リリーが怒った!
僕は、作戦通りゲルマ子爵のもとに出向き、街の郊外に出兵させることに成功した。そこで、僕もみんなのいる場所まで転移で戻った。するとリリーが聞いてきた。
「シルバー! どうだった?」
「ゲルマ子爵が兵士を連れてすぐにやって来るよ。」
僕が体のあちこちを気にしているのを見て、リリーが心配そうに聞いてきた。
「ありえないと思うけど、ゲルマ子爵に何かされたの?」
「うん。あいつ僕のことを抱きしめてきたよ。気持ち悪いな~!」
リリーの身体から再び闘気が出始めた。
「リリー! 僕は大丈夫だから! 落ち着いてよ!」
「これが落ち着いていられる?! あの下種が私のシルバーに触れたのよ! あいつは細切れにしてオークの餌にするわ!」
僕達の周りにいた人達が完全に怯えている。
「テキーラ! ベータ! あなた達はそこで見ていなさい! 私があいつらを全員始末するから。」
すると、スミスが言った。
「リリーさん。無理ですよ。相手は300人いるんですよ。しかも、中には特殊訓練を受けた精鋭部隊もいますから、お一人では不可能です。」
「大丈夫よ。あなた達も手出し不要だからね。今回ばかりは我慢できないわ!」
なんかリリーが怖い。僕が原因なのはわかるけど、今後はなるべくリリーを怒らせないようにしよう。
しばらくして、街の方から馬の鳴き声が聞こえてきた。そして、土煙が上がっている。どうやら、ゲルマ子爵が兵士達を連れてやってきたようだ。僕達は1か所に集まってその様子を見ている。僕達の50m手前まで来て兵士達が止まった。そして、大きな声で話しかけてきた。
「ここがお前達の墓場だ! 一人残らず殺してやる!」
すると、リリーが前に出て兵士達に向かって歩いていく。その体からは信じられないほどの闘気が溢れ出ていた。
「やれー! 殺せー!」
リリーに向かって一斉に矢が放たれる。だが、リリーの前で矢がすべて地面に落ちてしまう。リリーは自分に結界を張っているのだ。一列目の兵士達がリリーに襲い掛かった。
『光斬撃』
リリーが剣を振ると、突撃してきた兵士達の身体が上下2つに分かれた。
「ギャー」
その様子を見て、兵士達は怯え始めている。それでも、後ろから兵士達に指示が出る。
「殺せー! 何をしている? 相手は女一人だ! 全員でかかれー!」
すかさずリリーが魔法を詠唱する。
『ファイアーアロー』
すると、上空に無数の炎の矢が現れ、兵士達目がけて飛んで行く。
「グワー」
「助けてくれー!」
その隙にリリーは剣を抜いて、次々に兵士達を切り倒していく。辺り一面地獄絵図だ。胴体が切り離された兵士の死体が散乱していた。ここまでかかった時間は僅か10分だ。残すはゲルマ子爵だけになった。
「た、た、助けてくれ! 金ならいくらでもやる! 見逃してくれ!」
「あなた! 私の大切なシルバーに触れたそうね!」
「シルバー?」
ここで僕が前に出た。
「お、お前は?」
「因みに僕は男だからね!」
「男?!」
ゲルマ子爵が最後の言葉を言った瞬間、リリーがゲルマ子爵の首を撥ねた。そして、僕とリリーはみんなのところに戻った。テキーラもベータも全員が茫然としていた。リリーがニコニコしながら声をかけた。
「どうしたの? みんな!」
「リリーさんって強かったんですね?」
「まあね。でも、私なんかまだまだよ。上には上がいるからね。」
恐らくセリーヌとブラッドのことを意識しているのだろう。
「スミスさん。この街はこれからが大変だよ。みんなで力を合わせてしっかり復興して行かないとね。」
「はい。わかりました。」
僕は兵士達の死体をそのままにしておけないので、火炎魔法ですべて焼いて灰にした。
「さて、今日も魔王城に戻ろうか?」
「はい。」
僕とリリーとテキーラ、ベータは再び魔王城に戻ることにした。訓練場に行くと、ガンマが竜人族達と一緒になって訓練に参加している。丁度、訓練も終了の時間のようだ。
「シルバーさん。戻ってこられたんですか? 姉御もよくご無事で。」
「ガンマ。私の心配をするより自分の心配をしたらどう。ボロボロじゃない。」
「はい。でも、充実していますから。」
「ガンマ。その体じゃ、明日の訓練に参加できないだろ。こっちに来い。」
「はい。」
オレはガンマにヒールをかけた。ガンマの身体が一瞬光ったと思ったら、手足の傷が治っていた。
「ありがとうございます。なんか身体が楽になりました。」
「良かったわね。」
「ガンマの兄貴。あんまり無理するなよ。」
「わかってる。ベータ。お前こそしっかり姉御を守れよ。」
その後みんなで一緒に食堂に行ってご飯を食べた後、それぞれが風呂に入ってゆっくり休んだ。リリーは自分の部屋があるが、いつも通りオレの横で寝ている。そして翌日、ガンマを残して再びオレ達は帝国に戻った。
「テキーラ。この先なんだよね。港町ハベルは?」
「そうです。元々ハベルはガイア王国の王都だったんです。」
「もしかして、今は帝国のミズーリ侯爵が治めてるの?」
「誰が治めているのかわかりません。私達は帝国が攻めてきたときには、すでにこの街を離れましたから。」
「そうなのか~。」
「でも、どうしてですか?」
するとリリーが横から説明をした。
「私とシルバーがエルフ族の国に行った話はしたよね。」
「はい。」
「その時に、人族がエルフ族を攫いに来てたのよ。その首謀者がミズーリ侯爵なのよね。」
「そうだったんですか?」
「僕達は、まず帝国内のエルフ族を解放して、その後世界の平和を乱す存在を始末するんだよ。それが皇帝であってもね。」
「私達にできることがあれば是非協力させてください。」
「そうだね。その時はお願いするね。」
「シルバー! 潮の香よ。」
「ハベルがすぐそこですから。」




