久しぶりのナルーシャ様
しばらくみんなが落ち着くまで街の様子を眺めていた。すると、ある建物が目に入った。その建物は屋根が大きなお皿のような形をしていて、建物全体から魔力が感じられる。僕はその建物に近づいた。すると、再び激しい頭痛に襲われた。
「大丈夫? シルバー!」
「うん。あの建物を調べてみたいんだ!」
「何があるの?」
「わからない! でも、何故かすごく気になるんだ!」
「なら、私も一緒に行くわ。」
僕とリリーは真っ白な建物に入った。1階はどうやら神殿のようで、この世界の様々な神の石像があった。その中心には、ナルーシャ様と思われる女神の像があった。
「シルバー! やっぱりあなたナルーシャ様に似てるわよ!」
「そうかな~? 自分じゃわからないよ! それに僕は男だからね!」
7体ある石像の中で顔の部分が壊されている石像があった。どうやら冥府神ハデスの石像のようだ。自然に壊れたのか、それとも意図的に誰かが壊したのかはわからない。僕達は地下につながる階段を見つけたので、そのまま階段を下りて行くことにした。
「痛ッ」
「大丈夫? シルバー!」
「うん。リリー! この下からものすごく強い力を感じるよ!」
「私は何も感じないわよ!」
下に降りていくと、見たこともない巨大な機械がたくさん並んでいた。その機械からは何本も管が出ていてすべてが同じ方向へと伸びている。僕とリリーはその管をたどって奥へと進んだ。すると、巨大で強固な金属の扉があった。
「この扉、押しても何しても開かないわよ! 魔法で壊していい?」
「いいけど建物に影響が出ないようにね。」
「わかってるわよ! シルバーは心配性なんだから! 私、そんな間抜けじゃないからね!」
「はいはい。」
リリーが手から眩しい光線を放つ。だが、扉には傷一つ付かない。
「ダメだわ!」
僕は魔眼で扉を調べた。すると、この扉はミスリルどころではない。僕の知らない強固な物質で作られている。
「この扉は僕の魔法でも無理だよ。」
「なら、どうするの?」
「ここから出入りしていたんだから、どこかに扉を開ける装置があるはずだよ。」
今度はリリーも魔眼で調べた。
「シルバー! これじゃない?」
リリーが指さした先には壁と同化して何も見えないが、確かにボタンのようなものがある。僕はそのボタンを押した。すると、扉がゆっくりと開き始める。
「ギギギギ」
中から赤い光が漏れ始めた。
「リリー! 目に気を付けて! この光はまずいよ! 結界を張って!」
「そうね。」
僕達は自分に結界を張って中に入った。中には巨大な機械があり、すべての管がその機械へとつながっていた。そして、天井からその機械に向かって魔王城の柱よりも太い管が伸びている。その中心には真っ赤な球体があった。
「これ何かしら?」
リリーが話しかけてきたのと同時に、僕の身体が真っ赤な球体から放たれた赤色の光に包まれていく。
「シルバー! シルバー!・・・・・」
リリーの声がだんだん遠くなっていく。そして僕の意識は途絶えた。
「久しぶりね。アンドロメダ!」
優しい女性の声に呼ばれて僕が目を覚ますと、目の前にはナルーシャ様がいた。
「僕は一体?」
「私がここに連れてきたのよ。」
「ナルーシャ様がですか?」
「そうよ。あなたに話しておきたいことがあってね。」
「僕もナルーシャ様に聞きたいことがあるんだけど。」
「あら、何かしら? もしかしたら勇者達の事かしらね?」
「はい。」
ナルーシャ様はすべてをお見通しのようだ。
「わかったわ。その件も踏まえて話すわね。」
ナルーシャ様の話だと。この世界で魔法が使えるのは、その素となる魔素があるからだ。だが、エネルギーになりうるのは魔素だけではない。魔素の数千億倍以上に存在するのがダークエネルギーと呼ばれるものだ。この建物は世界のダークエネルギーを回収し、実用化するための装置らしい。このエネルギーは魔素ほどの威力はないが、それを圧縮することで魔素を遥かにしのぐエネルギー源となる。このエネルギーを悪用するものが現れれば、この世界ごと消滅させることも可能なのだ。
「シルバー! あなたの身体に異変が起きたのはこのエネルギーが原因なのよ。このエネルギーは、本来創造神様や我々神々が使用するエネルギーなの。我々神々は、このエネルギーを神力に変えて様々なものを創造しているのよ。」
「でも、オレは神ではありませんよ。」
「そうね。今はね。」
「えっ?! どういうことですか?」
「まっ! いいわ! それより、この古代遺跡をまるごと消滅させてくれるかしら?」
「どうしてですか?」
「この古代遺跡は世界にとって危険なのよ。太古の戦乱を思い出してごらんなさい。」
確かにそうだ。あの古代兵器は最強魔族のブラッドやセリーヌさえ苦戦した。やはり、ナルーシャ様の言う通り、この古代遺跡は消滅させた方がいい。でも、こんな広範囲の者をどうやって消滅させればいいんだろう。
「僕にはそんなことできませんよ。」
「そんなはずはないでしょ? あなたはアンドロメダなんだから。自分の記憶を辿ってみなさい!」
僕は自分の奥深くに眠るアンドロメダの記憶を蘇らせた。すると、全身に力がみなぎってくる。しかも、頭の中には様々な魔法が浮かんできた。
「どう? できそう?」
「はい。やってみます。」
「そうよ。あなたなら絶対にできるわよ。」
「はい。」
「そうそう。勇者の件も話さないとね。因みにあの勇者達を召喚したのは私じゃないわよ。私も後から知ったのよ。」
「なら、誰が勇者達を召喚したんですか?」
「それは分からないわ。でも、丁度いいじゃない。あの勇者達を鍛えて、この世界の平和に協力してもらえば。」
僕は勇者達のことを何も知らない。その実力も、彼らの性格も。
「勇者達に会ってから考えます。」
「そうね。その方がいいかもね。もしかしたら、敵かもしれないものね。」
「敵ですか?」
「これ以上のことは話せないわ。時期が来たら話すわね。そろそろ時間のようね。頑張るのよ。」
目を覚ますとリリーの膝の上に頭が乗せられていた。
「気が付いたわね。シルバー!」
「うん。」
「ナルーシャ様に会ってたんでしょ?」
「どうしてわかるの?」
「だって、以前あなたがナルーシャ様に会ってた時に身体が眩しく光っていたもの。今回も同じだったのよ。」
「そうなんだ~。」
「それで、ナルーシャ様と何を話したの?」
「この遺跡ごと消滅させるように言われたよ。」
「やっぱりね。あの古代兵器もこの変な機械も危ないもんね。」
「この機械は世界を滅ぼしかねないんだって!」
「わかったわ。なら、急いでテキーラ達のところに戻りましょ。詳しい話はあとで教えてね。」
「うん。」




