港町ハベルのレジスタンス
僕達は、まず港町ハベルの近くまで来た。そこで最初にレジスタンスを探すことにした。だいたいの場所はスミスに聞いていたので、テキーラ達が案内してくれる。しばらく森の中を歩いていると、目の前には竪穴があった。穴に入って行くと、中は真っ暗で何も見えない。心配になったリリーがテキーラに聞いた。
「テキーラ! 本当にこの穴の中なの?」
「そうです。この穴は、王城からの逃げ道になっているんです。」
「真っ暗で何も見えないわ。」
『ライト』
僕達が魔法を詠唱すると、前方に光の玉が現れた。穴の中の状況が見えてきた。穴の中を進んで行くと通路が二手に分かれた。気配感知で探ってみると、左側から複数の人の反応がある。僕達は左の通路を急いだ。
「シルバーさん。私が城にいた時にはこっちの通路はありませんでした。」
すると、リリーがテキーラに言った。
「なら、テキーラ達がいなくなった後で誰かが掘ったんじゃない?」
気配感知からは悪意は感じられない。レジスタンス達の可能性が高い。僕達が先を進んで行くと頑丈な鉄の壁があった。恐らくどこかにこの扉を開く装置があるはずだ。魔眼で見てみると、右側の壁に不自然な突起がある。それを押すと大きな音を立てて扉が開いた。
「ガガガッ」
「中に入るよ。」
「うん。」
リリーが握りしめている手に力が入る。前方から明かりが見えてきた。人間の話し声も聞こえてくる。
「誰かいるみたいね。」
明かりのある場所まで行くと、そこにいた人達は驚いた様子で剣に手をかけた。
「貴様らは何者だ?」
すると、テキーラが前に出て言った。
「私はガリア王国の第2王女エリザベトです。」
「ま、まさか、本当か?」
テキーラは首にかけてある王家の紋章をみんなに見せた。
「間違いない! 本物だ!」
「信じてもらえましたか? ここの場所についてはスミスに聞いてきました。」
全員がテキーラに片膝をついた。
「みんな立ってください。私も一国民として帝国と戦っています。協力して帝国の兵達を追い出しましょう。」
すると、全員が立ち上がり、リーダーのユーサが僕達のところにやってきた。
「俺はここのリーダーをしているユーサです。王女様、よくご無事で。」
「ええ。ここにいるシルバーさんとリリーさんに何度も助けていただきました。」
するとユーサが僕達を見た。
「確かのこの2人の少女達から、かなりの闘気を感じます。」
僕もリリーも魔力や闘気が漏れないようにしている。だが、ユーサは僕達の闘気を感じ取った。もしかしたら、ユーサはかなり強いかもしれない。でも、僕は男なんだけど。
「早速ですが、王女様にご報告があります。」
「報告ですか?」
「はい。此方にどうぞ!」
ユーサの案内で奥に行くと、目の前には地下都市のような光景が広がっていた。その光景を目にした瞬間、何故か強烈な頭痛に見舞われた。
「どうしたの? シルバー!」
「な、何でもないさ。」
「何でもないことないでしょ! 顔が真っ青よ!」
この景色は僕が魔王アンドロメダと呼ばれていた時に見たことのある風景だ。確か、ここには人族達が他種族を攻めるための兵器工場があったはずだ。
「王女様。どうやらここは古代の遺跡のようなのです。」
「そうですね。でも、この建物は何? 私達の街と様子が違いすぎるわ!」
「はい。この時代の文明は今の時代よりも進んでいたように思います。こちらをご覧ください。この街では魔石に頼らずに街に明かりをつけていたようです。それに、どういう仕組みかわかりませんが、井戸がないのにすべての家で水が出るようになっています。」
「本当ね。」
そして、古代の街の外れにある巨大な建物の前に来た。
「こちらの建物ですが、どうやら古代の武器を作っていたようなんです。この中の武器を使えば、帝国など簡単に撃退することができます。」
僕達が建物の中に入ると、様々な武器があった。間違いなく古代の兵器だ。僕達魔族が人族との戦いで大苦戦した兵器もある。僕は、思わず言った。
「ここにある武器は古代兵器だよ。恐ろしい武器さ。これが世の中に復活すると、再び世界に大混乱が起きるよ。」
「お言葉ですが、この兵器は世界を混乱させるのでなく、悪を打ち倒すために使用するつもりでいるんですよ。」
確かに、強力な兵器があれば敢えて戦いを挑もうとする国はないだろう。だが、その技術は必ず漏れる。そうなれば、世界の国々がこぞって古代兵器を作ることになるだろう。そして、再び世界中で悲惨な戦争が始まるのだ。
「兵器を作る人はみんな同じことを言うんだよね。でも、実際には技術がどんどん広まって、世界中で大量破壊兵器の戦争が始まるのさ。」
ユーサは、僕の言葉が気に入らなかったのだろう。僕を睨みつけてきた。
「シルバーさんは王女様の恩人です。ですから、強くは言いたくないのですが、シルバーさんの発言はまるで、太古の戦争を経験したかのような言い回しです。何故でしょうか?」
僕は何と答えようか悩んだ。僕がアンドロメダの生まれ変わりだと伝えれば簡単だが、恐怖の象徴である魔王アンドロメダが復活したとなれば、世界中が大混乱になるだろう。
「あなた何言ってるの? シルバーが知っていて当然じゃない! シルバーはナルーシャ様からこの世界の平和を託されたのよ!」
「それは本当ですか?」
すると、テキーラが言った。
「ユーサさん。リリーさんの言ってることは真実よ。あなたも知っているでしょう? アマゾル大陸の混乱やユーフラ大陸の混乱を。」
「はい。アマゾル大陸では2つの大国が滅んで、新たに共和国ができたと聞いています。」
「それって、シルバーと私がやったのよ!」
「信じられません! まさか2人だけでそんなことができるなんて。」
ユーサはどうしても信じられないようだ。
「なら、ちょっと後ろに下がってくれるかな?」
僕の言葉で、テキーラをはじめ全員が後ろに下がった。そして、僕は少しだけ魔力を解放する。すると、一気に空気が冷え、壁がギシギシと音を立て始めた。僕の周りには漆黒のオーラがどんどん溢れ出る。僕にとってはほんの僅かな魔力の解放だが、テキーラ達にとっては凄まじい力を感じたようだ。
「シルバー! もういいんじゃない?」
リリーに言われて周りを見ると、全員が地面に座り込んでしまっている。全員が顔面蒼白状態だ。
「どうかな~? 信じてもらえたかな~?」
「は、はい! 間違いなく、あなた様は使徒様です!」
“別に使徒じゃないんだけどな~。”




