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17/39

*17* なかよし3人娘!

「失礼しまーす……」


 妙な空気へ、控えめなソプラノが入り込んできた。


「幸ちゃんいますか……?」


 そろり、そろり、と足音を殺して医務室を見渡すのは、苺花だ。

 パチリと目が合った瞬間。


「幸ちゃんっ!」


「っわぁ! 苺花!?」


 起き上がったそばから、ガバッとハグされちゃった。

 あ、亜麻色の髪から、ベリー系の甘い香りがする……


「なかなか戻ってこなくて、探してたんだよ!」


「よくここがわかったね……」


「売店のほうに行ってみたら、同じ学科の子が、具合悪そうな幸ちゃん見たって言ってたから!」


「ごめーん……連絡しようにも、回復してきたのさっきからでさ」


「ううんっ、元気になったんならよかった~!」


 ぎゅーって! ぎゅーって! 苺花、可愛すぎか!

 はぁ……女の子ってやわらかいんだなぁ。女子友グッジョブ!

 とここで、唯一の男子・星宮くんが、蚊帳の外でキョトンとしてることに気づく。


「あのね星宮くん、あたし苺花とランチの約束してたんだ」


「ああ、そうだったんだ」


「……ほっ、星宮くん!?」


 苺花ちゃん、もしかして今お気づきかい?

 なんて聞く前から人見知り発動、「ごめんなさいぃいっ!」ってペコペコしてるし。


「いーちかー、ほどほどにしてあげて? 星宮くん困ってる」


「えっ? そ、そうなの、ごめんなさい!」


「あはは……どうぞお気になさらず」


 すーはー、と深呼吸する苺花。

 ベッドで起き上がってるあたしと、脇のイスに座る星宮くんを、改めておっきな瞳が行ったり来たり。


「えっと……星宮くんが、幸ちゃんに付き添ってくれてたのかな?」


「うん。僕も佐藤さんとお昼を食べようと思ってたところに、居合わせてね」


「そっかぁ……星宮くんがいてくれてよかったね、幸ちゃん!」


「そだね、ハートも鍛えられたしね」


「ハート?」


「こっちの話だよ!」


 話を切り上げたところを見ると、よほど恥ずかしいと見た、星宮くんよ。

 どこかの忠犬より落ち着いてるのに、意外と先走っちゃうタイプか。メモメモ。


「……じゃあ、僕は失礼しようかな?」


「え、用事かなにか?」


「黒岩さんと約束してたんでしょ? お邪魔だろうから」


 ひょっとして気を遣ってる? 遣ってますね?


「お昼食べてないよね。一緒に食べよ」


「えっ?」


「学校医の先生、ここ使っていいって言ってくれたでしょ? あたしも食欲出てきたからさ、いいよね苺花?」


「うん、おしゃべりは、にぎやかなほうが楽しいしね~」


「……いいの?」


「お友達ですから!」


 あたしのダメ押しに、星宮くんが浮かせかけた腰をイスに戻す。


「それじゃあ……違和感あるので、隅にお邪魔します」


「え、なじみまくりじゃん。ガンガン来なよ」


「僕これでも男なんですよ、佐藤さん!」


「あはは、梨乃ちゃんまっかっかー」


「な、名前はダメだよ!」


「む?」


「名前呼ばれたら……」


「たら?」


「と、とにかくダメだからねっ!」


 ぷぅ! とほっぺを膨らませてるアナタ、説得力皆無です。

 真っ赤なお顔でそっぽ向いちゃって、大きめの瞳はうるうる。

 分けてほしいわその女子力。


「うんうん、ごめんよ、ほっしー」


「ほっしー!?」


「幸ちゃんすごく楽しそう」


「すごく楽しいよ苺花ちゃん」


「……好きに呼んでください……」


 茹でダコになりながら、快く星宮くんの許可をいただきました。ので! 今日からきみはほっしーだ!

 こうして、あたし、苺花、ほっしーの仲良し3人娘が誕生しましたとさ。


 え、なんか違う?

可愛い女の子たちがわちゃわちゃしてると和みますねぇ。

え、なんか違う?

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