魔族の強さ
イグドラ帝国に入った僕達は様々な罠を潜り抜け、旧ガリア王国の街に行った。だが、そこは無残に殺された人々や兵士達の怨念が渦巻いていた。そこで、僕が魔法で浄化し、街全体を森に変化させた。その後、テキーラ、ベータ、ガンマを連れて一旦魔王城に帰ることにした。
「さて、一旦魔王城に戻ろうか?」
3人の反応が凄い。
「ま、ま、魔王城に?!」
ここでベータが怯えた様子で言った。
「俺達、魔王城に連れていかれるんですか?」
「別に強制じゃないよ。でも、ここで野宿するのとどっちがいい?」
テキーラが間髪入れずに答えた。テキーラは魔王城に興味津々だ。
「魔王城に連れて行ってください!」
ベータはどうも魔族を怖がっているようだ。
「姉御。いいんですか?」
「だって、魔王城なんて行きたくても行けないわよ! せっかくのチャンスじゃない!」
「でも、怖い魔族がたくさんいるんですよね?」
すると、ガンマが違う意味で興味を示してきた。さすが戦闘狂だけある。
「俺も行きたいです! 強い魔族に稽古つけてもらいたいです。ダメですか? シルバーさん。」
「別にいいけど。」
ここで、リリーが3人に言った。
「あなた達、何か誤解しているようだけど、私もシルバーも魔族なのよ。魔族は怖いとかってイメージ持ってるかもしれないけど、基本的に人族と同じなんだからね。」
「そうなんですか?」
ベータが少し安心したようだ。僕とリリーは3人を連れて魔王城に転移した。
「シルバーさん。姿が違うようだけど?」
「シルバーはアスラ魔王国に帰って来ると、精悍な男性の姿に戻るようにしているのよ。」
「そうなんですね。」
テキーラが何か嬉しそうだ。
「もしかして、目の前のこれが魔王城ですか?」
「ああ、そうだ。太古の昔に存在した物と同じ状態に作り直したのさ。」
「ということは、魔王城は一度なくなったんですか?」
「そうさ。だからオレが復元したんだよ。」
「シルバーさんがですか?」
「そうよ。シルバーが魔法で復元したのよ。」
「やっぱりシルバーさんは凄いですね?」
それから、どうしてもガンマが訓練場を見たいと言ったので、軍部大臣のロンがいる訓練場に向かった。向かったといっても、訓練場は魔王城に併設されているので、歩いて10分ほどの場所にある。
「ここが訓練場だ。ちょうど、兵士達が訓練をしているから、見るといいさ。」
すると、ロンがオレに気付いてすぐに駆け寄ってきた。
「魔王様。お帰りだったんですか?」
「ああ、この3人がどうしても魔族の訓練を見たいというので連れてきたんだ。」
「そうですか。」
ロンが3人を見る。竜人族のロンに睨まれて、3人の顔面から血の気が引いていく。するとリリーが3人に言った。
「大丈夫よ。ロンもトロルドと同じで優しいから。そんなに怖がらなくてもいいのよ。」
「は、はい。」
オレが見学に来たということで、ゴーレムを使用しての訓練を始めるようだ。1体のゴーレムに10人の竜人族で戦いを挑む。その戦いぶりは凄まじい。竜人族の動きが速すぎて3人には見えていないようだ。だが、竜人族達が吐き出す炎のブレスは流石に3人にも見える。恐らく、過去に見たこともないような攻撃だろう。
「あのゴーレムはあれだけの攻撃を受けて、なぜ倒れないんだ?」
ガンマが率直な感想を言った。すると、リリーが言った。
「あのゴーレム1体で帝国を滅ぼすことができるわよ。」
「それほど強いんですか?」
「そうよ。魔族の最強の戦士達が束になって掛かっても、倒すのは簡単じゃないわね。」
今度はベータが不思議そうに言った。
「そんなに強いゴーレムがいたなんて。でも、どうやって命令に従わせてるんだろう? それほど強いゴーレムなら暴れ出しても不思議じゃないぞ?」
「あれはシルバーが作ったのよ!」
「え——————!!!」
「魔族の戦闘力をあげるのに必要だからだ。」
「ということは、シルバーさんはあのゴーレムよりも強いってことですよね?」
すると、テキーラがベータの頭を叩いて言った。
「ポカッ! 当たり前じゃない!」
「そうね。シルバーなら一瞬でしょうね!」
それまで、少し口調が荒かったガンマが言ってきた。
「シルバーさん。俺を弟子にしてくれませんか。」
ガンマの突然の発言にみんなが戸惑った。
「構わないが一つ条件がある。あのゴーレムに傷をつけることが出来たら弟子にしてやるよ。」
「わかりました。」
ガンマは背中の大剣を抜いて、ゴーレムに挑戦するようだ。竜人族達がロンの指示で一斉に訓練場の端にどいた。ガンマがゴーレムの前まで来た。まだ、何もしていないのにガンマの額からは汗が流れている。しかも全く動こうとしない。そして、10分が経過したとき、ガンマは大剣を手から落とした。
「無理です。一歩を踏み出すこともできません。」
「そうか。ならばオレの弟子なるにはまだ早いということだ。ガンマ。時間はあるんだ。修行に励め。」
「はい。」
するとロンがやってきた。
「魔王様。先ほどの話ですが、ゴーレムに傷をつけることができれば、私でも魔王様の弟子にしてもらえるのですか?」
「ああ、そうだ。だが、ロン。お前は十分に強いと思うが。」
「いいえ。私よりもセリーヌやリリー、それにブラッドがいます。私などまだまだです。私ももっと強くなりたいのです。」
「そうか。ならば、さらに強いゴーレムを作ってやろう。それで、修行すればいいさ。」
すると、オレ達のすぐそばにブラッドがいきなり現れた。テキーラ達3人は驚いて開いた口が塞がらない。
「ブラッド。どうした?」
「今、魔王様から聞いてはならない言葉を聞きましたので。」
「何がだ?」
「申し訳ございませんが、このゴーレム以上に強いゴーレムはおやめください。もし、暴走したら我々では抑えることができませんので。」
「そうか。なら、ロン達幹部の訓練はどうするのだ?」
「それならよい方法があります。5年に一度の闘技大会を毎年行いましょう。お互いに切磋琢磨すれば、今よりも強くなれると思いますので。」
「なるほどな。さすがはブラッドだ。ならば、毎年闘技大会を開催すると国中に伝えてくれ。」
「ハッ」
ブラッドから発せられる途轍もない闘気に、3人は圧倒されて言葉を発することさえできない。
「い、い、今の方は?」
するとリリーが言った。
「彼はブラッド。この国の宰相よ。シルバーを除いて魔族最強の一人ね。」
ベータは正直すぎるほど正直だ。
「怖かった~! 俺、寿命が10年は縮まったよ。」
「俺もだ! 彼が現れた瞬間に死を覚悟したぞ!」
「ロン。これが強さの秘密だ。ブラッドにあってお前にないもの。それは闘気だ! ブラッドは数千年生きてきたんだ。経験が違うんだ。ならば、ロン。お前は何をすればいいのかわかるだろう。」
「はい。ブラッドに匹敵する強さを持った存在に修行を付けてもらえばよいと思います。」
「その通りだ。」
するとリリーが言った。
「世界中でブラッドに匹敵する存在って。もしかしてセリーヌのこと?」
「確かにそうだ。だが、もう一人いるんだよ。」
「だれ?」
「エンシェントさ。」
「エンシェント?」
「ああ。古代竜エンシェントだ。」
すると、テキーラが言った。
「古代竜って、魔王アンドロメダとともに太古の大戦を終わらせたと言われる神獣ですよね? それって作り話じゃないんですか?」
「いるさ。そうだろ? ロン!」
「はい。よくご存じで。」
「エンシェントはオレの友人だからな。」
「そうでしたね。」
「ロン。しばらくエンシェントのところに行ってくるがよい。」
「よろしいのですか?」
「ああ、大丈夫だ。何かあったらブラッドがオレに連絡をくれるからな。」
「ありがとうございます。では、早速エンシェント様のところに行かせていただきます。」




