ミズーリ侯爵の正体!
僕とリリーはレジスタンスのみんなに防御のための結界を張って、港町ハベルに攻め入った。そこで司令官らしき男を討伐し、後ろを振り返ると、5000人いた兵士達はもう100人も残っていない。いくら攻撃しても当たらない相手に恐怖して、ほとんどの者が逃走したようだ。だが、この街の外には誰一人出られない。僕が結界を張っているのだから。
「どうする?」
「ここはユーサさん達に任せても大丈夫そうだから、ミズーリ侯爵を討伐しに行こうか。」
すると、テキーラとベータが引き締まった様子で返事をした。
「はい!」
僕達はハベルの街を王城まで向かって歩いた。どの店もすべて閉まっている。しかも、外を歩いている人が誰もいない。
「姫様! あの王都がこんな状態になっているなんて・・・」
「ベータ! 仕方ないわよ! 私だって胸が痛いんだから!」
2人は街の様子にショックを受けているようだ。ところどころに壊れたままの家もある。
「シルバーさん。リリーさん。この角を曲がれば王城よ。」
僕達が角を曲がるとそこには王城があった。外から見た王城もところどころ破損している。そして、僕達の姿を見つけた兵士が5人剣を抜いて駆け寄って来た。
「貴様らは何者だ?」
「この城の主よ! どきなさい!」
すると、兵士達は手に持った剣で斬りかかって来た。ベータが咄嗟に前に出て剣で防ぐ。そして、テキーラが一人また一人と切り倒した。城の中に入ってからも何度も兵士達に襲われた。なるべく僕とリリーは前に出ない。すべて、テキーラとベータが倒している。そして、謁見の間までやって来た。僕達が扉を開けて中に入ると、そこには平民の家族がいた。全員が動けないように縛られている。その奥の玉座には太った男が座っていた。男の両側には比較的強そうな兵士が2名立っていた。
「ここまで辿り着けるものがいたか。褒めてやろう。名を名乗ることを許可する。」
玉座の男が自信ありげに言ってきた。
「その椅子はあなたの物じゃないわ! どきなさい!」
「小娘が偉そうに! ————お前! もしかして第2王女のエリザベトか?」
「だったら何よ!」
「お前の家族は死ぬまで俺様に命乞いをしたぞ! 醜い奴らだ! お前も命乞いをするなら命を助けてやってもいいんだぞ!」
テキーラとベータの身体から闘気が出始めた。
「ほう? お前達は俺様に勝てるつもりでいるのか? 俺様も甘く見られたものだ! 俺様は元々イグドラ帝国のSランク冒険者だ。貴様らが束になってかかってきても勝つ可能性はゼロだな。」
ミズーリ侯爵は立ち上がって、目の前の平民を蹴飛ばしてどかした。
「もっと大勢で来るかもしれないと思って人質も用意したが、やはり無駄のようだったな。」
ミズーリ侯爵の隣にいた2人が剣を抜いて、テキーラとベータに近づいていく。すると、兵士の姿が消えた。次の瞬間、ベータの右手が地面に落ちた。
「グワッ」
「なんだ? あの程度の攻撃も避けられないのか? ならば俺様が出るまでもなさそうだな。」
リリーが僕をつついてきた。確かに状況はよくない。もしかしたらテキーラとベータでは勝てないかもしれない。
「あ~あ。見てたけど、それで強い気になってるの? 帝国のレベルって意外と低いね。」
「なにをー!」
僕はわざと注意を自分にむけるように言った。
「貴様~! 何者だ?」
「それを知ったらチビっちゃうよ!」
「ふざけるな! 先にあの娘を始末しろ!」
「ハッ」
思った通り兵士2人が僕に攻撃をしてくる。多分、普通の人には見えないほどの速さだ。だが、僕にとってはあくびが出るほど遅い。すべての攻撃をかわした。
「それで本気なの? もっと真剣にやってよ!」
兵士2人の顔が真っ赤になっている。
「何をやっている! 早く殺せ!」
「うるさいな~!」
「パチン」
僕が指を鳴らすと兵士達2人は全く動けない。僕はベータの近くに行って魔法を発動する。
『リカバリー』
すると、ベータの切り落とされたはずの腕が再び元に戻って行く。さすがのミズーリ侯爵も固まって動けない兵士2人も床に転がっている平民の家族も、全員が驚愕した。
「な、な、なんだ?」
「何を驚いているのさ。ベータの怪我を治しただけだよ。」
「貴様は一体何者なんだ?」
僕とリリーの身体から漆黒のオーラが溢れ出る。謁見の間の壁がビシッビシッときしむ音を立て始めた。そして、背中には真っ黒な翼が生えた。
「お前達は魔族なのか?」
「それがどうした? 臆病サタンの手下!」
「知っていたのか?」
「当たり前だ! オレは魔王だぞ! そのぐらい当然だろう!」
「魔王?! お前が魔王シルバーか? ちょうどいい。貴様をここで殺してサタン様の手土産にするとしよう。」
「悪いな。テキーラ! こいつはオレが倒す!」
「俺様を倒すだと! 魔王になりたてのひよっ子が、このアークデーモンのシュバルツ様に勝てると思っているのか!」
どうやらアークデーモンはシュバルツという名前のようだ。そのシュバルツが魔法で攻撃してきた。シュバルツの目から放たれた黒い光線を避けると、オレのいた場所が黒く溶けていた。さらにシュバルツが手を上にあげると、上空から黒い矢が降り注ぐ。量が多すぎて避けのは面倒だ。
『グラトニー』
黒い矢はすべてオレの手に吸い込まれてしまった。それを見てシュバルツはニヤニヤしながら言った。
「なるほどな。少しは楽しめそうだな。」
「お前! 本物のミズーリはどうしたんだ?」
「あの豚野郎か? あいつなら俺様が食ったに決まってるだろうが!」
「なるほど、悪魔族は下種野郎ばっかりなのか!」
「貴様~!」
シュバルツの身体がどんどん大きくなる。そして、頭からは角が2本出て、背中に悪魔特有の翼が現れた。同時に、目の前からシュバルツの姿が消えた。次の瞬間、オレの後ろから鋭い爪で攻撃してきた。
「なるほどな。アークデーモンになると瞬間移動もできるのか?」
「当たり前だ! デーモン族のなかでもアークデーモンは最強の存在だからな。」
「思えの強さは大体わかった。もう十分だ。終わりにしようか。」
「何をふざけたことを!」
『レストリクト』
オレが指を鳴らして魔法を発動すると、シュバルツの動きが止まった。
「どうだ? 動けないだろう?」
「貴様~! 何をしたー!」
「魔法をかけただけだ! 終わりだ!」
オレは剣を抜いた。剣に魔力を注ぎ込むと剣が眩しく光り始めた。オレはその剣を持ってゆっくりとシュバルツに近寄っていく。
「やめろー! 何をする気だ! 放せー!」
「お前達悪魔族は精神体だ。だが、この剣で斬られれば精神体のお前達も2度と復活はできないさ!」
「やめろー! サタン様———!!!」
『時空斬』
オレが剣を振ると、光が飛んでいき空間がゆがんだ。そして、シュバルツの身体が2つに別れその空間の中に落ちていく。シュバルツの姿が消えると空間が元に戻った。オレは元の少女のような姿に戻った。
「さすがシルバーね! アークデーモンでも相手にならないわね。」




