帝都に向けて出発する!
港町ハベルでの戦闘を終えて、僕とリリーは魔王城に戻った。すると、ゲーテがすかさずやって来た。
「お帰りなさいませ。ガリア王国もこれで大丈夫でしょう。大変お疲れ様でした。」
「ありがとう。ゲーテ。ところでガンマは?」
「はい。まだ訓練中だと思います。」
僕とリリーは魔王城に隣接する訓練場に行った。すると、一人でゴーレムと戦うガンマの姿があった。なかなか様になっている。大分成長したようだ。
「ああ、これはシルバー師匠にリリー殿。お帰りでしたか。」
「頑張ってるみたいだね。」
ガンマが周りをキョロキョロしている。テキーラとベータを探しているのだろう。
「テキーラとベータならいないよ。ハベルを取り戻したからね。」
「それは本当ですか?」
リリーが答えた。
「本当よ。あそこにいたミズーリ侯爵は悪魔族のアークデーモンだったのよ。」
「みんな無事なんですか?」
「無事よ。だって、シルバーが倒しちゃったもん。」
「さすがですね。師匠。アークデーモンと言えば悪魔の中でも最上位種じゃないですか。それを討伐するなんて。俺ももっと修行に励みます。」
「ところで、僕達これからイグドラ帝国の帝都に向かうんだけど。どうする?」
「もう行くんですか?」
「どうして?」
「俺はまだまだ修行が足りないです。もう少し修行したいんですけど、あと少しでゴーレムに傷がつけられそうなんです。」
「すごいじゃない! ガンマ! 魔族の中でもあのゴーレムに傷をつけられるのは一部の幹部だけよ!」
「えへへ。そうですかね~! 俺、凄いですか~?」
ガンマの顔がにやけている。
「でも、ガンマ。上には上がいることを忘れちゃだめだよ!」
「はい。ローズ師匠にも同じことを言われましたから。」
ローズおばあちゃんはみんなに言ってるんだ~。僕とリリーにも同じことを言ってたよな~。
「シルバー師匠。俺はここで修行してます。帝都に付いたら迎えに来てくれますか?」
「別にいいけど、もしかしたら武闘大会はなくなるかもしれないよ。」
「どうしてですか?」
「だって、港町ハベルを第2の帝都にしようとしていたミズーリ侯爵が殺されたんだよ。それに、ガリア王国が復活して帝国から各都市を取り返してるんだから、皇帝アルカイックが黙ってないんじゃないかな~。」
「確かにそうですね。でも、だからこそ武闘大会を開くんじゃないでしょうか? 大会に参加する強者達を帝国軍に引き入れようとするんじゃないでしょうか?」
「その可能性はあるわね。シルバー。勇者達も帝国軍に参加させられるかもしれないわ。」
「なら、リリー。帝都に急ごうか?」
「うん。」
「ガリアはここで修行していてもいいよ。僕とリリーは明日帝都に向かうから。」
「わかりました。お気を付けて行ってください。」
「ありがとう。」
僕とリリーはその日は王城で過ごし、翌朝帝都に向かった。イグドラ帝国とベテルギ王国の国境の砦まで転移して、そこから飛翔していくことにした。しばらく飛翔していると、以前テキーラ達と来た分岐点が見えた。以前はガリア王国に行くために右に曲がったが、今回は直進して帝都バミューダシティーに向かう。
「この辺りって小さな村や町が密集しているわね。」
「多分、この村も帝国に占領されたんじゃないかな? 結構建物が壊れてるよ。」
「そうね。どうする? 歩いて行く?」
「珍しいね。リリーがそんなことを言うなんて。」
「そうね。でも、ハベルの街のようなことがあるかもしれないでしょ。」
「わかったよ。」
僕とリリーは最初の小さな村の近くに舞い降りて、そこから歩いて行くことにした。しばらく歩きていくと小さな村があった。村に入ると村人達から不審な目で見られた。だが、この村に兵士達の姿はない。僕は、村人に聞いてみた。
「僕達、世界中を旅してる冒険者なんだけど、ここってイグドラ帝国だよね?」
「ああ、そうだよ。7年前からな。それまでは、ペイン王国だったんだがな。」
すると、横にいたリリーが聞いた。
「他と違って、この村には帝国の兵士の姿がないんだけど、どうしてなの?」
「今朝までは大勢いたさ。なんか、慌てて村から出て行ったよ。他の街で何かあったのかもしれないな。ガリア王国の連中も、レジスタンスになって帝国と戦ってるって言ってたからな。」
「どこに行ったかわかる?」
「何でそんなこと聞くんだ?」
「だって、旅の途中で兵士達に会いたくないじゃない。」
「それもそうだな。恐らく、ここから北に行ったところにペイン王国の旧王都バルスがあるから、そこにでも集合してるんだろ。」
「ありがとう。」
僕とリリーはそのまま村を出て、バルスの街に向かうことにした。戦争のせいで冒険者がいないのか、街道沿いに魔物がよく現れた。その都度、リリーと討伐して空間収納に仕舞っている。
「本当に魔獣が多いわね! こんなに魔獣が多いと、人々は簡単に移動できないんじゃないかな~。」」
「 多分、移動するのは兵士達ぐらいだと思うよ。ガリア王国でもさっきの村でもお店が開いてなったもん。」
「言われてみればそうね。早く何とかしないと。」
「うん。」
バルスの街までもう少しのところまで来た。この森を抜ければ後は草原を歩いて行くだけだ。耳を澄ましてみると、森の奥から水の流れる音が聞こえる。僕とリリーは音のする方に行ってみた。
「カキン——— カキン——— 」
何か剣と剣がぶつかり合うような音が聞こえてくる。僕とリリーは気配を消して木の陰から様子を見ることにした。すると、7歳ぐらいの男の子が父親のような男性と稽古していた。
「ビシッ」
気配を消していたが枯れ枝を踏んでしまったようだ。2人は慌てて僕達の方を見た。
「そこにいるのは誰だ? 姿を現せ!」
しょうがないので僕とリリーは木の陰から2人の前に出て行った。
「お前達は何者だ? 何故少女が2人でこんな場所にいるんだ?」
リリーがクスクス笑いながら答えた。
「私達、旅をしてるの。街道を歩いていたら水の音が聞こえたのよ。水を求めて森の中に入ったらあなた達がいたの。」
「そうか。まんざら嘘でもなさそうだな。だが・・・」
父親らしき男が僕に向かってナイフを投げた。咄嗟に僕がナイフを睨むと、ナイフは不自然にも地面に落ちた。
「やはりな。お前達はただ者じゃないな。」
「どうしてそう思ったの?」
「普通の女や子どもに気配は消せないからな。それに、今のは何だ? 俺には見えなかったぞ!」
「しょうがないな~。正直言うと僕達は冒険者なんだよ。武闘大会に出るために帝都に向かっているんだよ。」
「なるほど、それならば納得だ。だが、少女2人で帝都まで辿り着けるのか?」
笑いをこらえていたリリーがとうとう我慢の限界のようだ。
「ハッハッハッ」
「何がおかしい!」
「だって、シルバーは男よ。よく見なさいよ! 私と違って胸がないでしょ!」
男性は僕の身体をまじまじと見た。
「確かにな。それはすまなかったな。」
「別にいいよ。いつものことだから。それより、僕はシルバー。よろしくね。」
「俺はヨハンだ。こっちは息子のジュノンだ。
「私はリリーよ。よろしくね。ヨハン。ジュノン。」
「うん。」




