ノースホワイトの解放(1)
僕とリリーはネーデル王国の謁見の間に呼ばれ、ウイリアム国王と謁見することになった。僕とリリーの態度が気に入らなかったのか、貴族達が騒ぎ始めた。兵士達が僕達に向かって来ようとしている。どうやら限界だ。この国がどうなろうと僕とリリーには関係ない。僕達は、帝国に捕まっているエルフ達を助けるために帝国に向かっているだけだ。僕の身体から真っ黒なオーラが現れ、爆発音と同時に兵士達は壁に吹き飛んだ。そして、身体も顔も精悍な男性に変化して、背中には漆黒の翼が出た。隣にいるリリーも魔族の姿に戻った。
「ま、魔族だー!」
貴族達が大声をあげて逃げ惑っている。中には腰を抜かして座り込んでいるもの、小便を漏らしてしまったものまでいる。
「オレはアスラ魔王国の魔王シルバーだ!」
「魔王?!」
オレ達の隣にいたセリウス、テキーラ達3人は驚いてはいたが、特に怖がってはいなかった。
「国王ウイリアム殿。そなたの国を助けるのはやぶさかではない。だが、ここには教育が足りない貴族達がいるようだな。」
さすが国王だ。恐怖は感じているだろうがそれを顔には出さない。
「魔王シルバー殿。申し訳ない。わしの教育不足じゃ。許してもらえぬか。」
「まあ、いい。オレはイグドラ帝国に捕まっているエルフ族を助けるとクイーンにも約束したんだ。このまま行かせてはくれないか。」
「クイーンと申しますと、ま、ま、まさか精霊王様のことですか?」
「ああ、そうだ。オレの友人なのでな。」
ここで、国王ウイリアムは、オレが女神ナルーシャの使徒であるというセリウスの言葉を思い出した。そして、玉座から降りてオレに片膝をついた。一国の王がオレに片膝をついたのだ。国王の様子を見て、貴族達も全員がオレに片膝をついた。
「やはり、セリウス伯爵の言う通り、シルバー殿はナルーシャ様の使徒なのですね。使徒様にお願いします。我が国は小国です。帝国が攻めてくればひとたまりもありません。どうか、お助け下さい。」
リリーがオレを見つめている。
「わかった。この国に侵攻しているイグドラ帝国の兵士達はオレが何とかしよう。その代わりだ、この国が奴隷制度を取ることを禁ずる。それでよいか。」
「承知しました。」
「もしこの国が、他種族の者を奴隷として扱うことがあれば、オレはこの国を消滅させるからな。」
「大丈夫です。子々孫々他種族を奴隷にすることはございません。」
「もう一つ、オレとリリーのことは伏せておいてくれ。オレ達の正体がばれると動きづらいからな。」
「わかりました。」
「リリー! ノースホワイトにいくぞ!」
「うん。」
すると、テキーラ達が立ちあがって言ってきた。
「シルバー様。お待ちください。約束です。私達もつれて行ってください!」
「わかった。すぐ戻る。城の前で待機していろ!」
オレとリリーは城の窓から外に向かって飛翔した。そして、30分ほどして戻ってきた。
城の前に舞い降りると、テキーラ達だけでなく、ウイリアム国王やセリウスをはじめとした貴族達までが待っていた。
「テキーラ、ベータ、ガンマ。オレの近くに来い!」
3人がオレの近くにやってきた。そしてオレはそこにいる全員に言った。
「では、これから約束を果たしに行ってくる。」
オレは転移魔法でその場からノースホワイトの郊外まで転移した。残っているウイリアム国王もセリウスもオレ達の姿が突然消えて驚いていた。
「やはり、あのお方は神の使いなのじゃ。」
「そうですな。」
オレ達が、ノースホワイトの郊外に転移すると、街の外側にまで兵士達が溢れていた。隣では、初めての転移にテキーラもベータもガンマも目を白黒させていた。
「魔王様。ここはどこですか? 俺、死んだんですか? 姉御もガンマの兄貴も。」
「何言ってるのよ。シルバーの転移魔法でノースホワイトまで来たのよ。」
「本当ですか? 転移なんてものができるんですか?」
「本当だ。それと、オレのことは絶対に魔王とは言わないようにな。」
「わかりました。シルバー様。」
「様もいらないんだけど。今まで通りにできないか?」
「わかりました。シルバーさん。」
「それでいいよ。」
なんかテキーラがオレに見とれている。
「今までのシルバーさんも素敵だったが、やはり男前のシルバーさんの方が断然いいな!」
「ありがとう。でも、そんなこと言ってる余裕ないだろ!」
「そうよ。私とシルバーなら一瞬でこの街の兵士達を始末できるけど、あなた達が敵を取りたいんでしょ?」
するとテキーラが真剣な表情で言った。
「恐らく、ここいる兵士達の中にもいやいや兵士にされた連中もいると思います。私は彼らまで殺したくない。」
なんか、テキーラの中に優しさを見た。
「なら、ここにいる兵士達の司令官を始末したほうがいいな。」
「でも、どうやって見つけるのですか?」
「オレやリリーには魔眼があるからな。簡単だ。」
すると、ガンマが感動していた。
「魔族っていうのはスゲーな!」
魔眼を凝らしてみてみると、街中に領主か代官の屋敷のような大きな建物があった。その中に見事な甲冑を着た体の大きな人物がいた。恐らく、彼が司令官だ。
「見つけたぞ! オレ達が司令官の場所まで連れて行くから、後はお前達で倒せ!」
「わかったわ。」
僕とリリーは人族の姿に戻った。そして、街の入り口まで来た時に魔法を発動した。自分達の周りを囲むように炎を出したのだ。突然、巨大な炎の塊が現れ、その中に5人の人物が焼けることなく歩いているのだ。兵士達も街の住人達も驚いて腰を抜かしていた。
「すごいですね。姉御。」
「ああ、こんな魔法見たこともない。シルバーさんとリリーさんの強さは計り知れないな。」
「リリー! 魔眼で見て、人を殺すことを楽しむような兵士達は殺していくよ。」
「わかったわ。」
僕達は歩きながら周りを観察する。好んで殺人を行う者や、女や子どもを平気で犯すような者からは邪悪なオーラが出ている。
『パチン』
僕が指を鳴らすと、兵士の頭が吹き飛んだ。リリーは、手を前に出して指から光線を放つ。
『シャイニングビーム』
すると、炎の中から突然ビームが放たれて兵士の頭を撃ち抜いていく。
「俺達があれほど訓練したのに、シルバーさんやリリーさんにはとても勝てそうにないですね。」
「当たり前でしょ。それより、そろそろ司令官がいる場所よ。」




