ダンジョンの街ピッツデリー
僕とリリーはギルドの薬草採取の依頼を終えて家に帰った。その日にあった出来事をローズおばあちゃんに話をした。セリーヌの名前を出した途端ローズおばあちゃんの顔色が変わった。
「お前達、セリーヌに会ったのかい?」
「うん。街でリリーが大男に絡まれたところを助けてくれたんだよ。」
「そうかい。」
「どうしたの? おばあちゃん。」
「ああ、そうか。セリーヌがいたのかい。」
「ローズおばあちゃん、知ってるの?」
「知ってるさ。セリーヌはわしの娘じゃからな。」
「えっ?! だって、私達と同じぐらいの年だったよ。」
「そりゃそうじゃろうよ。あの子は魔法の天才じゃからな。自分の時間を止めてるんじゃ。」
「そんなことできるの?」
「あの子ならできるさ。それ故、あの子は魔王不在の中、他の種族を人族達から守っているのさ。」
「どういうこと?」
「以前話をしたことがあるじゃろう。太古の昔に人族達が他の種族達を奴隷にしていた話を。」
「ええ。でも、それって昔の話でしょ!」
僕は焦った。太古に起こったという大戦争が、再び始まるんじゃないかと思ったのだ。
「ローズおばあちゃん。もしかして、また人族の中に他の種族を奴隷にしようとしている者達が現れたってこと?」
「そうさ。平和が続くと、人族という種族は欲望が強くなるようじゃ。金、権力、性に対して貪欲になるんじゃな。」
「僕達が魔族であることを隠しているのはそのせいなんだね。」
「そういうことじゃ。もし、わしらが魔族であると知られれば、人族達はこぞってわしらを捕まえようとするじゃろうな。特に、リリーは美人じゃからな。」
美人と言われてリリーがもじもじしている。
「美人だなんて! おばあちゃん、本当のこと言わないで! 恥ずかしくなるでしょ!」
いつの間にかリリーの機嫌が直っている。そして、ご飯を食べた後、お風呂に入ってすぐにベッドに行った。けど、僕はベッドで横になってもすぐに寝れなかった。
「リリー! 起きてる?」
「何?」
「セリーヌって、僕達が魔族だって知ってるのかな~?」
「多分ね。だって、魔法が得意なんでしょ? だったら、私やシルバーの魔力を感じ取ったはずよ。」
「そうだよね。もしかしたら、リリーを助けてくれたのも、草原であったのも偶然じゃないんじゃないかな?」
「どういうこと?」
「僕やリリーのことが心配で見守っていてくれたんじゃないかな~。」
「・・・・・」
その後、知らないうちに僕は寝てしまったようだ。そして、翌日、リリーと再び街に行った。街を歩いていると何か視線を感じる。
「誰かに見られてるよ?」
「うん。私も気づいた。」
すると、ギルドの近くまで来た時に、後ろからセリーヌが話しかけてきた。
「また来たのか。お前達。」
「セリーヌおばちゃん。おはよう。」
わざとリリーがセリーヌを『おばちゃん』呼ばわりをした。
「俺は『おばちゃん』じゃないぞ! お前達と同じぐらいの歳なんだからな。」
そこで、僕がセリーヌに説明した。
「僕達、ローズおばあちゃんの孫なんだよ。」
「そうか。そういうことか。だが、俺のことは『セリーヌ』と呼べ。くれぐれも『おばちゃん』なんて言うな。いいな!」
「うん。」
「それで、ギルドに何しに来たんだ? また、依頼でも受けるのか?」
「今日はセリーヌに会いに来たんだよ。セリーヌは魔法の天才なんでしょ? 僕達に魔法や戦闘を教えて欲しいんだけど。」
すると、セリーヌは少し考えた。そして、真剣な顔つきで言った。
「なら、この近くのダンジョンでも行ってみるか? 実践訓練が一番だからな。」
「わかったよ。でも、ローズおばあちゃんに言ってからね。心配させちゃうからさ。」
「それなら大丈夫だ。俺がばあさんには使い魔で知らせておくから。」
僕達は街の東の森まで行って、そこからさらにダンジョンのある街まで飛翔して行った。セリーヌは飛翔能力も高く、僕とリリーはついていくのがやっとだった。
「ここがダンジョンに一番近い街ピッツデリーだ。」
ピッツデリーの街には冒険者のような恰好をした人達が大勢いた。中にはセリーヌと同じようにビキニアーマーの女性もいる。そうなると、当然酒場と武器屋、それに宿屋が多い。ところどころに日曜雑貨を扱う店もあるが数は少ない。
「これからどうするの?」
「ダンジョンに潜るとなると数日はかかるからな。まずは準備を整えるのさ。」
僕達は最初に市場に行った。市場にはたくさんの食料品が並んでいる。僕達がいつも行く市場よりも全然大きい。そこで、セリーヌが大量の干し肉を買い込んだ。
「セリーヌ。なんで干し肉ばっかり買うのよ。」
「ダンジョンの中では料理もできないだろうが。」
「あっ、そうか~!」
「リリーはやっぱり食いしん坊さんだね。」
「何よ! シルバーったら!」
次に日用品を買い込んだ。結構歩いてお腹が空いてきた。
「お前達、お腹は空かないか?」
するとリリーが大きな声で言った。
「この街には何か美味しいものでもあるの?」
「特にこの街だからというものはないさ。ただ、今日はもう遅いからな。晩飯でも食って、早めに宿に行って寝た方がいいだろう。」
オレ達は街の食堂に入った。この街には港があるため、魚介類が豊富だ。僕やリリーにとっては初めての食材も多い。2人はものすごい勢いで食べはじめた。
「シルバー! あなたのその大きな蟹、一人で食べきれないでしょ。私が一緒に食べてあげるわ。」
リリーは自分の料理だけでは足りないようで、僕の料理にまで手を出してきた。
「セリーヌ! この歯ごたえのいいものは何?」
「ああ、それはオクトと言ってな、足が8本ある生き物だ。旨いだろう!」
「うん。凄く旨いよ。」
「シルバー! 私にもそれ少し頂戴!」
「リリーは自分の料理があるだろ!」
「いいじゃない。少しぐらい。ケチ!」
「わかったよ。食べていいよ。」
セリーヌは2人の様子を羨ましそうに眺めていた。そして、その日、僕達は宿屋に泊まった。経費節約のため、僕とリリーは同じ部屋だ。




