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魔王シルバーの異世界冒険  作者: バーチ君
ネーデル王国
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ノースホワイトの解放(2)

 僕達はネーデル王国の最北端の街まで転移した。そこは、イグドラ帝国の侵攻を受け、完全に占領されていた。街の中には破壊されている家、燃やされた家があった。当たり前だが、開店している店は一軒もない。住人達は郊外の森から、隣町に逃げたようだ。だが、道端には兵士や街の人々の死体が転がっていた。



「イグドラ帝国の連中、やりたい放題やりやがったな。」



 ガンマの顔が怒りの表情だ。それもそのはずだ。彼らの祖国も同じような目にあったのだから。目の前に大きな屋敷が見えてきた。建物の周りには大勢の兵士達が集まっている。そして、こちらに向かって水魔法で攻撃してきた。だが、僕の作り出した炎には何の影響もない。しまいには、あきらめたのか兵士達が逃げ始めた。



「着いたよ。魔法を解除するから、油断しないでね。」


「わかったわ。」



 僕は魔法を解除した。すると、僕達を包み込んでいた炎が消えた。



「さあ、ここからが本番だ。」



 炎が消えたことで、兵士達が僕達を取り囲むように集まってきた。一番後ろから司令官と思われる男性が、部下を引き連れてやってくる。



「お前達は何者だ? 人間なのか?」



 リリーの表情が怒りの表情になっている。相当怒っている。

「あなたが知る必要はないわ。それよりも、この国から出て行く気はない?」


「皇帝アルカイック様の御命令だ。この国は我が帝国が占領する。」



 すると、テキーラが前に出て言った。



「ガリア王国を滅ぼしたのもアルカイックの命令なのか?」


「ああ、そうだ! お前達はガリア王国の生き残りなのか? あそこの国王は勇敢だった。最後までオレに戦いを挑んだんだからな。」


「父を殺したのはお前なのか?」


「父?! そうか? お前は第2王女のエリザベトか? 丁度いい! 探す手間が省けた!」



 すると、司令官は兵士達に言った。



「みなに告げる。こ奴らを殺せ! あの娘の首を取ったものには皇帝陛下が報奨金をくれるぞ! 殺せ!」



 兵士達が一斉に僕達に襲い掛かる。僕とリリーが前に出た。



「テキーラ! こいつらは僕とリリーで何とかするよ。テキーラ達は仇を。」


「死ねやー!」


「死ねー!」



 兵士達の攻撃をかわしながら、僕は剣を抜いて一振りした。すると、目の前の兵士達の身体が2つに分かれる。たった一振りで5人以上の兵士達が死んだのだ。兵士達の中に動揺が走る。



「こいつはバケモンか?!」


「あなた! 今、シルバーのことをバケモンとか言ったわよね!」



 とうとう我慢できなくなったのか、リリーの身体から真っ黒なオーラが溢れ出た。そして背中には漆黒の翼が現れた。



「こいつ、魔族だ!!!」


「魔族が出たぞ!!!」



 リリーに一斉に矢が放たれた。矢を放った者達に向けてリリーが魔法を発動する。



『ファイアードラゴン』



 リリーの手から出た炎が巨大なドラゴンへと変化していく。そして、炎のドラゴンは大きな口を開けて弓を持つ兵士達を飲み込んでいった。辺りには人の焼けるにおいが充満している。



「ヒ——!」


「バケモンだー!」


「助けてくれー!」



 目の前にいた兵士達が今はほとんどいない。司令官と彼を取り囲むように守っている兵士達だけが残っている。



「テキーラ! 後はあなた達の番よ!」


「リリーさん! ありがとう!」



 3人が司令官に近づいていく。だが、3人の前にガタイのいい兵士達が立ちはだかる。兵士達は3人を取り囲むように陣取った。僕とリリーは少し離れた場所から見ている。兵士の一人がテキーラに切りかかった。だが、テキーラが剣を振ると相手の剣が折れ、そのまま兵士の首をはねた。



「お嬢様育ちにしてはなかなかやるではないか。」



 司令官がテキーラを見下ろして言った。まだ、余裕で見ている。なんの警戒もしていないようだ。続いて、複数の兵士が3人に切りかかった。だが、ベータとガンマが前に出てそれを防ぐ。すると、兵士達の後ろから魔法の刃が飛んできた。



「シュッ」



 どうやら、兵士達の後ろに魔法を使えるものが控えているらしい。3人は何とか避けたが、ガンマの頬から血が流れた。3人の身体から闘気が溢れ出している。どうやら本気を出すようだ。3人を囲んでいた兵士達の顔色も面白いように変化していく。



「こいつら実力を隠してやがった!」



 すると、司令官が兵士達を鼓舞した。



「恐れることはない! 相手はたかが3人だ! かかれー!」



 兵士達が3人に突っ込んでくる。ここでガンマが大剣を地面に振り下ろした。すると、地面が大きく揺れて兵士達はふらついてよろめいている。そこに、ベータが剣を横一文字に振ると、最前列の兵士の首が胴体から離れて宙を舞った。後続の兵士達がさらに後ろから突撃してきた。



「姉御! ここは俺とベータに任せて、司令官のところへ!」


「わかったわ。」


「させるかー!」



 兵士の一人がテキーラに向かって行こうとした。だが、ガンマが剣を地面に突き刺すと、地面からたくさんの鋭い突起物が現れ、兵士達を串刺しにしていく。テキーラはそれを見ながら司令官のところに向かった。



「よく俺の前まで辿り着いたな。褒めてやるぞ! お前も父親のように首をはねてやるさ!」



 テキーラの前にいたはずの司令官の姿が消えた。そして、テキーラの後ろから剣で切り付けた。テキーラはそれを間一髪で避けた。テキーラの髪がパラパラと舞う。



「よく避けた! だが、いつまで避けきれるかな?」



 司令官はにやにや笑いながら再び姿が消えた。すると、テキーラが剣を地面にさして魔法を唱えた。



「ファイアーウォール」


 

 すると、テキーラの周りに勢いよく炎の壁が現れた。



「ヴアッ」



 司令官は炎を避けられず、ところどころに火傷を負ったようだ。



「おのれ~! 小娘が! もう油断しないぞ!」



 再び司令官が姿を消した。そして、右側から切り付けてきたが、テキーラはそれを剣で受け止める。



「どうしてわかった?」


「あなたに教える必要なんかないでしょ! じゃあ、そろそろ仇を取らせてもらうわよ!」


「ふざけたことを!」



 司令官の姿が消えた。すると、テキーラは剣を上にかざして魔法を発動する。



「ファイアースピア」



 すると、剣から溢れ出る炎が鋭い槍へと形を変え、上空へと放たれた。



「グワッ」


「どうして俺の動きが分かった? グハッ」


「だから、教える必要がないだろうが、死ね!」


「ギャー」



 テキーラが司令官の首を切り落とした。一方、ベータとガンマを見ると、2人とも多少の傷を負っていたが、30人以上の兵士達を全員討伐していた。



「シルバー! 彼女達、強くなったわね。」


「そうだね。まだ粗削りだけどね。」



 僕とリリーは3人のところに行った。



「ありがとう。シルバーさん。仇は採れたよ。」


「でも、本当の仇はまだだよね?」


「はい。」


「なら、3人とももっと強くならないとね。」


「はい!!!」



 3人がいい返事をした。僕達は兵士達がいなくなった後の街を散策する。最初に司令官のいた屋敷だ。屋敷内に入ると、無残に殺された者達の死体があった。恐らくこの屋敷の人達だろう。僕はイグドラ帝国に対して、強い憎しみを覚えた。



「リリー! 一旦戻ろうか?」


「どうしたの?」


「一応、ウイリアム国王に報告しないとね。それと、この街の復興に人手が必要でしょ?」


「そう言うことね。わかったわ。」


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