皇帝アルカイックの正体
城に行くまでにまだ2時間ほどの休憩時間があったので、僕達は勇者達と計画のすり合わせをすることにした。
「リリーさんはやっぱり強かったです。」
「あなたの攻撃もまあまあだったわよ。」
「そうですか。」
ここで、勇者達3人が顔を見合わせて言ってきた。
「シルバーさん。俺達をガンマさんのように訓練してくれませんか?」
ガンマが羨ましそうにこっちを見ている。
「いいよ。でも、君達は元の世界に帰りたくないの?」
「帰れるなら帰りたいです。でも、どうしたら帰れるかわからなくて。」
「なら、今日が終わったら考えようよ。修行のことも含めてね。」
「はい。」
その後、周りに話が漏れないように結界を張って、城に行ってからのことを打合せた。なるべく勇者3人には怪我をさせたくない。そこで、ケント伯爵と一緒に帝国の軍隊を抑えてもらうことにした。
「さて、王城に行こうか?」
「はい。」
王城近くまで来ると、僕とリリーは気配遮断で魔力も姿も完全に消した。すると、ガンマが驚きの声をあげた。
「おお~! 凄いですね! 師匠の気配がなくなりましたよ。」
その後、勇者達とリリー、ガンマは城の中に入って行った。僕とリリーは飛翔して外から様子を窺っている。3Fの謁見の間のベランダで待っていると、そこにみんなが入って来た。そして、皇帝アルカイックに片膝をついて挨拶をしていた。
「よく来たな! 強者達よ。名前を名乗ることを許可する。」
リリーから一人ずつ名前を名乗っていく。そして、最後にガンマが名乗った瞬間、兵士達がガンマの周りを取り囲んだ。
「いきなり何をすんですか?」
ガンマが大声をあげた。
「お前がガイア王国のレジスタンスだということはお見通しだ。素直に捕まればよし、さもなければこの場で殺す。」
リリーが剣を抜いてガンマの前に立った。
「お前も、そいつの仲間なのか? 他の2人はどうした?」
「あんたに関係ないでしょ!」
すると、周りにいる貴族達が罵声をあげた。
「貴様! 無礼だぞ! 皇帝陛下の御前だぞ!」
「無礼も何もないでしょ! いきなり、殺すとか言っといて。」
皇帝アルカイックは余裕の表情で玉座に座ったままだ。兵士達に合図を送った。すると、兵士達がリリーとガンマに攻撃を仕掛けた。リリーとガンマは剣を抜いて応戦する。決着はすぐについた。2人を囲んでいた兵士達は全員が床に倒れていた。
「なるほどな。普通の兵士達では役に立たぬか。ならば、これならどうだ?」
皇帝アルカイックが指を鳴らす。
「パチン」
すると、床や壁からゴーストが現れ、さらに貴族の姿をした者達はグレーターデーモンへと姿を変えた。
「やっぱりね。あなた、サタンの手下ね。」
「ほ~う! サタン様を知っているのか? すると、お前は魔族だな!」
ここまで中の様子を黙って見ていたセリーヌが声をかけてきた。
「シルバー! 行くぞ!」
「うん。」
僕とセリーヌは姿を現して謁見の間に突入した。当然、僕とセリーヌの背中には黒い翼が出ている。
「仲間も魔族であったか?」
セリーヌが皇帝アルカイックに言った。
「いい加減にお前も正体を現せ! 下衆野郎!」
「いい度胸をしているじゃないか。この私に向かって下衆呼ばわりとはな。」
皇帝アルカイックの姿が黒い霧に包まれていく。そして、その霧から凄まじい魔力が流れてきた。靄が晴れると、そこにはミズーリ侯爵と同じアークデーモンがいた。
「あなた、アークデーモンね。ミズーリと一緒じゃない。」
「愚かな奴だ。ミズーリはアークデーモンと言っても、500年未満の未熟者だ。俺様は、サタン様の右腕のアルカイック様だ。奴と一緒にされては困るな。」
勇者達もガンマも青い顔をして部屋の隅にいる。僕はみんなに結界を張った。
「ならば、僕達も本当の姿を見せようか。セリーヌ。リリー。」
「ああ、そうだな。」
3人の姿が黒い靄に包まれていく。そして、その靄からは凄まじい魔力と闘気が溢れ出る。それだけではない。靄から四方八方に凄まじい電流が放出され、天井や壁、床にもヒビがはいっていく。
「ミシッ ミシッ」
「ドッガーン」
爆音と同時に靄が完全に吹き飛んだ。すると、そこには真っ黒な翼を出した天使のような美少女が2名と精悍な顔つきの美青年の姿があった。
「お前達はただの魔族ではないな。何者だ?」
「私は堕天使族のリリー。」
「俺は堕天使族のセリーヌだ。」
「オレは魔王シルバーだ!」
「やはりな。お前がサタン様を差し置いて魔王を名乗る愚か者か。ちょうどいい。貴様らを倒して、サタン様に褒めていただくとしよう。」
「パチン」
グレーターデーモン20体がオレ達に襲い掛かった。リリーとセリーヌが相手をする。その戦いは武闘大会のような生易しいものではない。命のやり取りなのだ。




