ピッツデリーのダンジョン(3)
ダンジョンに潜ってすでに数日が経過している。21階層目からはオーガが出てきた。オーガはとにかく体が大きく筋肉質だ。
「シルバー! リリー! オーガは力が強いから力負けするなよ。」
「わかったわ。」
体の大きさに圧倒されたが、その動きは遅く、意外にも戦いやすかった。さすがに、ゴブリンやオークよりは強いはずなのだが、自分達の能力が向上したせいか、あまり苦労もせずに討伐した。
「シルバー! 手は大丈夫?」
「どうして?」
「あいつら力が強いから、剣で打ち合っていたら手が痺れてきちゃった。」
「なら、リリーは少し休んでていいよ。」
「そんなわけにはいかないわよ。姉の私が弟に守られるなんてありえないわ。」
いつの間にか僕は弟扱いになっている。3日ほどかけて、僕達は何とか29階層まで辿り着いた。
「オーガ達がまた来るわよ。」
「わかってるよ。10体いるから、5体ずつだね。」
「わかってるじゃない!」
僕は剣に風魔法を付与して斬りこんだ。
『真空斬』
すれ違いざまにオーガを切り裂く。僕が通った後で、オーガがバタバタと地面に倒れた。リリーの方を見ると、水魔法の『ウォーターカッター』で討伐していた。
「よし。今日はここまでだ。」
セリーヌの声が聞こえた瞬間、僕とリリーは地面に座り込んだ。
「疲れたわ~! あとどれくらいあるのかしら?」
「考えるのやめようよ。先が見えないと辛いからさ。」
俺達の話を聞いてセリーヌが笑っていた。そして、5時間ほど仮眠をとって、いよいよ30階層のボス部屋だ。どうやら、ボスはオーガキングのようだ。僕達が部屋に入ると、4mほどのオーガがいた。通常のオーガが3mほどだから、それよりもさらに大きい。
「大きいわね~!」
「僕が下半身を攻撃するから、リリーは上半身を攻撃して!」
「わかったわ。」
僕は普通のオーガと同じように剣を抜いて切り付けようと前に出た。次の瞬間、目の前にいたオーガキングが消えた。
「えっ?!」
僕がオーガキングを探す間もなく、僕は腹にケリを入れられ後ろの壁に激突した。
「グワッ」
口からは血が流れ出た。
「シルバー!」
「大丈夫だよ。でも、こいつめちゃくちゃ早いよ。」
「よくも私のシルバーに怪我をさせたわね~!」
リリーの身体から真っ黒なオーラが溢れ出した。オーガキングはリリーに向かって行った。するとリリーは手を前に出して魔法を発動する。
『シャドウチェーン』
地面の中から黒い鎖が現れ、オーガキングを体に巻き付いた。オーガキングが必死に逃げようと藻掻いている。僕も立ち上がって、一緒に戦おうと思ったが、腹に力が入らず立ち上がることができない。僕の方をちらっと見てリリーが言った。
「シルバー! あんたはそこで休んでなさい!」
リリーが剣に炎の魔法を付与してオーガキングに切り付けた。オーガキングも力づくで鎖を引きちぎり、リリーに向かって行った。
『炎竜斬』
リリーが剣を上から振り下ろした。すると、剣から出た炎が竜の形に変化して、オーガキングを大きな口で咥えた。オーガキングは必死に逃れようとするが、『グチャ』という音とともに、オーガキングの身体は粉々に砕かれ、光の粒子となって消えて行った。
「大丈夫? シルバー!」
「何とかね。でも、リリーはやっぱり強いね。」
「当たり前じゃない。お姉ちゃんなんだから!」
すると、後ろからセリーヌが声をかけてきた。
「リリー! お前、炎の魔法を使ったな。」
「アッ?!」
そうだ。リリーは訓練をするにあたり、炎の魔法を使わないように言われていたのだ。
「まあ、いい。シルバーを守るためだからな。今回は大目に見る。だが、次に約束を破ったら、修行はそこで終わりだ。」
「わかったわ。」
僕の体調がよくないので、そこで少し休むことにした。
「セリーヌ! 31階層からはどんな魔獣なの?」
「そうだな。次の階層からは昆虫系の魔獣だな。動きが俊敏だから気をつけな。」
「昆虫系は苦手! シルバー! お願いね!」
「わかったよ。」
すると、セリーヌが突然リリーに聞いた。
「リリー! お前がさっき使った『シャドーチェーン』だが、この魔法をどこで覚えたんだ?」
すると、リリーも不思議そうな顔で答えた。
「私もわからない。ただ、急に頭の中に魔法が浮かんだのよね。」
「そうか。」
セリーヌは少し考えこんでいた。しばらくして、僕の体力が戻ったところで31階層に向かうことになった。
「昆虫の魔物が急に出てくるなんてないわよね~?」
リリーは僕の後ろに隠れながら歩いている。
「リリー! 背かな掴まないでよ。歩き辛いよ。」
「だって~!」
すると、木がたくさん生えている方から「カサカサ」と葉がこすれる音が聞こえてきた。
「来るよ!」
「わかってるわよ!」
目の前に現れたのは、両手が大きな鎌になっている魔物だ。するとセリーヌが言った。
「デビルマンティスだぞ! あいつは俊敏で、鋭い鎌で攻撃してくるから気をつけろよ。」
セリーヌが言った通り、空中を舞いながら僕達に大きな鎌を振り下ろしてきた。僕は剣でそれを受け止めた。
「こいつ力も強いよ。」
「気持ち悪~い! シルバー! 早く倒してよ~!」
リリーは完全に戦力外だ。僕は鎌を受け止めながら、剣に炎の魔法を付与した。すると、僕の剣からゆらゆらと炎が立ち込める。デビルマンティスは炎が嫌いなようで、後ろ向きになって逃げようとしている。
「逃がさないさ。」
『ファイアースピア』
僕の手から炎の槍が出た。デビルマンティスに向かって飛んでいく。後ろから、デビルマンティスの身体を貫いた。すると、デビルマンティスが消えて緑の魔石が落ちてきた。
「さすがね。シルバー!」
「リリーも気持ち悪がってないで、一緒に戦ってよ。」
「だって~! 虫嫌いなんだもん!」
その後、デビルマンティスと遭遇したが他の魔物はいなかった。そして、32階層に降りると今度は蝶の魔物アガーハだ。




