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*31* おひとり様

「星宮くんは……」


「神様ですよねっ!?」


 死闘を勝ち抜……けなかった直後。

 ずぅん……とブルーオーラにのしかかられるはずの休み時間に、まさかまさかの奇跡が起こった。


「佐藤さん、前にも似たようなこと言ってたよね」


「これを神業と言わずして、なんと称す!?」


「ホントホント。すごいよ~」


 ほっしーがたじたじなのは、あたしだけでなく、苺花にまで詰め寄られたから。


 説明しよう!

 おじいちゃん先生の講義が安定のちんぷんかんぷんだったあたしと苺花は、板書すらまともに写せていないという崖っぷちに立たされていた。


 そこへ助け舟を出してくれた人こそ、我らが神様。

 右からほっしー、あたし、苺花と机に教材を並べ、講義終わりからノートの穴を埋めさせてもらっていたのだが!


「字が綺麗!」


「すごいまとまってる!」


「漏れがない!」


「教授が言ったことまでメモしてる!」


「まさに百戦錬磨……もしやおぬし、超進学校の出身か!」


「ううん、田舎の普通校だよー」


 のんびりつぶやいて、トントンと参考書の角を整えるほっしー。

 あたしも苺花も筆記用具を片しつつ、そんなほっしーに首を傾げた。


「こっちの高校じゃなかったの?」


「あ、僕ね、去年まで母さんの地元にいたんだ」


「それって、小学校も中学校もってこと?」


「うん。生まれつき身体が弱くてね……幼いうちは環境が合ってる場所で暮らすほうがいいからって、母方の親戚にすすめられて」


「そうだったのかー。じゃあ、こっちの大学に来たのは?」


「父の実家があったから。通いやすいだろうなと思ってね」


「てことは、柚乃と一緒に田舎から出てきたってことだよね」


「……〝柚乃〟?」


 ショルダーバッグに教材をしまおうとした手が、ピタリと動きを止める。

 あたしを振り返った黒目はまんまるに見開かれ、かなりビックリした様子。


「柚乃が、そう呼んでって?」


「うん。ほっしー弟だと、長いからって……」


「パーカーのことといい、どういう風の吹き回しなのか……」


 双子って、以心伝心するくらいスピリチュアルな存在だと勝手に思ってた。

 けど柚乃の考えは、ほっしーにもわからなかったみたいだ。


「僕と違って、柚乃は身体が丈夫なんだ。ずっと父のところにいたよ」


「離れて暮してたってこと!?」


「そういうこと。夏休みとかの長期休みに、会いに来てくれてたけど」


「たまにしか会ってないじゃん! そりゃあブラコンこじらせるって!」


「今は一緒に住んでるんだよね。じゃあじゃあ、弟くん嬉しがってるだろうねー!」


「ホント、毎日愉快そう」


「いいなぁ~」


「黒岩さんは、兄弟いないの?」


「1人っ子なの。幸ちゃんもだよね!」


「おひとり様歴18年さ」


「おひとり様……」


 おっとぉ。〝おひとり様〟に真っ先に反応したのは、ほっしーだと?

 賢いほっしーのことだ、流れ的にソッチ方面の意味ではないとわかってくれているはず。


 ……なんだけど、パチリと目が合って顔を逸らす。


 別に、今朝のことを思い出したわけじゃない。

 身体が熱いのも、厚手の服のせい。


 だから、期待を込めたようなまなざしで見つめないでください。出るもんなんてなにもないですから……

たまに字が上手すぎて読めないひとがいる。

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