帝国の平和を取り戻す!
グレーターデーモンが一斉に攻撃を仕掛けてくる。リリーとセリーヌが応戦するが、相手の数が多い。すると、部屋の隅に避難していた勇者達とガンマがグレーターデーモンとの戦いに参戦してきた。本来、彼らには場外でケント伯爵達とともに戦ってもらうつもりだったのだが、こうなった以上は仕方がない。
「お前達、大丈夫か?」
「はい。俺達も役に立ちたいですから!」
「そうよ! これでも勇者なんだから!」
「そうだ! 俺達だって少しは役に立てるさ!」
建物がところどころ崩れ始めた。このままだと城が持たない。セリーヌが辺り一帯に結界を張った。
「リリー! 結界を張ったから心置きなく戦っていいぞ!」
「わかったわ!」
リリーが武闘大会では一切見せなかった魔法を発動する。
『シャイニングビーム』
リリーの手から凄まじい光線が発射された。直撃したグレーターデーモンはそのまま霧となって消えてしまった。
「やっぱり、リリーさん。俺との試合は本気じゃなかったんですね?」
「当たり前じゃないの? これでもまだ抑えてるのよ!」
「ウッソだー!」
セリーヌも魔法で対応している。
『サンダーバースト』
セリーヌの手から出た電気の球が徐々に大きくなり、グレーターデーモンに当たる直前で大爆発を起こした。
「バキバキバキーン」
一遍に数体のグレーターデーモンが消滅した。
「すげー!」
勇者達とガンマの参戦もあって、グレーターデーモン達はすべて討伐された。一方、オレは城の外でアークデーモンの姿をしたアルカイックと戦闘中だ。
「お前、先ほどから避けてばかりではないか! それでも本当に魔王なのか?」
「お前の実力を知りたかっただけだ。」
「何をふざけたことを。」
「お前、サタンの右腕なんだろ! だったら、お前の実力が分かれば『今のサタン』の実力もわかるからな。」
「『今のサタン』とはどういう意味だ?」
「言葉の通りだ。昔のサタンは弱すぎて相手にならなかったからな。」
アルカイックはオレのことをまじまじと見た。
「お、お、お前はもしかして・・・」
「気付くのが遅かったな。どうやら今のサタンも大したことなさそうだ!」
「おのれ~! 殺してやる~!」
アルカイックは極大魔法で攻撃してきた。
『グレイテストシャドウドラゴン』
空が真っ暗に変化し、その暗闇の中から真っ黒で巨大なドラゴンが舞い降りてきた。こいつのブレスが地上に降り注ぐと地上は大惨事になる。その前に、始末しないといけない。だが、オレが魔法を放つ前に巨大なシャドウドラゴンがブレスを放ってきた。オレは、地上の人々を守るために避けるわけにはいかない。結界を張って両手でそれを受け止める。
「街を灰にするこの攻撃をどこまで我慢できるかな。」
アルカイックが勝ち誇ったような顔をしている。オレは、精神を集中して大気中のダークエネルギーを体の中に凝縮させていく、そして生まれ変わってから今までずっと抑えてきた闘気を少しだけ解放した。すると、暗闇に隠れた空に日が差し込め、空が完全に晴れ渡った。次の瞬間、爆音とともにオレの身体から神々しい光が放たれた。
「バッバッ——ン」
そして、背中の漆黒の翼は純白の巨大な翼に変化し、オレを包み込んでいた神々しい光が巨大なドラゴンへと形を変える。光のドラゴンは眩しい光を発散しながら大きな口を開けて、シャドウドラゴンを飲み込んだ。そして、そのままアルカイックをも飲み込もうとしている。アルカイックには成す術もない。
「サタン様~! お許しを~!」
アルカイックは光のドラゴンに飲み込まれ完全に消滅した。
“ふ~。終わったな。”
僕は元の少女のような姿に戻ると光のドラゴンも消えてなくなった。僕はリリー達がいる場所に舞い降りた。勇者の3人もガンマも信じられないものを見たような顔をしている。
ユウマが恐る恐る聞いてきた。
「シルバーさんは、いえ、シルバー様は神なのですか?」
「違うよ。魔王が神なんてありえないでしょ。」
「でも、シルバー様から神々しい光が出ていました。」
「そうよ。それに純白の翼まで出ていたわ。まるで天使のような。」
すると、近くにいたセリーヌが言った。
「俺もリリーも堕天使族だ。今は翼が黒くなってしまったが、我々の祖先はシルバーと同じ純白だったんだ。だから、シルバーも堕天使族かもしれないな。」
「『かもしれない』ってどういうことですか? 師匠?」
「正直言うと、僕にも自分の種族が分からないんだよ。」
「えっ?!」
「シルバーは子どもの頃、記憶をなくして森にいたのよ。それを私とおばあちゃんで面倒見たのよ。」
「そうなんですね。」
勇者の3人が何やら相談しているようだったが、急に僕の方を向いた。
「シルバー様。俺達3人に修行を付けてください。俺達、このままだとサタンには勝てそうにないから。俺達はサタンを倒して、もとの世界に戻りたいんです。お願いします!」
「お願いです。シルバー様。私もユウマもタイゾウも元いた世界に戻りたいんです。」
「俺からもお願いします。どんなに厳しい修行でも耐えますから。」
僕はセリーヌとリリーを見た。2人とも頷いている。
「わかったよ。でも、僕のことはシルバーって呼んでね。『様』や『魔王』は禁句だからね。」
「わかりました。シルバー様。じゃなくて、シルバーさん。」
「それでいいよ。」
僕達が城から出ると、城の前では大勢の兵士達が僕に向かって片膝をついていた。一番前にはヨハンとケント伯爵がいる。
「どうしたの?」
「先ほどの戦いを我ら全員が目撃しました。邪悪な悪魔を天使の姿のシルバー様が討伐するのをはっきりと見ました。ですから、帝国兵達も我らもこうしてシルバー様が来られるのをお待ちしていたのです。」
セリーヌが念話を送ってきた。
“シルバー! 丁度いいじゃないか。ここでお前が『神の使徒』を名乗り、すべての戦いを止めさせ、この国を平和にできるチャンスだ!”
確かにセリーヌが言う通りだ。僕はナルーシャ様に頼まれただけで、使徒になったつもりはない。ナルーシャ様を裏切る結果になるかもしれないが、これ以上死人を出さずに平和を取り戻すチャンスだ。予定とは少し違うが、結果オーライだ。僕はみんなに聞こえるように風魔法にのせて言った。
「みなの者。私は最高神ナルーシャ様からこの世界の平和を託されたものだ。ナルーシャ様は戦のない平和な世界を望んでいる。ナルーシャ様にとってお前達一人一人が子どもなのだ。可愛い子ども達が殺し合いをするのを、親であるナルーシャ様が喜んでみていると思っているのか! ナルーシャ様を悲しませるものがいるならば、このシルバーがそのものを討伐すると知れ!」
一番前にいたヨハンが返事を返してきた。
「ハッ! 使徒様のお言葉、しかと承りました。このヨハン! 身命に変えましてもこの国を平和にするとお約束いたします!」
「ヨハン! お前は帝国が滅んだ今、アケメネス王国を復興させ、ガイア王国やその他の国々としっかりと友好関係を築くのだ。2度と誤った道に進むことがないように命ずる。もし、再び平和を乱すことがあれば、この国を地図の上から消滅させることになる。よいな。」
「ハッ! 肝に銘じます!」
その後、僕達は一旦魔王城に転移した。僕達の姿が突然消えたことに、その場にいた兵士達は全員が驚いていた。
「シルバーさん。ここどこですか?」
「お前達が一番来たいと思っていた場所さ。」
すると、ミサキがワクワクした顔で言った。
「もしかして、魔王城ですか?」
「そうだ。」
「夢みたい! 本当に魔王城に来たんだ~!」
今度はタイゾウが不思議そうに聞いてきた。
「ところで、シルバーさん。その姿はどうしたんです?」
「ああ。オレはアスラ魔王国に戻ってくるときはいつもこの姿になるのさ。」
「なんか口調も違わないですか?」
「そうよ。シルバーはアスラ魔王国の王だからね。それなりの姿としゃべり方になるのよ。」
「オレは別に意識してないんだがな。」
するとセリーヌが余計なことを言った。
「俺はどっちでもいいさ。どっちのシルバーも魅力的だからな。」
リリーが慌ててオレの腕を掴んでくる。その様子をガンマはいつものことだと呆れて見ていた。
「さて、帝国の大掃除も終わったし、暫くは魔王国でゆっくりするか。」
「そうね。シルバーはずっと忙しくしてたもんね。私達には時間がたっぷりあるしね。」
オレとリリーの言葉を聞いてセリーヌが目を輝かせている。
「ならば、その間に俺が勇者達を鍛えてもいいな。」
すると、ガンマが慌てて言ってきた。
「セリーヌさん。俺も、俺も一緒に鍛えてください。」
「わかった。ならば、明日からダンジョンに行くぞ!」
「はい!!!」
僕とリリーは顔を見合わせた。
「セリーヌのことだから、恐らくあのジョンジョンよね?」
「ああ、そうだろうな。最初にセリーヌに鍛えられたあのダンジョンだろうな。」
「懐かしいわね。」
「懐かしんでいる暇はないさ。オレ達の戦いはまだまだ続くんだ。しばらく休んだら、今度はイングス聖教国に行くからな。」
「うん。」




