ピッツデリーのダンジョン(5)
38階層で虫の魔物ゴキロギを退治した僕とリリーは39階層へと進んだ。リリーが早くこのエリアを通過しようと、僕の手を引っ張って進む。すると、草むらからカサカサと音が聞こえた。その瞬間、リリーの動きが止まった。振り向いたリリーの顔は顔面蒼白状態だ。
「どうしたの?」
リリーが指さした方向を見ると、大小様々なゴキロギがいた。こちらに気付いて警戒を始めている。リリーが、急いで僕の後ろに隠れた。仕方がないので、先ほどと同じように炎の魔法で討伐した。
「これで大丈夫だよ。」
「やっぱり、シルバーが先にってよ!」
「わかったよ。その代わり押さないでよ!」
「うん。」
その後何度か巨大なゴキロギに遭遇したが、すべて討伐して無事待ち合わせの39階の出口まで来た。そこには、セリーヌがいたが、なぜか震えていた。
「どうしたの? セリーヌ!」
「シルバー! お前はあのキングゴキロギが平気なのか?」
「ああ。あれってキングゴキロギって言うんだ! 別に普通の魔物じゃないの?」
「そうか。なら、いい。じゃあ、すぐに40階層のボス部屋に向かうぞ!」
「うん。」
僕達は40階層のボス部屋に向かった。そこには巨大な蜘蛛の魔物がいた。デビルスパイダーだ。いつものようにセリーヌが相手の情報を教えてくれた。
「あいつの吐き出す糸は強力だ。捕まると逃げるのが難しいから気をつけろ。」
「シルバー! 私は炎の魔法を付けないから、シルバーが炎で攻撃してくれる?」
「わかったよ。」
『ファイアーアロー』
僕が魔法を発動すると、目の前に無数の炎の矢が現れた。そして、それらがデビルスパイダーに飛んでいく。だが、咄嗟にデビルスパイダーが自分で吐いた糸で身体を防御した。
「ダメだよ。リリー! 炎の魔法は効かないよ!」
逆にデビルスパイダーが口から糸を吐き出した。僕とリリーは翼を出して、飛翔してそれを避けた。同じ攻撃が何度も来た。その都度避けたが、ボス部屋のいたるところにデビルスパイダーの糸が張り巡らされる結果となった。
「シルバー! これじゃあ、あいつに近づけないわよ! どうするの?」
「遠距離の魔法しかないよね。」
するとリリーが氷魔法を発動した。
『アイスアロー』
すると、今度は自分で吐いた糸で身を守るのでなく、口から糸を吐いて氷の矢を打ち落としていく。
「こいつ、強いわね!」
「でも弱点はあるはずだよ!」
リリーが何度も何度も氷魔法で攻撃した。すると、ボス部屋の中の気温が急激に下がった。先ほどまで元気だったデビルスパイダーの動きが鈍くなってきた。
「リリー! こいつ、昆虫の魔物だから寒さに弱いのかもしれない。氷魔法の攻撃をしてくれる?」
「わかったわ。」
それから、何度も氷魔法で攻撃をした。すると、デビルスパイダーの動きが完全に止まった。僕は魔力を解放して、強力な魔法を放った。
『グランドスピア』
すると、地面から次々と土の槍が飛び出す。デビルスパイダーはそれを避けようとするが、動きが鈍すぎて避けられない。体のあちこちに突き刺さった。
「リリー!」
「わかったわ!」
リリーも魔力を解放した。そして、強力な魔法を発動する。
『アイストルネード』
空中に氷の粒が現れ、それが鋭く回転し始めた。そして、デビルスパイダーに襲い掛かった。
「ギュー」
デビルスパイダーは最後の断末魔をあげてその場に崩れ落ち、光の粒子となって消えた。
「2人とも大分成長したな。残すはあと10階層だけだ。今日はここで休むことにしよう。」
僕もリリーもヘトヘトだ。戦いが終わった途端、地面に座り込んでしまった。
「疲れたわ~!」
「でも、よくここまでこれたかな。」
「そうね。もうすこしよね。早くベッドで寝たいわ!」
「僕もだよ。」
そんな話をしていると、干し肉の食事もせずに寝てしまった。気が付くと、すでにセリーヌは起きていた。
「ごめん。僕、寝ちゃったね。」
「いいさ。それよりもそろそろリリーを起こせ!」
「うん。」
リリーが起きた後、僕達は41階層へと足を進めた。目の前に現れたのはゾンビ達だ。ここから49階層までは死霊系の魔物のようだ。
「シルバー! 死霊系の魔物って確か光魔法と火魔法が効果的なのよね?」
「そうだよ。でも、リリーは火魔法が禁止だから光魔法で討伐するしかないよね。」
「私、光魔法ってまだ使いこなせないのよね。」
すると、セリーヌが言った。
「リリー! これは弱点を克服するための修行なんだぞ!」
「わかってるわよ。」
「僕が援護するから大丈夫だよ。」
「ありがとう。シルバー!」
リリーは目の前のゾンビ達に光魔法を発動する。だが威力が十分でなく、ゾンビ達はすぐに起き上がってきた。僕は剣を抜いてゾンビ達の足を切断した。ゾンビ達は動けないでいる。だが、死霊系の魔物は自己再生の能力がある。ゾンビ達の足が再生し始めていた。
「リリー! 剣に光魔法を付与して攻撃したらどうかな?」
「やってみるね。」
リリーが剣に光魔法を付与すると、剣が眩しく光り出した。リリーはその剣でゾンビ達に切りかかった。すると、ゾンビ達は光の粒子となって消えていった。
「やったわ! シルバー!」
「その調子だよ。」
「うん。」
その後、目の前のゾンビ達を倒しながら45階層までやってきた。すると、今度はゴースト達が現れた。すでに、ここにくるまでにリリーはかなりの数のゾンビを討伐している。そのためか、光魔法の威力が大分増していた。
「こいつらは僕が討伐するから、それを見ていて!」
「わかったわ。」
僕は点を高く上げて、魔法を唱えた。
『ホーリーアロー』
すると、空中に光の矢が現れた。その矢がゴーストを串刺しにする。ゴースト達は光の粒子となって消えた。
「さすがね。シルバー! でも、私も今の魔法を覚えたわ! やってみる!」
リリーは僕の真似をして魔法を唱えた。
『ホーリーアロー』
すると、僕の時と同じように光の矢が現れた。そして、ゴーストを串刺しにした。
「リリーもできてたよ。」
「うん。シルバーのお陰よ。」
「僕は魔法を見せただけだから。」
その後順調にリリーがゴーストを討伐し、いよいよ50階層のボス部屋の前まで来た。




