テキサルの街のレジスタンス
ロンがその場から姿を消した後、城内に入ってオレの執務室に行った。するとベータが正直に言ってきた。
「シルバーさんは本当に王だったんですね。」
「当たり前じゃない。私達が嘘を言うわけがないでしょ。」
「そうですが、シルバーさんがあまりにフレンドリーだったので、信じられなかったんです。」
ガンマは周りをキョロキョロ見渡している。
「姉御。この城に飾られている武具はどれも超一級品ですよ。」
ガンマの疑問に答えるように言った。
「ああ。それはドワーフ族に作ってもらったものだ。」
「ドワーフ族にですか?」
「この前話したでしょ! 私とシルバーでドワーフ族の内紛を解決したのよ。そのお礼よ。」
「そうだったんですか~!」
3人が羨ましそうに飾られている剣を見ていた。なんか『欲しいオーラ』が溢れ出ている。
「3人の剣にはオレの魔法が付与してあるから、ここに飾られてる剣よりは使いやすいと思うけど。」
「そうですね。シルバーさんのお陰で、なんか実力以上の力を発揮できます。」
しばらくして、オレ達は食堂に行った。夕飯だ。席に座るとメイド達が料理を運んでくる。鬼人族、アラクネ族、天狗族、バンパイア族の女性達だ。全員が人化しているため、超絶美女ばかりだ。人族が魔族の女性を奴隷にしたがる理由がわかる。ベータとガンマは頬を赤くして見とれていた。
「シルバーさんが羨ましいです。」
「どうして?」
「だって、いつもこんな美女達に囲まれているんですよね?」
メイド達もベータの『美女発言』が嬉しいようで、ニコニコしていた。
「お褒めいただいてありがとうございます。」
鬼人族のメイド長マリーナが挨拶と料理の紹介に来た。
「お客様。私達はメイドです。魔王様に直接忠誠を尽くせることを誇りに思っています。ですが、あくまでもメイドなんですよ。魔王様にはリリー様がおられますからね。」
マリーナの発言にリリーが喜びを隠さない。周りがオレと自分との関係を意識してくれているのが嬉しかったようだ。食事が終わって、お茶を飲んで寛いでいるとガンマが突然言い出した。
「シルバーさん。俺、ここで修行させてもらえませんか?」
「いいけど。どうして?」
「はい。俺、帝国の武闘大会に参加したいんです。武闘大会で優勝して、帝国の連中にガリア王国の意地を見せたいんです。」
「ガンマ! 可愛そうだけど、優勝はできないわよ。」
「リリーさん。どうしてですか?」
「だって、私が出るもん。」
「え———!!!」
オレも何も聞いていない。
「いいでしょ? シルバー!」
「別にいいけど。」
恐らくリリーは3人の勇者の実力を知りたいのだろう。まっ、勇者がリリーに勝てるとは思わないけどね。
「じゃあ、明日の朝出発するから。ゆっくり休むように。」
「はい。」
翌日、ガンマのことをゲーテに頼んで、僕とリリーとテキーラ、ベータは帝国内に再び転移した。当然、僕は再び少女のような顔立ちになっている。
「次の街までどれくらいかかるのかな~?」
「そうですね~。お昼ごろには次の街テキサルに到着できると思いますよ。」
「ふ~ん。」
街が近づくにつれて畑が見えてくる。同時にそこで畑仕事をする人々の姿も見え始めた。だが、どの人達もあまり元気がない。中にはかなり痩せている人もいる。僕達が街の入り口まで来ると、そこには兵士達が大勢いて厳重な警戒がなされていた。
「お前達はどこから来た?」
「帝都バミューダシティーから来ました。」
「何の用だ?」
「この先の港町ハベルに行きたいんですが。」
「そうか。入ってよし。」
僕達は全員がイグドラ帝国の出身ということにした。街の中に入ると、兵士達が大勢いて一般市民達はおどおどしながら歩いている。開店している店もあったが、お客がいるようには思えない。すると、遠くから大きな声が聞こえてきた。
「出たぞー! レジスタンスだー!」
兵士達が一斉に声のする方向へ走っていく。僕達も様子を見に急いだ。すると、5人組の男達が少女を守るようにしている。その周りを兵士達がとり囲むようにしていた。
「貴様達はガリア王国の生き残りだな? 見事に罠にかかりやがって!」
上官らしき男が前に出て言った。すると、男の一人が大声で叫んだ。
「卑怯だぞ! 正々堂々と戦え!」
「卑怯もくそもあるか! ゲルマ子爵様の命令だ! 全員殺せ! 女は殺すなよ! 後で可愛がってやるんだからな!」
テキーラとベータが剣に手をかけている。今にも突撃しそうだ。
「テキーラ! ベータ! ちょっと待って!」
「どうしてですか?」
「僕に考えがあるからさ。」
僕は目くらましの魔法を発動した。
『シャドウミスト』
あたり一帯に急に黒い霧が出始めた。霧がどんどん濃くなっていく。
「みんな! 彼らを助けるよ。」
僕はリリー達を連れて彼らのもとに転移した。さらに、レジスタンスの5人と少女を連れて郊外に転移した。兵士に囲まれていた場所から突然郊外に来たことに、レジスタンスたちも少女も目を丸くして驚いている。
「いったい何が?」
「ここは街の郊外だよ。もう安全だから。」
レジスタンス達が警戒して剣に手をかける。すると慌ててテキーラとベータが前に出た。
「おい! 待ってくれ! シルバーさんはお前達を助けてくれたんだぞ!」
「お前達は何者だ?」
すると、テキーラが首から下げているペンダントを見せた。そこにはガリア王国の紋章が描かれていた。
「もしや、あなた様は王族の方ですか?」
「私はガリア王国の第2王女エリザベトです。シルバーさん達に協力してもらって、国民を帝国から解放するために戻ってきました。」
すると、レジスタンス達も少女も片膝をついて挨拶した。
「姫様~。よくぞ御無事で。」




