ネーデル王国の街ロッテル
僕とリリーは一旦魔王城まで戻って着替えを僕の空間収納に仕舞い、再びベテルギ王国の王都イスカントの郊外まで戻って、そこから国境まで飛翔した。
「この辺りよね? 国境!」
「そうだね。この道を歩いて行こうか?」
「うん。」
すかさずリリーが僕の手を組んで体を密着させてくる。ここ最近、また感触がよくなっている。
「なんか成長してない?」
「わかる? 少し伸びたのよね。」
「えっ?!」
「身長のことじゃないの?」
しばらくして、リリーが真っ赤な顔になって言った。
「シルバーって意外とエッチなのね!」
「別に男はみんな同じだよ!」
そんなことを話しながらじゃれあっていると、300mほど先に砦のような場所があった。
「あれ国境の検問よね?」
「多分ね。」
僕達が検問まで行くと、どうやらベテルギ王国とネーデル王国が共同で運営しているらしく、両国の兵士達がいた。
「お前達はどこにいくつもりだ?」
「特にあてはないわ。新婚旅行だもん。」
リリーが僕に身体をぴったり寄せてくる。僕もリリーの方を抱き寄せた。すると、一瞬リリーの身体が固くなる。驚いた証拠だ。
「身分証明を見せろ!」
僕達は冒険者ギルドのカードを見せた。
「Cランク冒険者か? ここから先は魔獣がいるから気をつけろよ!」
「ありがとう。」
僕とリリーは検問を抜けてネーデル王国に入った。と言っても、別に景色が変化するわけではない。相変わらず草原が続いていく。基本的に僕がいると弱い魔物は現れない。僕やリリーから漏れ出る魔力を感じ取って逃げてしまうのだろう。何もなく、2時間ほど歩いたところで畑が見えてきた。畑の中には農作業している人達の姿もある。そして、目の前に街が見えてきた。どうやら城壁の検問もないようだ。街の入り口に看板があった。
『ようこそロッテルヘ』
街に入ると、至る所に花が植えられていて心休まる街並みだ。店の前にも、2階のベランダにも花がある。
「シルバー! この街、気持ちいいわね!」
「そうだね。多分、領主が花が好きなんじゃないかな。」
僕達が街の中を歩いていても、笑顔が溢れている。
「シルバー! ここで一泊していきましょうよ。」
「なら、冒険者ギルドに行こうか?」
僕達は街を散策しながら冒険者ギルドを探した。すると、ドラゴンの絵の描いた建物があった。
「ここじゃない?」
「行こう。」
僕達が中に入るとやはり冒険者ギルドのようだ。建物の中には何人も冒険者のような人達がいた。すると、すれ違いざまに男性の冒険者に声をかけられた。
「お嬢ちゃん達、手をつないで仲いいな! でも、ここは冒険者が来るところだ。お嬢ちゃん達、怖いおじさん達もたくさんいるから危ないぞ!」
すると、奥の方から別の冒険者がやって来た。
「おい、ベータ! 怖いおじさんって俺のことじゃねぇよな。」
「違うわ! ガンマ! お前の場合は『怖い顔』のおじさんだろ!」
「うるせぇ!」
さらに今度は女性の冒険者がやって来た。ボンキュボンの顔立ちの整った美女だ。不本意ながら少し見とれてしまった。
「あんたたち煩いわよ。この子達が怖がるじゃないの!」
そして、僕達の方を見て言った。
「困ったことがあったら、私に相談しな! このテキーラ姉さんが解決してあげるからね。」
「テキーラの姉御! 俺達はそんなつもりはねぇんだよ。」
「ありがとう。奇麗なお姉さん!」
「まっ! 正直ねぇ! 気に入ったわ。後でこっちにいらっしゃい。果実水でもご馳走するわよ。」
僕とリリーは受付に行った。受付にもきれいな女性がいた。
「何か用かしら。」
「この街に宿屋ってある?」
「あるけど、あなた達だけで来たの? 因みに見ない顔だけど、どこから来たの?」
「ベテルギ王国からだよ。」
「そんなに遠くから女の子2人で来たの? 大丈夫だった?」
さっきからずっとみんなが僕のことを少女と勘違いしている。だんだんイライラしてきた。隣にいたリリーが気付いたのか、笑いをこらえながら僕の手を強く握った。
「お姉さん。僕達、何歳に見える?」
「そうね~。12歳ぐらいかしら。」
すると今度はリリーが起こり始めた。
「私達、もう16歳ですから! 一応成人してるんですけど!」
受付の女性もリリーの剣幕に圧倒されていた。
「それから、ここにいるシルバーは男だから! 次から間違えないで!」
「そうだったんですか? ごめんなさいね。」
謝りながら受付の女性は僕を上から下まで見た。胸がないことに気付いたのだろう。
「本当にごめんなさいね。あまりにもきれいな顔をしていたから、つい女の子だと思っちゃったの。」
「いいよ。気にしてないから。」
すると、後ろから先ほどのテキーラという女性がやって来た。
「今、聞こえたけど、お前男だったのか?」
「そうだよ。」
「そうか~! なら、飲み物はおごってやらねぇ! 私は少女にしか興味ねぇからな!」
僕にはテキーラが何を言っているのかよく理解できない。まっ、関係ないけどね。すると、受付の女性が宿屋を紹介してくれた。
「この通りを行くと、500m先に『木馬亭』っていう宿屋があるわよ。」
「ありがとう。」




