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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第2章 見習い冒険者
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2-6 ドジっ子属性?

「おおっー!! スゲーッ! 治ったー!」


 傷口が治る、むず痒さに数秒耐える。すると、傷口は、綺麗さっぱり無くなっていた。傷口が治る瞬間は、まるで映像を逆再生したかのように塞がっていった。その為、気持ち悪さよりも興奮が勝り、ついつい、大声を上げてはしゃいでしまった。


「はっはっはっ! 良い反応ありがとう。如何でしたかな? フィデリオ君、面白かったでしょ?」


 ベルボ修道士は、まるで好好爺さんの様に満面の表情で笑う。


「はい! 凄かったです! これって"回法(かいほう)"って言うんでよね!? 俺、実際に使われているところ、初めて見ました」


 俺は興奮した勢いに任せて、回法について質問した。


「うーむ。賢い上に回法と言う正式名まで知っているとは……フィデリオ君は、物知りですね。普通の人は、これを[奇跡]って言うんですよ? 参考までに何処で、聞いたのですか?」


 ベルボ修道士は、笑みから一転して胸のあたりで腕を組み感心する。


「えっ? 両親です。両親も昔元神殿戦士の友人に、回法について教えて貰ったそうです。確か今では、少し使えるって言っていましたよ」


 俺は、聞いてはいけない事だったのかと、不安な表情を浮かべる。


「なるほど、なるほど……そう言う事でしたか」


 ベルボ修道士は、少し悩んだ表情を見せた。その後、何度も頷いて真面目な表情で、俺をじっくりと観察する様に見た。


「……やっぱり……神殿側としては、その神殿に所属しないで回法について教えて貰う事は、禁止されているんですか?」


 ベルボ修道士の知っていて良かったとも、知られて悪かったとも、取れる曖昧な返事に俺は、不安を募らせる。


「確かに……神殿側としては、無闇矢鱈に一般公開をされていません。宗教国家アストミンでは、秘匿されてすらいます。しかし、君のご両親は、少しながら回法が使えるのでしょう?」


「はい、実際に見たことはありません。でも、両親はそう言う嘘を僕に言いません。だから、使えると思います」


「なるほど……と言うことは、君も隠しステータスの[仰力(こうりょく)]について、ご存知なのでは?」


「はい、数ヶ月前に出現しました。その時に回法について知り、両親も出現しているって言っていました」


 下手に隠していても仕方ないので、俺は正直に答える。自分でも自覚している事だか、腹芸は苦手だった。


「で有れば問題はありません。仰力を知らない一般人に教えたなら問題でした。しかし、私達同様に、神に祈りを捧げる同志に教えたのであれば、問題にはならないでしょう。


 我々がお仕えする女神イシュリナ様も、その寛大な御心できっと御許しになってくれる事でしょう。それに、同志に教えるなと、私達の教えにはありません。また、禁止されているわけでは、ありませんからね」


 ベルボ修道士が、俺を[神に祈りを捧げる同志]と仰る。この意味は、正式に俺の事を1人の信者として、認めて下さったのだろう。


「(なんか……修道士って割に、ベルボ修道士は、それ以上の風格が感じるんだよな……。


 具体的には、小学生の頃に担任の先生と話していると思ったら、実は校長先生だったみたいな時の感覚だ。まぁ、何はともわれ、知っていて良かったようなので一安心だ)」


「そうなんですか……良かったです」


 ベルボさんの言葉に募っていた不安が無くなり、安堵の表情を浮かべた。


「そう言えば……フィデリオ君。時間は、大丈夫なのですか? とても楽しく、話し込んでしまいむした。しかし、気づいていないかも知れませんが、先程夕飯の鐘の音が、鳴りましたよ?」


「えっ!? あ"っ! やっべ! あぁ、ベルボ修道士、最後に1つお聞きしても良いですか?」


 不安ですっかり忘れていた時間を思い出し、俺はひどく焦った。しかし、話の中で少しずつ不思議に思っていた事を質問してみた。


「なんでしょう?」


「如何して……僕にここまで、優しくしてくれるのですか? 僕たちは、今日が初対面……ですよね?」


 ベルボ修道士の顔を覗き込む様に見ながら、俺は初対面である事を確認した。


「そうですねぇ……確かに、君とは、今日が初対面です。しかし、君のお爺さんから、君の事を聞かされてきました。それに、今日の仕事振りを見て、私もフィデリオ君のことが、気に入ったからでしょうね」


 ベルボ修道士は、右親指と人差し指で顎の下を挟む様に触りながら説明する。


「うん? お爺さんって、アラン爺ちゃんですか? それともキース爺ちゃんですか?」


 俺はまさかの祖父の知り合いに、父方か母方か首を傾げる。世間は広い様で狭いとは、まさにこの事だ。


「アランですね。あいつと私は幼馴染ですし、よく会うのですよ」


 ベルボ修道士は、口元をニヤッとして笑う。祖父アランの家系は、王都イシュリナで代々続く冒険者一族である。もしかしたら、ベルボ修道士も王都出身なのかもしれないと俺は思った。


「そうなんですか……僕の事をアラン爺ちゃんから、どんな風に聞いているんですか?」


「そうですねぇ。時々、年齢不相応な賢さはあるが、そこはお母上のアーシャさんにそっくりだと伺っています。また、冒険に憧れを持つ心は、アランや息子のアモンさんにそっくりだって言っていましたよ。


 そして、仲良くなるかは別として、自分達に似て抜けている所があるから、気にかけてやってほしいと頼まれましたのでね」


 ベルボ修道士は、最後の方を少しだけ、悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら言う。


「ぬ、抜けている……。ひ、否定できない自分がいる。そうか……俺って抜けているのか……気をつけよう……」


 自分的には、結構しっかりやれていると思っていた。しかし、よくよく思い返してみると、前世と今世を含めても、否定できない事に心当たりがあった。


「くっくっく。ま、そう落ち込まないで下さい。フィデリオ君、そう言う部分も貴方の魅力の1つなんですからね。おっと……ではフィデリオ君、依頼お疲れ様でした」


 ベルボ修道士は、俺が地面に顔を向けて溜息をつき、少しドンヨリしている様子に笑いを堪える。


「はい。此方こそ、色々ありがとうございました。また、ご依頼が、ありましたら是非、僕の指名をお願いします」


「はい。では、少しお待ちください……よし、此方の紙をギルドに報告する時に渡してください。そうすれば、報酬が貰えますのでね。また、是非お願いしますね。気をつけて、帰るんですよ?」


「今日は、ありがとうございます。ベルボ修道士、さようなら!」


 俺は小走りしながら、後ろを振り向き右手を上げて軽く左右に振った。ベルボ修道士も、左手を上げて振って下さった。


side in ベルボ修道士


 アラン(やつ)の初孫、フィデリオ君が、手を振りながら帰ったので、私も彼に手を振り返した。


「(大丈夫かな……彼は、アイツに似ているから、そろそろ何か……あっ、家の壁に激突した。痛がっている。この辺が子供の頃のアラン(やつ)そっくりだ。やっぱり、見ていて飽きないな……)」


 私は笑いを堪えている。まだ、私の姿は、彼から目視できる距離にある。それに、こんな所で腹抱えて笑っても、周りが困惑するだろう。そうな風に思っていると突然、私の後ろから呼ぶ声が聞こえた。


「ベルボ先生(・・・・・)! 此方にいらっしゃいましたか……!!」


「おや? ジェルマー司祭様(・・・・・・・・)では、ありませんか。如何されましたかな?」


 振り向いてみると20代後半の若く、金髪褐色肌の青年である[ジェルマー司祭]が走りながら、此方に向かってきた。


「ちょ!? ベルボ先生! 今は、2人しか居ないので、普通に呼んでくださいよ!」


「くっくっく。冗談ですよ、ジェルマー()。して、用事は何かな?」


 彼を揶揄うのか楽しいく、私は思わず笑ってしまう。


「ったく〜。冒険者ギルドに依頼した、草刈りを受けた冒険者が見当たらないのですが……何かご存知ではありませんか? 一応、少し前、冒険者ギルドに確認をした所、今日、見習い冒険者になったばかりの少年だそうですよ?」


 彼は少しいじけた様に、視線を外しながら右手で頭を掻く。


(そうか……フィデリオ君は、今日見習い冒険者になったばかりの新人だったのか……。初日にしては、少しキツ過ぎたかな?)


「ええ……彼なら既に来て、依頼を達成しました。それに、もう時間も遅い。だから、ギルドに返しましたよ」


「えーっ!? それなら、そうと一言伝えてくださいよ〜。いくら、私の権限で、代理が出来るからって……それは無いでしょう? 


 私だって、草刈りをした少年に、感謝の気持ちを伝えたかったのですよ? それに聞けば、孤児院で暮らしている子供達と同年代だと、言うじゃ無いですか。お土産に、お菓子を包むくらいしてあげたいじゃ無いですか」


 外していた視線を私に向けると、彼は、顎が外れそうになるほど、大きな口を開けて驚く。そして、自分だけ感謝を伝えられなかった事に少しだけ落ち込んだ。


「あっはっは。すまなかったね。もうしませんよ。今回は、話に聞いていたアランの孫が来たので、顔合わせの機会が欲しかったのですよ」


「えっ? アラン様のお孫さんだったのですか? それで先生、その少年は、どうでしたか?」


(アラン様のお孫さんか……そう言えば、数年前、息子さん夫婦のお子さんに祝福をしたっけな……。もしかして、あの子が来たのか……)


「うーっん……将来に期待すると言う評価ですね。しかし、中々将来が面白そうですね」


 私はフィデリオ君の評価を聞かれたので、とても弄りがいがありそうな意味で答える。


聖装騎士団長(・・・・・・)で、現役の聖剣使いの先生に面白そうと言わせるなんて……その子は、凄いですね……」


 彼は左手で腹部を抑え、右手を顎の下に置き少しフィデリオ君に興味を持ち感心する。


「ジェルマー君、確かに私は現役の聖剣使いでありますが、騎士団長は辞めていますよ。だから元を付けなさい、元を。さてと、我々も帰って夕飯を頂くとしましょう」


 私達は、夕飯を頂きに神殿に向かいゆっくりと歩き出した。


side out ベルボ修道士

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