ピッツデリーのダンジョン(4)
その後、32階層もデビルマンティスと遭遇したが他の魔物はいなかった。そして、33階層に降りると今度は蝶の魔物アガーハだ。上を見上げると、上空には無数のアガーハがいる。本来蝶は花の蜜を吸って生きているはずなのに、アガーハは鋭い牙を持っていて、他の魔獣や人間を食べて生きている。
「リリー! 蝶なら嫌じゃないでしょ!」
「うん。でも、少し気持ち悪いかな。」
アガーハは僕達を見つけると真上に集まりだした。するとセリーヌが声をかけてきた。
「お前達! アガーハは羽から毒の粉を出すんだ。その粉に触れると、痺れて身体がマヒするから気をつけろよ。」
「どうやって気を付けるのよ! 上にはアガーハが数えきれないほどいるのよ!」
「自分の周りに結界を張るしかないな。」
「いつも寝るときにセリーヌがするやつのこと?」
「そうだ! いつも俺がやっているんだから見てただろう。やってみろ!」
「やってみろって言われても、急には無理よ。」
「それができなきゃ。アガーハの餌食になるだけだぞ!」
僕もリリーも必死だ。2人ともセリーヌがやっているのを見よう見まねでやってみるが、いきなり出来るはずもない。すでに、アガーハは僕達の上空に集まっている。いつ襲い掛かってくるかわからない状態だ。
「セリーヌ! 意地悪しないで、今回だけは私達に結界張ってよ!」
「ダメだ!」
上空のアガーハがとうとう羽をばたつかせ始めた。上空から黒い粉が雨のように降って来た。仕方がないので、僕は風魔法で黒い粉を吹き飛ばした。
「シルバー! さすがね。頭いい!」
「だめだよ。ずっとこの状態だと魔力が持たないよ。」
「なら、私がアガーハを攻撃するわ!」
『シャイニングアロー』
リリーが魔法を唱えると、リリーの目の前に無数の光の矢が現れた。そして、それらがアガーハに向かって飛んで行った。アガーハ達は光の矢にくし刺しにされて、地面に落ちてくる。
「大方片付いたわ。今のうちにここを離れて、結界の練習をしましょ。」
「そうだね。」
それから、森を出て洞窟のような場所に行った。そこで必死に結界の練習をした。
「リリーで来たよ!」
「本当? 私はまだできないよ! 才能がないのかな~?」
「違うよ。コツだよ。」
「どんなコツがあるの?」
「目の前に見えない壁を想像するんだよ。」
「見えない壁って何よ? そんなのあり得ないじゃない!」
「だったら、家の壁が透明になることを想像してごらんよ。」
「どこに壁があるかわからなかったら危ないじゃない! それに外から丸見えよ!」
「それでいいんだよ。今、リリーが想像したものを魔法で作ってごらんよ。」
「えっ?!」
するとリリーが何やら想像しながら魔法を発動したようだ。
「で、できたわ~!」
「ねっ! できたでしょ!」
「ありがとう! シルバー! これでもうアガーハは怖くはないわ!」
すると、セリーヌが声をかけてきた。
「結界の第1関門は合格だ。だが、お前達のその結界では少し強い魔法で攻撃されたら役に立たんぞ!」
「リリー! なるべく魔力を多く流すようにしてみようよ。それに戦う時はいつでも使うよ。」
「わかったわ。」
それから、穴から出て再びアガーハを探しに林の中に入って行った。だが、残念ながらアガーハは見つからなかった。その代わり、最初に討伐したアガーハの魔石が落ちていた。僕達はそれを拾って、下の階に降りることにした。34・35階層は足が沢山あるムカディーがいた。36・37階層は集団で襲ってくるジャイアントビーだった。
「そろそろ虫エリアも終了ね。後38階層と39階層だけだわ。早く虫エリアを終わらせたいわ。」
すると、後ろからセリーヌが声をかけてきた。
「38と39階層だがな。お前達だけで行け。俺は先に行って、39階層の出口のところで待っているから。気を付けて来いよ。」
そう言うと、セリーヌはものすごい速さでその場から消えた。
「どうしたんだろうね?」
リリーが何やらもじもじしながら言った。
「きっとセリーヌは気を使ったのよ。私とシルバーに。」
「どうして?」
「2人がアツアツだからよ。」
「僕はそんなに暑くないよ! 寧ろ、草木があって涼しいぐらいなんだけど。」
「バカッ!」
よくわからないが、リリーが怒って先に行ってしまった。リリーを見失いかけた時、大きな悲鳴が聞こえた。
「キャー」
リリーが走ってきて、いきなり僕に抱きついた。
「どうしたの?」
「出たのよ!」
「何が?」
「信じられないほど大きなゴキロギよ!」
ゴキロギはよく台所にいる黒くて小さな虫だ。そんなに怖がることもないのにと思ったが、違っていた。目に前に現れたのは1mほどの大きさのゴキロギだった。しかも、口から牙が出ている。頭の触角をピョコピョコ動かしながらこちらを観察しているようだ。
「し、し、シルバー! 私はパスよ! あなたが何とかしなさいよ!」
「仕方ないな~!」
僕が剣を抜くと、僕に向かって飛び跳ねた。思わず剣を振ると、意外と硬くて切れずにあお向けにひっくり返って足をぴくぴくさせている。
「早く何とかしなさいよ!」
「わかったよ!」
『ファイア』
僕の手から火が出て、ゴキロギは燃えて灰となった。
「助かったわ~! この階はもういいから、早く下に降りましょ!」




