ネーデル王国の危機
前日にテキーラ達の武具を整え、僕達が宿屋から出ると伯爵のところの兵士達が迎えに来ていた。僕達が伯爵の屋敷に行くと応接室に通され、そこには、セリウス、メアリー、そしてローレンスがいた。そして、最初にローレンスがお礼を言ってきた。
「使徒様。この度はありがとうございました。何とお礼を言っていいか。」
「最初に断っておくけど、僕は使徒じゃないからね。確かに、ナルーシャ様からこの世界を平和にするようにと頼まれたけど、別に使徒にすると言われたわけじゃないから。」
「そうなのですね。ですが、シルバー様のお顔がなんとなく夢に出てきたナルーシャ様に似ていらっしゃるのは、気のせいでしょうか?」
すると、リリーが聞いてきた。
「そうなの? シルバー! あなた、ナルーシャ様に似てるの?」
「どうかな? 自分じゃわからないよ。」
すると、セリウス伯爵がメアリーを見て言った。
「シルバー殿が男であれば、是非我が娘メアリーの婿になっていただきたいところでしたが。」
「お父様! シルバー様に失礼ですよ!」
テキーラ達3人はキョトンとしている。リリーはまたかと笑いをこらえている。
「なんか誤解してるようだけど、僕は一応男だからね。」
「えっ———!!!」
セリウス、メアリー、ローレンスが驚いた。
「これは失礼をしました。そうでしたか。言葉が男性のような感じでしたので、そうかとは思っていたのですが、あまりにも美しいお顔立ちをしていましたので。」
「セリウスさん。いいよ。いつも間違えられるし、気にしてないから。」
ここで、帝国の話になった。
「昨日、イグドラ帝国の話をしましたが、どうやらここ最近再び軍備を整えている様子です。どうかお気を付けください。」
「ありがとう。ここからイグドラ帝国に行くにはどうすればいいの?」
「そうですね。一旦王都カサンドラに出て、そこから北に向かうのが最短ですね。」
「お父様。お母様の病気も治ったんですから、私達も一緒に王都に行きましょうよ。」
「そうだな。もう1年近く王都の屋敷を留守にしているからな。そうするか。」
なんか、セリウス伯爵達も一緒に王都カサンドラに行くことになった。出発は2日後の早朝だ。出発までの2日は、テキーラ達の訓練を兼ねて森に魔獣の討伐をしに行った。お陰で、彼らの戦闘能力が向上して、しかも彼らの懐にも余裕ができた。一石二鳥だ。そして、出発の日が来た。僕達はギルドを通して、伯爵家の護衛依頼を引き受けた。
「シルバー殿。リリー殿。どうか馬車に乗ってください。」
「ダメだよ。僕達は護衛なんだから。みんなと一緒に外で歩くよ。」
ローレンスが心配して言ってきた。
「わかりました。辛くなったら行ってくださいね。」
「ありがとう。」
出発して2日が経過したが、特に何もなく平穏な旅が続いた。
「せっかくシルバー様に修行させてもらったんだから、魔獣でも出てきてくれないとつまらないわね。」
「姉御! 平和なのはいいことですぜ!」
「そうだけどさ。」
そして王都に近づくと何やら武装した兵士達が慌ただしくしていた。僕は馬車の中のセリウス伯爵に聞いた。
「セリウスさん。なんか兵士達がたくさんいるよ。」
「何かあったのかもしれません。急ぎましょう。」
僕達が王都に着くと、王都内にも兵士達が大勢いる。セリウスはそのまま王城へと向かった。王城に到着した後、セリウスは王城へと入って行ったが、僕達は馬車の中のメアリーとローレンスを守るために馬車の外にいる。
「テキーラは王都カサンドラには来たことあるの?」
「はい。何度もありますよ。」
「なんか、街は大きいんだけど人が少なくない?」
するとリリーも同じようなことを感じたようだ。
「シルバー! 人も少ないけど、お店もほとんど締まっていたわよ。」
「シルバー様。やはり、何かあったのかもしれません。以前私が来た時はもっと人も多く、街に活気がありましたから。」
すると、セリウスが戻ってきた。
「どうでした?」
「はい。シルバー殿達も是非王城に来てください。国王陛下がお会いになりたいそうです。」
「何があったの?」
「どうやら帝国が北の街ノースホワイトに攻めてきたようなんです。」
「わかったよ。なら、護衛できなくなるからメアリーさん達も一緒に行くけど。」
「わかりました。」
僕達は王城内に入った。メアリーとローレンスは応接室で待機し、僕とリリー、それにテキーラ達3人組が謁見の間へと案内された。謁見の間に入ると、やはり玉座の前まで赤い絨毯が引かれている。左側には貴族達が立ち並び、右側には武装した兵士達が立っていた。僕達は王の前まで歩いて行った。そして、全員が片膝をついて王に挨拶をする中、僕とリリーだけは立ったままだ。すると、貴族達から怒鳴り声が聞こえた。
「あの者は何者だ! 王の前だぞ! 無礼であろう!」
「何やらセリウス殿が連れてきた者らしいぞ!」
「どこの馬の骨ともわからない娘達をなぜこんな時に連れてきたのだ!」
王は白いひげを生やした優しそうなお爺さんだ。王が僕に話しかけてきた。僕とリリーの隣ではセリウスもテキーラ達も蒼い顔をしている。
「わしはこの国の王ウイリアムスじゃ。」
「僕はシルバーだよ。」
「私はリリーよ。」
「シルバーと申すか。はて、どこかで聞いたような名だが。ところで、伯爵から聞いたのだが、そなたは神の使徒なのか? 世界の平和をナルーシャ様から託されたとか聞いたが。」
どうやら、この王は常識がありそうだ。
「別に使徒じゃないよ。でも、ナルーシャ様から平和を託されたのは本当だよ。」
すると、貴族達が最初は驚いた様子だったが、口々に言った。
「陛下! 騙されてはなりませんぞ! そのような小娘に何が出来ましょう。こうしている間にも、我が領土が侵略されているのですよ!」
すると、リリーが我慢できなくなったのか、身体から真っ黒なオーラが出始めた。謁見の間の空気が急激に冷えていく。貴族達の顔色が変化した。兵士達は震える手と足を我慢して、一斉に武器を構えた。
「ガシャ」
そして、僕とリリーに向かって貴族達が騒ぎ始めた。
「貴様達は帝国の回し者か!」
「陛下の命を狙いに来たのか!」
「近衛兵! こ奴らを取り押さえろ!」




