イグドラ帝国の武闘大会(3)
準決勝の第1試合はリリーの圧勝だ。そして、いよいよ準決勝の第2試合が始まるとしている。ガンマとユウマが正面で向き合った。ユウマはかなり警戒している。当然だ。仲間のリリーがタイゾウを子ども扱いで破ったのだから。
「全力で行かせてもらうぜ!」
「おお!」
ユウマがガンマに切りかかる。ガンマはそれを剣で防ぐ。
「カキン」
「バシッ」
「キーン」
音はするが姿が見えない。観客席の人々はそう思っているだろう。確かに動きが早くて、常人には目で追いかけるのは困難だ。だが、僕やセリーヌ、リリーにはしっかりと見えている。2人の剣さばきは見事だ。一休憩だろう。2人が離れて姿を現した。観客席からはどよめきが生まれた。
「オオ———」
「すげー!」
「残像しか見えなかったぜ!」
「俺なんか何も見えなかったぞ!」
再び2人が動き出す。どうやら剣に魔法を付与したようだ。炎を纏った剣と光を纏った剣がぶつかりあう。その影響で床にひびが入った。観客席では誰も話をしない。全員が息をのんで2人の戦いを見守っている。
「ハー ハー」
「ゼー ゼー」
戦い始めて1時間近くが経過した。
「さすがに勇者は強いな!」
「お前こそ! やるじゃないか!」
「俺なんぞ! 師匠に比べれば、1億分の1にもならないさ。」
「シルバーとかいうやつはそんなに強いのか?」
「当たり前だ! 俺の師匠だぞ! 師匠は世界で最強だろうな。」
「そうか。まさかあの少女のような少年がな。」
「話は終わりだ! 行くぞ!」
さらに時間が経過した。どうやら2人とも体力の限界のようだ。
「次で決めるぜ!
「俺もだ!」
2人の身体が剣から溢れ出た炎と光に包まれた。
「ガキ——ン」
炎と光が収まり、2人の姿が現れた。ガンマが地面に倒れて気を失っている。ユウマも立ってこそいるが気を失っている。この場合は立っている方が勝ちだ。
「勝者ユウマ!」
「ワァ——————!!!」
「凄いぞ! 二人とも!」
意識を取り戻したガンマが残念そうに。うつ向きながら僕達のところに戻ってきた。
「すみません。負けてしまいました。」
「ガンマ! 凄い試合だったよ!」
「でも、負けたんで!」
「いいわ。ガンマ! あなたの仇は私がとってあげるから。」
「でも、破門なんですよね?」
以前リリーが言ったことを相当気にしているようだ。
「破門はしないさ。それよりもっと修行して、いつかあの勇者に勝てるようになれ! 因みにあの指輪はただの指輪だ。10倍強くなるなんてことはないさ。」
「はい!!! ありがとうございます! 師匠!」
その頃、貴賓席にいる皇帝アルカイックは部下に確認していた。
「あのリリーとかいう娘についても調べろ! あの強さは是非とも我が帝国に欲しい。」
「ハッ! 畏まりました。」
「ところで、あのガンマという男については調べたのか?」
「はい。どうやらガリア王国の生き残りのようです。」
「もしかすると、ミズーリ侯爵を殺したのはあやつかもしれんな。」
「ミズーリ侯爵様はレジスタンス達に倒されたと聞いております。あの男がレジスタンスの可能性は否定できません。」
「わかった。ご苦労。あいつに監視を付けて、居場所を探っておけ。」
「ハッ」
その頃、僕達は闘技場の前にいた。
「シルバー! 来たわよ!」
闘技場から勇者達3人が出てきた。
「ああ。君達か? 俺達を待っていたのか?」
「そうだよ。ちょっと大事な話があるからね。」
「そうか。なら、場所を変えた方がよさそうだな。」
僕達は勇者達と闘技場から街中に向かった。どうやら、監視がついているようだ。セリーヌも気付いているようだ。
「シルバー! どうするんだ?」
「監視がいるからね。あの角を曲がったところまで行こうか?」
僕達は大きな屋敷の陰に入った。
「みんなもっと近くに来て!」
勇者達は不思議そうな顔をしながら僕に近寄ってきた。次の瞬間、僕はみんなを連れてローズおばあちゃんの家まで転移した。急に景色が変わって、勇者達3人は驚いている。
「ここはどこだ?」
「何をしたの?」
「全部話すから落ち着いてよ。」
「わかった。」
勇者達3人が落ち着いたところで、僕は説明しながらローズおばあちゃんの家まで歩いた。
「驚かせてごめんね。帝国の監視がいたからね。僕の転移魔法で、監視のいない場所まで来たんだよ。」
「お前は転移魔法を使えるのか?」
「まあね。」
勇者達3人は顔を見合わせていた。何か思うところがあるようだった。僕達がローズおばあちゃんの家まで来ると、庭の畑にローズおばあちゃんと獣人族の3人娘がいた。
「ああ。魔王様にゃ!」
「リリー姉ちゃん! お久しぶりだぴょん!」
「セリーヌ姉ちゃんにも会いたかったコン。」
3人が駆け寄ってきた。そして、僕達にいきなり抱き着いてきた。だが、3人とも成長したせいか、以前みたいに抱きかかえるのは難しい。むしろ、お姫様抱っこのようになっている。
「ずるいにゃ! 私も魔王様に抱っこされたいにゃ!」
獣人族の少女達が僕のことを『魔王様』と言ったもんだから、3人の警戒はマックスだ。
「そんなに警戒しないでよ。中に入ろうよ。そこですべてを説明するから。」
「わかった。」
僕達はローズおばあちゃんの家の中に入って行った。そこで、僕は勇者達3人に話し始めた。




