ヨハンとジュノンとケント伯爵を案内する!
ケント伯爵の屋敷に行った僕達は、ケント伯爵の真意を知った。同時に、ヨハンが帝国に滅ぼされたアケメネス王国の第2王子だということも判明した。僕とリリーはヨハンとケント伯爵に自分達の正体を明かしたが、それでもなお、2人は帝国と戦うために力を貸して欲しいと言ってきた。そこで、僕とリリーは2人に協力することにした。
「それで、今日はどうされるのですか?」
「街の宿屋にでも泊まろうと思うんだけど。」
「ならば、我が屋敷にお泊り下さい。みなさんが泊まるぐらいの部屋はありますから。」
するとリリーが駄々をこね始めた。
「シルバー! 私達の正体を言ったんだから、一旦魔王城に帰りましょうよ。大浴場でゆっくりしたいよ。」
僕とリリーの会話を聞いて、ケント伯爵が不思議そうに言ってきた。
「魔王城に帰るといっても、アスラ魔王国はマジカル大陸ですよね?」
「そうよ。」
ヨハンも不思議そうな顔をしている。
「ああ。僕、転移魔法を使えるから一瞬なんだよね。」
「転移魔法ですか?!」
「そうだけど。」
「神話に出てくる魔法じゃないですか?」
「ミズーリ侯爵に化けていたアークデーモンも使ってたよ。」
「アークデーモンですか?!」
なんか、僕が何かを言うたびこの2人は驚いている。僕の方が疲れてきた。僕がうんざりし始めていると、それに気づいたのかリリーが僕の代わりに答えてくれた。
「シルバーが討伐したから大丈夫よ。」
「そうですか。さすがは魔王様ですね。」
「まあね。」
すると、ジュノンがリリーに抱き着いて甘えながら言った。
「父上! 私も魔王城に行ってみたいです! シルバー兄ちゃん。リリー姉ちゃん。魔王城に連れてってよ!」
すると目をキラキラさせながらケント伯爵まで同じことを言ってきた。
「シルバー殿。私も魔王城に行ってみたいです。アスラ魔王国に行ってみたいです。ダメでしょうか?」
「別にいいけど。」
「決まりね。シルバー。」
「じゃあ、みんな僕の近くに来てくれる?」
僕はみんなを連れて魔王城の自分の執務室まで転移した。初めての転移魔法に全員が目を白黒させている。
「いきなり景色が変わりました。これが転移というものですか? 凄いです。シルバー殿。」
「私も初めて体験しましたが、これは凄いですな。」
オレはここ最近、転移と同時に精悍な男性の姿に変身するようにしている。ジュノンにとってはそれが不思議だったのか、リリーに抱き着きながらオレをじっと見ていた。
「シルバー兄ちゃんはいつ姿が変わったの?」
「転移する途中だ。」
「ふ~ん。」
オレ達が帰ってくることを知っていたのだろう、ゲーテがやってきた。
「お帰りなさいませ。魔王様。すでにみなさんの食事の用意が出来ております。」
「ありがとう。ゲーテ。」
オレ達は食堂に行った。ヨハンもケント伯爵もキョロキョロしながら歩いている。魔王城がよほど珍しいのだろう。壁に飾られている装飾品の前で立ち止まって、目が釘付け状態だ。僕達が食堂に行くとすでにガンマが食事を始めていた。
「シルバー師匠。お帰りだったんですか?」
「ああ。どうだ? ガンマ! 訓練は順調か?」
「はい。もう、竜人族達とも普通に訓練できるようになりましたから。」
「そうか。」
「それで、そちらの方々はどちら様ですか?」
オレはガンマに3人を紹介した。
「こっちがアケメネス王国の王子のヨハンとその息子のジュノンだ。それと、こっちはイグドラ帝国のケント伯爵だ。」
僕が2人を紹介すると、ガンマの顔つきが変わった。
「イグドラ帝国の貴族ですか?! なぜそのような者を?」
「ケント伯爵は元々アケメネス王国の出身だ。イグドラ帝国を倒そうとする仲間だ。」
「そうですか~。なら、いいんですが。俺はガリア王国のガンマだ。よろしくな。」
ここで料理が運ばれて来た。サラダにスープ、ご飯に野菜の煮物、メインディッシュはレッドボアのステーキだ。目の前の料理が珍しいのか、ヨハンもケント伯爵もジュノンもガツガツと食べ始めた。とても元王子や伯爵とは思えない食べ方だ。
「これらの料理は信じられないほど美味しいですな。
「そうだと思うわよ。素材がいいからね。この野菜は、元々私のおばあちゃんが作っていたのをこの魔王国でも作るようになったの。それに、調味料はベテルギ王国産の胡椒や塩を取り寄せてるからね。」
「アスラ魔王国はベテルギ王国とも交流があるのですか?」
「そうよ。」
「羨ましいですな。いろいろな国と交流して様々な物や知識に触れられるのは。」
「世界が平和になれば、世界中で交流できるようになるさ。」
「早くそうなればいいのですが。」
その後、オレ達はそれぞれの部屋でゆっくり休んだ。ヨハンとジュノンは同じ部屋だ。相変わらず、リリーはオレのベッドにいる。
「シルバー! さっきの話だけど、アマゾル大陸やユーテス大陸とも交流できないかな~?」
「交流するにしても船になるだろ? このマジカル大陸の近くの海にはクラーケンやメガロドンがいるからな~?」
「何とかならないかな~?」
「今度考えて見るよ。」
そんな話をしながら僕達は寝た。翌朝、朝食をとった後、アスラ魔王国の王都アテナを案内した。街を歩くと、人化した魔族もいれば人化していない魔族もいた。何故かヨハンとケント伯爵は黙って歩いている。だが、さすがに子どもだ。ジュノンは珍しいものばかりなのか凄くはしゃいでいた。
「リリー姉ちゃん。あの人は何族なの?」
「彼女達はアラクネ族よ。」
「なんかきれいな人ばっかりだね。」
「そ~お!」
すると、前から見慣れた男女がやって来た。よく見るとトロルドとモモカだ。仲良く手をつないでいる。オレ達に気付くといきなり手を放して距離を取った。
「魔王様。お帰りなさいませ。」
「ま、ま、魔王様。リリー殿。久しぶりですな。」
なんかトロルドが慌てている。別にいいのに。
「2人とも久しぶりだな。ところで、トロルド。頼んであった仕事は順調か?」
「はい。ノースホワイトの復興が終わったので、アスラ魔王国に戻ってきました。」
「そうか。ご苦労だったな。」
「褒めていただいて光栄です。」
ここでリリーがモモカに言った。
「モモカ! 隠さなくたっていいじゃない。2人はお似合いだと思うわよ。」
モモカが真っ赤になった。
「鬼人族とトロール族は元々近い関係にありまして、それでお互いに惹かれあうものが多くありまして・・・」
「いいさ。モモカもトロルドもこの国の幹部なんだから。2人が仲良くなれば、他の種族達も垣根を越えて仲良くなるだろうし。」
「はい。」
オレが認めたことで、モモカとトロルドの関係は公認の仲となった。2人は嬉しそうに手を繋いでそのまま歩いて行った。2人と別れた後、オレ達は途中でレストランに入って、砂糖と卵と牛乳をたっぷり使ったデザートを食べた。店を出たところでヨハンが言ってきた。
「シルバー殿。このアスラ魔王国は本当にみんな幸せなんですな。人々の顔が笑顔であふれています。」
「そうよ。でも、こうなるまでには時間がかかったのよ。ねっ、シルバー!」
「そうだな。でも、みんなで頑張ったのさ。種族の垣根を越えて平和になるように、ここにいる者達一人一人が努力したんだよ。」
もう1日魔王城に泊まって、翌朝ケント伯爵の屋敷に戻った。すると、執事が慌ててケント伯爵のところにやって来た。
「伯爵様。帝都より使者が参りました。至急帝都に来るようにとのことです。」
「わかった。準備しろ! すぐに帝都に向かう!」
「はい。」




