前世に大勢の人を殺めた。そんな存在が英雄のはずがない。
「僕にはよくわからないよ。」
すると、リリーが真剣な様子で聞いてきた。
「もしかして、シルバーは記憶を取り戻したの?」
「どうしてさ?」
「なんか、意識が戻ってからいつもと様子が違うから。」
「うん。少しだけだけどね。」
「嫌な記憶なのね?」
リリーが心配そうに聞いてきた。リリーを心配させないように冗談を言ってごまかした。
「そうなんだ~! 前世で僕はたくさんの美女に囲まれて生活していたみたいでさ。」
「何よ! それ!」
「冗談だよ!」
「シルバーったら! もう知らない!」
「怒らないでよ! リリー!」
僕達がワイワイ話している間、セリーヌはしばらく考え込んでいた。そして、僕とリリーに言った。
「今、魔族を取りまとめる魔王がいないんだ。だから、俺は人間達が再び悪さをしないか世界中を回っているんだ。そうしないと、再び人族と魔族の間で争いが起こるかもしれないからな。お前達、魔族の国アスラに一度行ってみないか?」
僕はリリーと顔を見合わせた。2人とも魔族の国と聞いて興味津々だ。
「セリーヌ! そのアスラって国はどこにあるの?」
「お前達も知ってる通り、この大陸エドパルドには人族が多く住んでいる。他の種族も多少いるがな。この大陸の東に位置するするユーテス大陸にはエルフ族とドワーフ族が多く住んでいるんだ。そして、この大陸の南には最大のアマゾル大陸があってな。そこには獣人族が多く住んでいるのさ。俺達のマジカル大陸はこの大陸の西に位置しているんだ。」
「そんなにたくさん大陸があるんだ~!」
「シルバー! あなた、本で勉強したじゃない!」
「あんまり興味がなくて。」
「仕方ないわね~! それで、この大陸のように、それぞれの大陸には国がいくつもあるの?」
「そうだな。ただ、マジカル大陸にはアスラしかないがな。」
「なら、マジカル大陸って小さいの?」
「いいや。このエドパルド大陸と同じぐらいの面積はあるだろうな。」
「なのに国は一つなの?」
「そうさ。魔族の国アスラでは最強のものが魔王として君臨するからな。」
ここで、僕はどうしても気になることがあった。
「確か、今、魔王って不在なんだよね?」
「ああ。そうだ。」
「どうして?」
「いくら強くても、みんなが認めるような存在でなければ魔王にはなれないのさ。」
「なら、セリーヌなら実力があるじゃない。どうして、魔王にならないの?」
「確かにな。力だけ見れば可能性はあるだろうな。だが、魔族の全員が納得するような器量が俺にはないのさ。」
「ふ~ん」
とりあえず、一旦家に帰ってローズおばあちゃんに相談することにした。




