セリウス伯爵
僕達がロッテルの街を出て次の街に向かう途中、オークに襲われている人達を助けた。兵士達の怪我も治して感謝された僕達は、兵士と少女を元気づけようと食事をすることにした。僕とリリーは6体のオークを魔法袋に仕舞った後、森の中に持って行って1体を解体して食肉にした。ついでに、薪を集めてみんなのところに戻った。
「リリー! 火を起こして!」
「了解!」
僕は塩と胡椒で味付けをして、オークの肉を焼いた。少女は自分を襲っていたオークの肉を食べるのに抵抗があるのか、食べようとしない。何故か隣でテキーラ達がガツガツと食べている。
「お嬢ちゃんも食べな!」
「でも~」
「いいから、一口でいいから食べてみな。」
テキーラが少女に食べるように勧めた。
「お嬢様。是非、お食べになってみてください。信じられないほどおいしいです。」
ベータとガンマが一心不乱に食べている。
「本当にうめぇな! 臭みもないし、一体どうしてこんなに旨いんだ!」
「あの、黒い粒じゃねぇか?」
するとリリーが言った。
「そうよ。この黒い粒はベテルギ王国に伝わる幻の調味料なのよ。美味しくて当たり前ね。」
僕達の様子を見ていた少女が一口食べた。
「美味しい! このお肉、本当に美味しいわ!」
「そうだろ!」
テキーラがベータとガンマを見て、ウインクしていた。どうやら、食べようとしない少女に食べさせるために、わざと美味しそうにガツガツと食べていたようだ。なかなかいいところがある。
「私達はセリウス伯爵様にお仕えする兵士です。メアリーお嬢様が森に薬草を取りに行くのを護衛していました。そしたら突然オークに襲われて。不覚でした。情けないです。」
「そんなことはないよ。急に襲われたら無理もないよ。僕はシルバー。よろしくね。」
「私はリリーよ。」
「私はテキーラだ。」
「俺はベータ。」
「俺はガンマ。」
すると、お肉を食べて少し元気になったのか少女が挨拶してきた。
「私はメアリーです。助けてくれてありがとう。ケージ達の命まで助けてくれて感謝します。」
その後、少し休んで兵士達が歩ける状態になったところで街まで同行することにした。歩きながら僕は聞いた。
「ケージさん。セリウス伯爵様ってロッテルの街の領主もしているの?」
「そうですが、何か?」
「ここに来る途中で立ち寄ったんだけど、街が花でいっぱいだったんだよね。こんな素敵な街を治める領主様ってどんな人だろうって思ったんだよ。」
「そうでしたか。実は、メアリー様のお母様のローレンス様がご病気でして、街のみんながメアリー様を元気づけるために花を飾るようにしているのです。」
すると。リリーが小さな声で言った。
「まるでシルバーみたいね。ここの領主もその家族も街の人々から愛されてるんだわ。」
僕はテキーラ達に聞かれたかもしれないとひやひやしながら話題を変えることにした。
「領主様は愛されてるんだね。ところで領都の名前はなんて言うの?」
「フランベルトです。」
「やっぱり花が一杯なの?」
「そうですね。みんなメアリー様のことが大好きですから。」
「メアリーさんて、大勢の人から愛されてるんだね。」
するとメアリーが悲しそうな顔で言った。
「街の人達はみんな優しいです。でも、お母様の病気は良くならないの。」
すると、ここで隊長のケージが真剣な表情で聞いてきた。
「シルバー殿の魔法が効くのは怪我だけなんでしょうか? 病気は治せないんでしょうか?」
ケージの言葉でメアリーがハッと目を見開いた。
「シルバー様。お願いです。お母様を治してくれませんか?」
「僕の魔法でできるかどうかわからないよ。」
「いいんです。可能性があるなら、試すだけでもいいんです。お願いします。」
するとテキーラが言った。
「よぉ、シルバー! お嬢ちゃんがこれだけ頼んでるんだ。試してやったらどうだ!」
リリーも頷いている。
「わかったよ。でも、治る保証はないからね。」
「はい。わかっています。」
僕達がフランベルトの街に到着すると、すぐにセリウス伯爵の屋敷に向かった。街の中を歩いきながら気付いたが、やはり花がたくさん植えられていた。しかも領都だけあって、ロッテルの街よりもはるかに大きな街だ。大通りには屋台も出ている。
「着きました。皆さん、ここでお待ちください。お父様に話してきます。」
メアリーが家の中に入って行った。しばらくして、髭を生やした30代くらいの紳士がやってきた。
「君がシルバー殿か。話は聞いたよ。メアリーや兵士達を助けていただいて感謝する。お礼がしたので中に入ってくれないか。」
僕とリリーが中に入ると、何故かテキーラとベータ、ガンマもついてきた。僕達は全員、応接室に案内された。席に座ると早速、セリウス伯爵が再度お礼を言ってきた。
「娘を救っていただいて本当にありがとう。メアリーは私にとって大事な一人娘なんだ。」
「いいえ。通りかかっただけだから。」
「みんなはどこから来たのかね。メアリーの話だとベテルギ王国と聞いているが。」
「そうだよ。僕とリリーはベテルギ王国から来たんだ。他の3人は知らないけどね。」
すると、テキーラ達が言った。
「私達はイグドラ帝国から来たのさ。シルバー達がイグドラ帝国に行くっていうから道案内をしてるのさ。」
別に僕は道案内を頼んだつもりはない。なにやらセリウス伯爵がテキーラをじっと見つめている。そしてぽつりと言った。
「君はどこかで会ったことがあるかね?」
テキーラは気まずそうに答えた。
「いいや、初めてだと思うよ。」
「そうか。ならば気のせいだな。」




