シルバーの奇跡の手術!
僕達は領主セリウス伯爵の娘メアリーを助けた。そして、領主の屋敷まで同行することになった。そこで、領主のセリウスにお礼を言われ、現在応接室で話をしている。一人一人自己紹介をしたのだが、テキーラの様子に違和感を持った。本来、テキーラが純粋な平民なら領主の前で普通の態度でいられるはずがない。それに言葉遣いも変だ。平民が伯爵に使う言葉遣いではない。
「ところで、シルバー殿。貴殿は、兵士達が死にそうになっているのを魔法で治癒したとメアリーから聞いたのだが、それは本当かね?」
「まあね。」
するとメアリーが言った。
「お父様! 信じてください! 死にそうだったケージ達がシルバー様の魔法で生き返ったんです!」
「ああ。メアリー。信じているさ。だが、ローレンスは怪我ではないんだ。重い病なんだよ。」
セリウス伯爵は少し諦めている様子だ。恐らく、すでに何人もの医師や魔法使いに見てもらったのだろう。
「あの~。ローレンスさんの様子を見せてもらっていいかな?」
するとメアリーが言った。
「お父様! シルバー様に見ていただきましょう! 可能性があるなら、私は是非見ていただきたいのです。」
「わかった。ならば案内しよう。ついてきてくれ。」
僕達はローレンスの寝室に行った。ベッドの上に寝ている女性がいる。何も食べていないせいか、かなりやせ細っていて息が荒い。このままだと数日も持たないだろう。僕は彼女の近くまで行って手をかざして確認した。すると、お腹のあたりに強い反応があった。どうやら、不治の病とされている『カンス』を患っているようだ。
「確認したいので、ちょっと触ってもいいですか?」
「頼む。」
手で触ると赤ん坊の頭ほどある大きなしこりがあった。
「カンスですね。かなり進行しています。すでに、末期だと思います。」
「やはりそうか。他の医師達と同じ見解だな。どうだろう? 治せるか?」
僕の魔法を使えばできないことはない。だが、さっきのケージ達を治した時、僕は『聖教国の聖女様にもできないことをした』と言われた。怪しまれる可能性がある。
「シルバー! 治るんでしょ? 心配するのは後にしようよ。」
「わかったよ。リリー。」
僕はみんなに向き直って言った。
「僕が治療するよ。けど、これから見ることは絶対に他人に言わないでくれるかな。それと、僕とリリーのことを詮索しないで欲しんだけど。」
「わかった。約束しよう。」
セリウス伯爵がテキーラ達を見た。
「大丈夫さ。私達は口が堅いからね。」
全員が僕の言葉に納得してくれたようだ。
「なら、始めるよ。みんな下がって。」
『パーフェクトキュア』
すると、僕の身体から七色の光が現れた。その光が僕とローレンスを包み込んでいく。そして、ローレンスのカンスのある部分が表面に出てきた。僕がさらに魔力を高めると、僕の背中に黒い翼が見え隠れし、それがだんだんと白色に変化していく。
「な、な、何なんだ? この魔法は?」
僕が指でローレンスのお腹に線を書くようになぞるとお腹が割れ、中から黒い塊が出てきた。僕の手から眩しい光が出て、黒い塊は消えてなくなった。不思議なことに切られたはずのお腹から血は出ていない。さらに驚くことに、僕が再び手でなぞると、何もなかったかのように、切られたはずのお腹が塞がって傷跡が消えていく。そして、僕の背中の翼が消え、光も消えた。
「終わったよ。もう大丈夫だよ。」
リリー以外の全員が驚きすぎて開いた口が塞がらない。少しして、テキーラが叫んだ。
「奇跡だ! これは奇跡だ! シルバー! お前は神なのか?」
すると、リリー以外が全員僕に片膝をついた。
「神よ! 感謝します。我が妻を生き返らせていただいて本当にありがとうございます。」
「みんな! 立ってよ! 僕は神なんかじゃないから! それより、メアリーさんもセリウスさんもローレンスさんのところに行ってあげて。」
「お母様~!」
メアリーの声でローレンスが意識を取り戻した。
「メアリー! 私は生きてるの?」
「はい。お母様。神様が治してくれたのよ。」
「神様が?」
ローレンスが僕を見た。そして言った。
「ナルーシャ様が言われた通りですね。使徒様。ありがとうございます。」
そして、その一言だけ言って、ローレンスは再び眠ってしまった。僕達はメアリーを部屋に残して再び応接室に戻った。
「シルバー殿。妻が使徒様と言っていましたが。どういうことでしょう。」
すると、僕に代わってリリーが答えた。
「シルバーはナルーシャ様からこの世界の平和を託されたのよ。」
「それは誠ですか?」
「本当よ。アマゾル大陸もユーフラ大陸もベテルギ王国もすべて平和になったでしょ?」
「まさか、そのすべてをシルバー殿が?」
「そうよ。」
「それでイグドラ帝国に行くのですね?」
セリウス伯爵が聞いてきた。
「そうだよ。なんか、あの国がエルフ族を誘拐しているらしいからね。やめさせに行くんだよ。」
すると、テキーラが言った。
「それは無理だな。」
「どうして?」
「あいつらは言って分かるような連中じゃないんだ。私の国もあいつらに滅ぼされ、父上に母上、兄上も姉上も殺されたんだ!」
テキーラが我慢できなくなったのか泣き始めた。それを、ベータとガンマでなだめている。すると、セリウス伯爵が大きな声で言った。
「そうか! 思い出した! あなたはガリア王国の第2王女エリザベト様じゃないですか?」
やはり、テキーラは普通の平民ではなかったようだ。
「セリウスさん。私の国はもうないんだ。だから、私はもう第2王女ではないのさ。」
隣でベータとガンマが泣いている。
「テキーラにもいろいろあったんだね。それでも、僕はイグドラ帝国に行くよ。困ってる人たちが大勢いるからね。」
「なら、私達も一緒に行くわ。私は、この手で家族の仇を取りたいのよ!」
「別に構わないよ。」




