勇者達と初対面!
僕達は馬車2台で帝都に向かった。護衛の兵士は10名だけだ。この10人は帝国になる前から伯爵家に仕えている信用できる人達だ。
「ヨハンさん。帝都までどのくらいかかるの?」
「そうですな~。2日ほどですかな。」
途中で、いくつか街を通過した。どの街もケント伯爵が治める街と違って、人々に活気がなかった。中には、建物が破壊されたまま放置されている街もあった。そして、2日後、いよいよ帝都バミューダシティーに到着した。さすがは帝都だ。他の街は活気がなかったが、ここだけは違っていた。たくさんの店が並び、大勢の人々が往来を行き来している。だが、人相の悪い連中も大勢いた。もしかしたら、武闘大会に出る予定の冒険者達なのかもしれない。ケント伯爵の帝都の屋敷に到着した後、僕とリリーは帝都を散策することにした。ヨハンさんとジュノンは万が一を考えて、ケント伯爵の屋敷にいることになった。
「シルバー! やたらと冒険者が多くない?」
「武闘大会が近いからじゃないかな。」
「私も申し込みたいんだけど。」
「なら、ガンマと一緒に申し込みを出せばいいよ。」
「そうね。」
僕とリリーはその日は魔王城に戻り、闘技場のガンマのところに行った。
「シルバー師匠。リリー殿。お帰りでしたか。」
「ああ。オレ達、帝都についたから迎えに来たんだよ。」
「そうですか。いよいよですな。」
「練習の成果を見せてくれるか?」
僕はスタスタと闘技場に向かって行った。
「もしかして、師匠が俺の相手をしてくれるんですか?」
「ガンマの成長ぶりを確認したいからな。 どこからでもかかってきていいぞ!」
「なら、遠慮なくやらせていただきます。」
オレの手にはガンマと同じ練習用の剣が握られている。ガンマは本気モードのようだ。全身から闘気が溢れ出ている。
「シュン」
ガンマの姿が消えた。次の瞬間、オレの右側から剣が現れた。オレはそれを剣で受け止める。
「さすがですね。師匠。でも、これからですから。」
ガンマが剣に魔法を付与して振って来た。目に見えない風の刃が飛んでくる。オレは、自分の周りに結界を張ってそれを防いだ。さらにガンマが魔法を発動する。ガンマが手を上にあげると、炎の矢が数えきれないほど空中に現れた。それが一斉にオレをめがけて飛んできた。
『グラトニー』
炎の矢はすべてオレの手に吸い込まれていく。その後も、ガンマは様々な魔法や武術で攻撃してきた。だが、オレにかすり傷一つ負わせることができない。
「やっぱり、師匠は強すぎですよ。全く歯が立ちませんよ。」
すると、リリーが偉そうに言った。
「当たり前じゃない。シルバーは魔王なのよ。」
「ガンマ。お前の力は分かった。かなり強くなったな。だが、今回の大会にはイングス聖教国から『勇者』が参加するらしいから、注意しろよ。」
「それは本当ですか? 勇者は魔王を討伐するために召喚される存在ですよ。」
「そうだが。なにか問題でもあるのか?」
「師匠はナルーシャ様にこの世界の平和を託されたんですよね? なのになぜなんですか?」
「オレにもわからんよ。そもそも勇者が敵か味方かもわからんな。」
「わかりました。俺がその勇者の実力を見てみますよ。俺に負けるようなら大したことないでしょうから。」
するとリリーが言った。
「ガンマは十分強くなってるわよ。でも、私の敵じゃないけどね。」
「リリー殿も参加するんでしたっけ?」
「そうよ。」
ガンマの顔が一気に暗くなった。
「私と決勝で当たるんでしょ? その前に負けたらシルバーの弟子を破門するからね。」
「は、はい! 頑張ります!」
その日は魔王城で休んで、翌朝帝都バミューダシティーに向かった。バミューダシティーに着いた僕達は早速武闘大会の参加申し込みをするために闘技場に向かう。闘技場の付近には様々な冒険者風の人達がいた。僕達がキョロキョロしていると、僕達を睨んでくるものがいた。
「おい! お前達! どこの人間だ! ここにきて俺様にあいさつがないとはいい度胸だな。」
「僕達、田舎もんだから。挨拶が必要なの?」
「なにを~! ふざけた野郎だ!」
すると、仲間の冒険者達が僕達を囲んだ。ガンマは今にも剣を抜きそうな状態だ。
「ガンマ! ダメだよ。試合はまだなんだから。」
「はい。わかってます。師匠。」
大の大人が僕のことを師匠と言ったもんだから、その場で笑いが起きた。
「アッハッハッ この娘がお前の師匠なのか? お前は何を教わってるんだ? オママゴトでも教わってるのか?」
リリーの様子がおかしい。まずい! リリーが切れそうだ!
「リリー! ガンマ! 受付に行こうよ。早く~!」
「おい、待てよ! まだ話が終わっちゃいねぇだろ!」
すると、後ろの方から黒髪の青年2人と黒髪の少女が声をかけてきた。
「お前達は何をしているんだ? か弱い女の子達をいじめて! それでも男か?」
「なにを~! こいつからやっちまえ!」
荒くれ者の冒険者達が一斉に黒髪の青年に襲い掛かる。だが、青年は相手の攻撃をすべて受け流し、リーダー格の男の腹に拳をめり込ませた。
「グホッ」
「どうする? まだやるか?」
「チッ 覚えてろよ!」
冒険者達はその場から立ち去って行った。
「ありがとう。助かったよ。」
「いいさ。それより、こんなところにいると危ないよ。ここは君達のような女の子が来るところじゃないからね。」
すると、一緒にいた少女が怒り出した。
「ちょっと! ユウマ! どういうことよ? 私だってか弱い少女なのよ!」
「ミサキはか弱くないだろ!」
「ユウマはちょっとかわいい子がいるとすぐに声をかけるんだから! タイゾウ! 何とか言ってやってよ!」
「ミサキ! あきらめろ! あれがユウマなんだから。」
どうやら、この3人組が勇者のようだ。3人からはそれなりに強い闘気を感じる。当然、僕達3人は闘気も魔力も隠ぺいしているけどね。
「ありがとう。僕達、これから武闘大会の受付をするから。またね。」
僕達は3人を残して受付に向かった。そこで、リリーとガンマがエントリーした。
「シルバーは本当に出ないの?」
「別にいいよ。楽しそうじゃないし。」
「なら、私とガンマを応援してね。」
「いいよ。」




