イグドラ帝国の武闘大会(2)
貴賓席からガンマと勇者の一人ミサキの戦いを見ていたものがいる。皇帝アルカイックだ。皇帝アルカイックは近くにいた部下に命令した。
「おい! あのガンマという者について調べろ! 今日中だ! よいな!」
「ハッ」
ボロボロのガンマが帰って来た。
「おめでとう。ガンマ!」
「情けないです! あれだけ訓練させていただいたのに!」
「そんなことないわよ。相手は勇者なのよ。勇者に勝つなんて普通の人間にはできないわ!」
「ありがとうございます。リリー殿。」
「まっ、いいよ。それより、明日の試合に備えて今日はもう帰ろうか。」
「はい。」
僕達が闘技場を出ようとしたら、後ろから勇者達に声をかけられた。
「ちょっと待ってくれ。」
「なにか?」
するとミサキがガンマの前まで来た。
「私の完敗よ。最初の攻撃もわざと私に怪我をさせないようにしたでしょ?」
「・・・」
「まあ、いいわ。次に戦ったら絶対に負けないからね。」
今度はタイゾウとユウマが話しかけてきた。
「確か、リリーとか言ったな。可愛い顔して、お前、相当強いな。だが、明日は俺が勝つからな。」
「ガンマさん。明日はミサキの仇を取らせていただきますので、今日はゆっくりお休みください。あなたとは万全の状態で戦いたいですから。」
すると、リリーがタイゾウに言った。
「あなたは少しぐらい私を楽しませてね。最初から全力で来ていいわよ。遠慮はいらないからね。」
リリーがほんの少しだけ闘気を解放した。すると、タイゾウとユウマの顔色が変化した。
「リリー! 行くよ!」
「うん。」
僕達が立ち去った後で、3人が話をしていた。
「あの3人は何者なのかしら。この世界に来て、あれほどの恐怖を感じたことはないわ。」
「ああ、俺もそう思った。あのリリーとかいう少女から感じられる闘気は、オーガキングとかそんなレベルじゃないぞ!」
するとユウマが真剣な顔で言った。
「もしかしたら、あの3人は魔族かもしれないな。あのシルバーという少年が魔王とかな? アスラ魔王国に現れた魔王と同じ名前なんて、俺には偶然とは思えない。」
「それはあり得ないでしょ? 魔王がこんな場所にいるわけがないもん。」
「そうだ。ユウマ! ミサキの言う通りだ! もし彼が魔王なら、もっと邪悪な気配を出しているだろう。彼らは強いが『悪』ではないぞ!」
「確かにな。」
そして翌日、いよいよ準決勝の日だ。準決勝第1試合はリリーVSタイゾウだ。両者が、試合会場の中央に歩み出る。
「まさか、あんたと戦うことになるとは思わなかったぜ!」
「私は別に誰が相手でも構わないから。それより、全力で来てよ。今迄みたいにつまらない試合はしたくないから。」
「わかった。ならば、全力でやらせてもらうぞ!」
いよいよ審判が合図をする。
「始め!」
タイゾウの身体から闘気が溢れ出る。さすがに勇者だけあって、その闘気は凄まじい。タイゾウの姿が消えた。そして、次の瞬間、リリーの左側から拳が飛んできた。リリーはそれをギリギリかわすが、リリーの頬から血が流れた。
「さすがだな。俺のパンチを避けたのはユウマとお前だけだ。」
「ちょっとびっくりしたかな。魔法とか武器は使わないの?」
「ああ。俺はこの拳が最大の武器なんでな。」
「なら、私も武器と魔法は使わないわ。どこからでもかかってきていいよ。」
リリーは瞬時にタイゾウの能力を見切ったようだ。それからタイゾウがいくら攻撃しても、かすりもしなくなった。
「もう、お終いなの?」
「ハー ハー まだまだだ!」
その後もタイゾウがリリーに攻撃を仕掛ける。そのすべてをリリーが避けてしまった。
「ごめん。あなた、やっぱり弱いわ! もっと訓練しなさい! さもないとサタンに勝てないわよ!」
「サタン?!」
「あっ、まっ、いいか。どうせその内わかるだろうし。じゃあ、終わらせるわよ。」
リリーが瞬間移動した。タイゾウの姿が消えたように見えたのは能力によるものだ。そのため、多少の時間ができる。だが、リリーの姿が消えたのは瞬間移動によるものだ。その差は歴然としている。瞬間移動は文字通り瞬時に姿を現すのだから。
「グホッ」
リリーの拳がタイゾウの腹にめり込んだ。タイゾウはそのまま気を失った。
「勝者リリー!」
「オオ——————」
「ワ————」
会場内は割れんばかりの大歓声だ。名前も知られていない少女が、大男の勇者を子ども扱いで倒したのだ。観客達が驚くのも無理はない。
「やりすぎたかな?」
「別に大丈夫だよ。」
「リリー! ちゃんと手加減しただろうな?」
「当たり前じゃない! 本気でやったら死んじゃうもん。」
近くで僕達の会話を聞いていた人達はあっけにとられていた。その中に、ユウマとミサキの姿もあった。
「続いて準決勝第2試合を始めます!」
アナウンスに従って、ガンマが試合会場の中央に向かった。どうやら緊張がマックスのようだ。右手と右足が一緒に出ている。
「ガンマ、ガチガチじゃない。あれじゃ勝てないわよ。」
仕方がないので僕はガンマに声をかけた。
「ガンマ! 相手はゴーレムだと思え!」
「はい!」




