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魔王シルバーの異世界冒険  作者: バーチ君
イグドラ帝国
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イグドラ帝国に入る!

 僕達はノースホワイトの街の復興状況を確認して、イグドラ帝国へと出発した。相変わらずリリーは僕と手をつないでいる。テキーラと、ベータ、ガンマは後ろについてきている。



「シルバーさん。そろそろ国境です。本来ならネーデル王国の砦があったはずです。」



 僕達が進んでいくと、砦というよりもボロボロになった壁だけが残っていた。戦闘のすさまじさを物語っている。恐らく、ネーデル王国の兵士達が死に物狂いで死守しようとしていたのだろう。



「シルバー! なんか心が痛いわ!」


「仕方ないよ。この世界に戦争がある以上は。」


「早く戦争のない世界にしたいわね。」


「うん。」



 砦を超えていよいよイグドラ帝国に入った。イグドラ帝国側には砦も検問もなかった。だが、国境を超えるとすぐに森へと入って行った。道が二手に分かれている。下を見ると、右側にはほとんど人が通った形跡がない。逆に左側は大勢が通ったらしく踏み固められていた。



「どっちに行くの?」



 すると、テキーラが言った。



「もしかすると、どちらかの道が罠なのかもしれません。帝国の連中はありとあらゆるところに罠を仕掛けますので。」



確かに怪しい。普通なら、人が踏み固めた方に行きたくなる。僕はわざと左側の道を選んだ。しばらく進むとやはり罠があった。



「みんな止まって!」



 僕が枯れ枝を投げると地面の横から槍が突き出てきた。



「危なかった~! 俺達だけなら間違いなく大けがしてたぜ!」



 ガンマの言葉は正直な感想なのだろう。でも、僕とリリーには魔眼がある。罠を見抜くのは容易なことだ。しばらく進むとまた罠があった。今度は、木の枝を投げると縄がネットのようになっていて、下から持ち上げるようになっていた。



「姉御。本当にこの道は罠だらけですね。」


「そうね。帝国の用心深さがわかるわね。」



 その後も矢やナイフが飛んでくるような罠もあったが、僕達はすべての罠を回避して進んだ。



「やっと出たわね。シルバー!」


「うん。もう、罠はないよ。」


「良かったです。シルバーさん達がいなかったらどうなっていたことか。」



 しばらく歩いて行くと、今度は道が3つに分かれていた。左がイングス聖教国、真ん中の道が帝都バミューダシティー、右がテキーラ達の出身地の旧ガリア王国だ。



「武闘大会までまだ1か月あるから、テキーラ達の故郷に行こうよ!」


「本当ですか?」


「うん。僕も見てみたいしね。それに、国民達が、悪政に苦しめられているようだったら、なんとかしないといけないでしょ。」


「ありがとうございます。シルバーさん。」



 僕達は右の道を行くことにした。3人は何度も通ったことがある道らしく、懐かしんでいた。



「シルバー! なんか寒気がしない?」


「そうだね。空気が汚れてきてるね。多分、これって怨念だよ。」



 目の前には街が見えているが、街に近づくにつれて寒気がひどくなる。



「テキーラ。この街って大勢死んだの?」


「はい。国境沿いの街でしたから、兵士達だけでなくかなりの住人が殺されたと思います。」


「なるほどね。それでだね。」


「何がですか?」


「この辺り一帯にものすごく怨念が溜まっているんだよ。多分、殺された人達の魂が浄化されないでいるんだよ。」

 

「彼らはどうなるんですか?」


「死霊系の魔物になったりゾンビになったりする者達が現れるだろうね。」


「何とかならないんですか?」



 するとリリーも言ってきた。



「シルバー! 何とかできないの?」



 できないことはない。だが、最初に街の様子を見て確認したい。



「とりあえず、街に入ってみようか。その後で対処するよ。」


「はい。」



 僕達は、旧ガリア王国とイグドラ帝国との国境の街に立ち寄った。街の中に入ると、人の姿はなかった。壊れた家だけが残されている。ところどころに白骨化した死体もあった。恐らくこの街の住人たちの亡骸だろう。



「どうやらこの街で生活している人は誰もいないようだね。」


「そうね。みんなどこかに逃げたんでしょうね。」


「あの高台に移動するよ。」



 僕が指さす場所に街が一望できる高台があった。僕達はそこまで急いだ。



「じゃあ、始めるよ。」


「シルバーさん。お願いします。」



 僕はいつになく魔力を解放する。僕の身体からは黒ではなく、光り輝くオーラが溢れ出た。そして、背中には純白の翼が見え隠れしている。



『大精霊達よ! この死者の街を浄化してくれ! 死者が未練を残さないように建物も亡骸もすべてを自然にかえしてくれ!』



 すると、地面がところどころ割れて、家屋も含め、その場のすべての物が割れ目に落ちていく。そして、後には何も残らない更地になった。その瞬間、晴れ渡っている空から光の雨が降り注ぎはじめた。その雨は慈愛にあふれた雨だった。テキーラ達の目から涙が溢れ出る。光の雨が地面にしみ込むとそこから植物が芽を出し始め、30分もしないうちに、荒れ果てた街だった場所が緑あふれる森へと変わった。



「奇跡だ!」


「俺は夢を見ているのか?」



 3人が驚いた様子で眺めていた。



「もう、これで大丈夫だよ。」


「ありがとう。シルバーさん。でも、シルバーさんは魔族ですよね?」


「そうだけど。どうして?」


「以前も、今日も、シルバーさんの身体から光が出るのが見えたんです。それに、白い翼もです。」



 すると、リリーも言った。



「私も聞きたかったのよ。シルバーは何か知ってるの?」


「リリーだって本来は白い翼だったと思うよ。堕天使族なんだから。」



 すると、テキーラ達が驚いた。



「えっ?! リリーさんって堕天使族だったんですか?」


「そうだけど。どうして?」


「堕天使族と言えば、元々神族のようなもんなんでしょ?」



 僕がテキーラの質問に答えた。



「そうだよ。天使が魔素を吸いすぎて魔族に変化したんだよ。」



 ここで、リリーが興味津々に聞いてきた。



「どうして魔素を吸いすぎたの?」


「天使や神は本来神界から地上を観察する存在なんだ。でも、太古の昔にどうしても地上に降りて地上世界を平和にしたいという天使がいたんだ。その結果、この地上で魔素を大量に吸収することになったのさ。」


「シルバーはどうしてそんなこと知ってるの?」



 言われてみればそうだ。なぜ僕がそんなことを知っているのだろう。僕が魔王アンドロメダだった時よりもはるかに昔の話だ。



「僕にもわからないよ。でも、頭に浮かんできたんだ。」


「ふ~ん。それで、どうしてシルバーの背中に白い翼が出たの?」


「わからないけど、僕も堕天使族なのかもしれないね。」



 すると、リリーが喜びのあまり抱きついてきた。



「やっぱりね。シルバーも私と同じなんだね。」



 なんか違うような気もするが、そういうことにしておこう。


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