バルスの街で魔獣退治
僕も魔力感知で魔獣を見た。どうやらサイクロプスがオーガキングやオーガを引き連れてきているようだ。その数、およそ500体。対して、帝国軍は3000人。これなら、僕達の出番はないかもしれない。
「大丈夫そうね。」
「そうだね。」
するとヨハンが声をかけてきた。
「シルバー殿とリリー殿は何者なんだ?」
「どうして?」
「先ほどもそうだが、今もはるか遠くの魔獣の種類や数を把握しているようではないか。とても普通の冒険者とは思えん。」
「僕もリリーも魔法が得意なだけだよ。」
前方で戦いが始まったようだ。
「ドッガーン」
「バーン」
恐らく魔法を使って攻撃するものがいるのだろう。爆音と地響きがここまで伝わってくる。
「ヨハンさんとジュノン君はここにいてくれるかな。リリー行くよ。」
「うん。」
僕とリリーは魔獣のいる方向に走って行った。オーガ1体に対して兵士が5人で戦っている。だが、まだ後ろにはオーガキング、さらにその後ろにはサイクロプスがいるのだ。オーガの後ろから二回り大きな個体が現れた。オーガキングのようだ。バカでかい割に動きが俊敏だ。兵士が次々とオーガキングの振るう棍棒に倒されていく。すると、ケント伯爵の声が響き渡った。
「そこをどけ―! 俺が相手だ! お前達はオーガを討伐しろ!」
ケント伯爵が馬から降りて剣を構える。そして、一気にオーガキングとの距離を詰めて切りかかった。オーガキングは棍棒でその攻撃を受け止めた。だが、ケント伯爵が剣に魔法を付与したようだ。剣から凄まじい炎が出た。オーガキングが一瞬怯んだ。次の瞬間、ケント伯爵がオーガキングの左手を切り落とした。
「ギャー」
「はずしたか! 次ははずさんぞ!」
オーガキングが咆哮をあげた。
「グオ——— グオ———」
すると、地面が揺れ始め、森の中からドッシドッシとサイクロプスが現れた。サイクロプスはオーガ達の状況を眺めて興奮し始めた。
「グオオ———」
兵士達に向けて目から赤い光線を放つ。
「シュ——— ドドドッ————ン」
光線の当たった場所が一瞬で何もなくなった。ものすごい威力だ。その攻撃を見て兵士達が逃げ始めた。その中で一人、ケント伯爵だけはオーガキングと対峙している。オーガキングは、切り落とされた左手から血を流しながら棍棒でケント伯爵に向かって行った。
「リリー! そろそろだね。」
「そうね。」
僕とリリーはオーガキングとサイクロプスに向かって行った。
「リリー! オーガキングは任せるよ。」
「わかったわ。」
リリーがケント伯爵の前に出た。
「お前は?」
「後ろに下がってて! 邪魔よ!」
リリーが自らの身体に身体強化を施し、剣を抜いて一気にオーガキングに向かって行く。その動きが速すぎてケント伯爵には見えない。リリーがオーガキングから離れた瞬間、オーガキングの頭が地面に落ちた。
「ドスン!!」
「魔法を使うまでもないわね。」
僕はサイクロプスの前に来た。サイクロプスが僕に向かって赤い光線を放つが、右手で弾くと光線は上空へと曲がってしまった。
「お前、なかなかだよ。僕が痛みを感じたんだから。ちょっと褒めてあげるね。でも、終りにするよ。」
僕は魔力を目に集めた。そして、目からサイクロプスと同じような赤い光線を放った。その光線はサイクロプスの右足を切断した。
「ドッガーン」
サイクロプスが地面を転がる。僕は、剣を抜いて上空に飛びあがりケント伯爵と同じように、剣に炎の魔法を付与した。剣からは炎が溢れ出る。そして、それが竜の姿へと変化した。
「終わりだよ!」
僕は炎の竜を纏った剣をサイクロプスの身体に突き刺した。暴れていたサイクロプスの動きが止まり、大きな目は閉じられた。
「オオ—————!」
「勝ったぞ————!」
僕がリリーのところに行くとケント伯爵が駆け寄ってきた。
「感謝する。だが、君達は何者なんだ?」
「ただの冒険者だよ。先を急ぐから。」
「ま、ま、待ってくれ! お願いだ!」
ケント伯爵が必死に引き留めてきた。何か理由がありそうだ。
「どうする?」
「ヨハンさんとジュノン君を待たせてるからな~。」
「ならばその2人も一緒で構わない。俺の屋敷に来てくれないか。お礼もしたいしな。」
「いいよ。」
僕とリリーはヨハンとジュノンのところまで戻った。
「終わったようだな。」
「まあね。」
「それで、どうしてケント伯爵がいるんだ?」
リリーがニコニコしながら言った。
「なんかお礼がしたいんだって! 良かったわね。ジュノン君。美味しいものが食べられるわよ!」
「どうしてお礼なの? リリー姉ちゃんとシルバー兄ちゃんが何かしたの?」
すると、ケント伯爵がジュノンに言った。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんのお陰で街が助かったんだよ。だから、そのお礼さ。」
「シルバー兄ちゃんとリリー姉ちゃんは強いんだね!」
「普通よ。ねっ、シルバー!」




