勇者召喚の謎
僕達が受付から出ると、ものすごい魔力の反応があった。かなり上位者のものだ。リリーと同格かそれ以上だ。
「シルバーも感じた?」
「うん。行ってみようか。」
僕達は魔力の反応があった場所まで急いだ。すると、急にナイフが複数飛んできたが、僕が睨むとナイフはすべて地面に落ちた。
「セリーヌでしょ! わかってるんだからね。」
すると木の陰からセリーヌが出てきた。
「そうか。わかっていたか? いつからだ?」
「さっきだよ。セリーヌも魔力を隠ぺいしてたでしょ。僕にもわからなかったもん。」
「さすがの魔王様も俺の隠ぺいを見破れなかったか。」
なんかセリーヌが嬉しそうだ。ただ、相変わらずビキニアーマーなので僕は目のやり場に困ってしまう。
「セリーヌ! あなた、成長したでしょ?」
「当たり前だ。もう1年経つんだぞ! この年頃は成長期だからな。すぐに大きくなるんだ!」
「私だって少しは成長したんだから!」
完全にリリーの負けだ。セリーヌは、最初に会った時は時間を止めていたから仕方がないが、今はかなり成長している。それに引き換え、僕とリリーの成長は遅いようだ。
「あの~! 師匠! こちらの方は?」
「ああ、ガンマは初めてだったね。僕達の仲間だよ。」
「そうですか? 良かったです。仲間で。敵だったらどうしようかって少し怖かったです。」
「大丈夫だよ。セリーヌはすっごく優しいから。」
「おや。シルバー! おだてたって何も出やしないぞ!」
セリーヌが僕を抱きよせた。セリーヌから柔らかさと温もりが感じられた。
「セリーヌ! 何してるのよ!」
「いいじゃないか。減るもんでもないし。それに、リリーはずっとシルバーと一緒にいたんだろ! 俺にも少しぐらいシルバーを堪能させろよ!」
僕って2人にとって何なんだろう。そんなことを考えながら、3人でケント伯爵の屋敷に行った。セリーヌはケント伯爵やヨハン、ジュノンに会うのは初めてだったので僕が紹介した。そして、これからのことを話し合った。
「ところでこれからどうなさるんですか? シルバー殿。」
「予定通り、リリーとガンマには武闘大会に出てもらうよ。」
ヨハンはかなり焦っているようだ。気持ちはわかる。家族を皇帝に殺されているんだ。一日も早く仇を取りたいのだろう。
「そんな悠長なことをしていていいんですか? その間にも帝国は他国への侵攻を続けるんですぞ!」
ここで、イングス聖教国にいた時から勇者達のことを調べているセリーヌが自分の考えを説明した。
「それはないな。皇帝アルカイックは、イングス聖教国から武闘大会に3人の勇者を招待したからな。イングス聖教国を敵に回すようなことはしないだろう。少なくとも、武闘大会が終わるまでは静かにしてるだろうな。」
するとケント伯爵が疑問を口にした。
「ですが、何故勇者を武闘大会に招待したんでしょう?」
リリーも疑問に思ったようだ。
「セリーヌ。勇者って魔王討伐のために召喚されるのよね?」
「そうだが。なぜそんなことを聞く?」
「でも、魔王のシルバーはナルーシャ様からこの世界の平和を託されているのよ。どうして勇者が召喚されたのかしら?」
確かに勇者は魔王討伐の使命が与えられる。この場にいる全員が疑問に思っているのだろう。ヨハンもケント伯爵も顔をしかめている。
「ナルーシャ様も勇者が召喚されたことは知らなかったらしいよ。」
「えっ?! そうなの? なら、誰が召喚したんだろうね?」
セリーヌがしばらく考え込んだ後に推論を言い始めた。
「考えられるのは2つだな。一つはナルーシャ様に対する対抗心から、どこかの神が勇者達を召喚した可能性だ。ナルーシャ様が、シルバーを使って世界を平和にしようとしているのを快く思っていない他の神の仕業だな。」
「そんなことあるかな~。だって神様でしょ?」
リリーの意見に耳を傾けることもなく、セリーヌは話を続ける。
「もう一つはシルバー以外に魔王がいる可能性だな。」
「どういうこと? だって魔王はシルバーじゃない?」
「リリー、慌てるな。確かにシルバーは魔王だ。それはシルバーはアスラ魔王国の王だからだ。だが、それとは別に邪悪な魔の王である魔王が存在する可能性があるかもしれないということだ。」
「セリーヌ! もしかして、それってサタンの事?」
「そうだな。あやつは悪魔族だ! 天使と正反対の邪悪な存在だからな。可能性はあるだろう。」
確かにセリーヌが言う通りかもしれない。だとしても、なら何故ナルーシャ様が知らなかったのだろう。相談があってもいいだろうに。疑問はさらに深まった。
「セリーヌ殿。私にもヨハン様にもわかるように説明してもらえませんか?」
ここで僕がセリーヌに代わって説明することにした。
「サタンは魔族の中でも邪悪な存在の悪魔族なんだ。この世界の平和を乱し、人々が悲しみ苦しむことを喜んでいる存在なんだ。」
「そんな存在がいるのですか?」
「うん。いるよ。以前話したけど、ミズーリ侯爵もサタンの手下のアークデーモンに殺されて、身体を乗っ取られていたからね。」
「アークデーモンはシルバーが討伐したから問題なくなったけどね。」
「でも、まだサタンがいるのでしょう?」
「あいつは僕が倒すよ。絶対に。リリーの両親の仇だからね。」
「そうだったんですか。」
「ええ。そうよ。私の両親はサタンとその仲間達に殺されたのよ。絶対に許さないから。」
ここでセリーヌが付け足した。
「サタンは太古の時代に魔王アンドロメダによって滅ぼされたんだが、何故かあやつは復活したんだ。ここ近年、世界中で内乱や戦争が起こっているのもあやつのせいかもしれないな。」
「では、我々もサタンの討伐に協力しますよ。」
「ありがとう。でも、その前に話を戻そうか。これからの計画だよね。」
「そうでした。」
僕は自分なりの考えを話した。
「武闘大会は開催させるよ。もし、皇帝がサタンの手下なら、皇帝の狙いは勇者達を殺すことかもしれないからね。」
「なるほどですな。」
「その上で、大会終了後に僕とリリーとセリーヌとガンマで皇帝を始末するさ。」
すると、セリーヌもリリーもニコニコしているが、ヨハンもケント伯爵も驚いた様子だった。
「お言葉ですが、シルバー殿。いかにシルバー殿が魔王だったとしても、帝国の軍勢を相手にたった4人で討伐できるのでしょうか?」
「確かケントとか言ったな。帝国の軍勢を壊滅させるぐらい俺やリリーだけでもできるさ。」
「まさか?!」
「疑ってるようだな。ならば聞こう。かの魔王アンドロメダが本気を出したら、この世界はどうなると思う?」
「間違いなく滅びるでしょうね。」
「なら、同じことがシルバーにもできるさ。それが魔王だ!」
ケント伯爵もヨハンも真っ青になった。
「大丈夫だよ。僕はそんなことしないから。」
「よく言うわね。シルバー! あなた帝国を地図から消してしまおうかとか言ってたじゃない?」
「そんなことしないよ。真面目な人達だってたくさんいるんだから。」
「シルバー殿もリリー殿も冗談がお上手ですな。ハッハッハッ」
ヨハンの笑いが引きつっていた。その後、今後の話をいろいろとした。帝国を壊滅させた後の政治体制についてや、他国との交流につても話し合った。
「なら、一旦魔王城に帰るね。明日の早朝には戻ってくるから。」
僕達とリリー、セリーヌとガンマは魔王城まで戻った。




