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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第6章 一期一会の魔法学園
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6-48 想定外だった事

 お腹をさすりストレスで頭を掻きながら視線を晒すフィデリオへ視線が集まる。これに関しては本当に想定外な出来事だった。


「つまり、学園内に居る大多数がリオの事を倒すべく邪悪と認識しているから結果として懇意にしているエリザベート様が原作通りに悪役の立ち位置に居るって事かっ……!!」


「……うん、その認識で良いよ」


 改めて友人の口から言われると心にダメージが来る。俺の心はボロボロだった。


「それでは、リオ兄様の対応が間違っていた……と言う事でしょうか??」


「いえ、そうではありませんわ。リオの行動は結果しては現状の最善であると言えますわ」


「まぁ、想定していた予定が外れまくった結果の偶然なんだけどね……」


 たははっと力無く笑う。自分自身の事なのに呆れてモノが言えない状態だった。


「例えば私を当初の予定通りに不運な令嬢として最終的に勘違いを解く為にはそれなりの人数の味方が必要ですわ。それこそ平民や貴族、教師を問わない学園の2/3以上くらいは必要と踏んでいますわ」


「その人数を味方にするには学園に蔓延している思想や主義の問題を根本的に解決する事が1番早いと考えていた」


「まずは獣人差別主義です。この問題は後の魔法至上主義とも関連する事ですが……種族的に魔法が上手く使えない獣人の全体的な改善、つまり魔法習得率の向上が必要ですわ」


「だから、俺が平民側からエリーさんが貴族側から獣人を擁護している立ち位置のまま人脈形成が必要だった」


「それは何故でしょう……??」


 シャルロッテは素直に疑問に思った。彼女も王族の職務で人脈形成を行っていた経験がある。


 本音と建前を使えば良い所を使わない2人に対して何故使わないのか? と言う疑問になったのだ。それはクリルも同じだった。


「例えばだけど……シャルル、君が何か強い思想やこだわりがあったとするよ。それで仲の良い友人を作ったけど実はその友人は君に近づく為の偽ってその思想に共感しただけだった。その場合、君はどう思う?」


「……少なくとも良い気分ではありませんわ。なるほど……そう言う事ですの」


 社交界で行われる本音と建前であるがそれが虚偽だった事を想像すると彼女は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ嫌悪感か感じられた。


「そうだ。人によっては裏切られたと思うだろうし、不信が不審に代わり疑念へと移行すればその後の関係に修復不可能な致命的な罅が入る事も考えられる」


「確かに……。リオ兄様達はそう言う危険性を前以て避ける為に初めから自身の立場を明らかにした、と言う事ですね」


「正解だ、シャルル。問題の解決を行う以上、初期の段階からある程度の学園内の獣人達やそれ以外の人種達とも関わりが必要だ。


 その場合、仮に徹底的に獣人と友好関係であると言う事を秘密に動いたとしても何処でそう言う噂を立てられるか不安要素が常に付き纏う」


「それにリオの所属していた元一団、夕闇の星座団には人種なんて気にしていないと言わんばかりにルカやローズと言う獣人が所属している事は簡単に調べられるんですわ」


「幸い俺の脱退理由も広まっていないないから痴情のもつれからの脱退し、その一件で獣人に対する考えが変わったと反論出来なくはないけど……」


 俺は今まで静観に貫いたエリザベートの護衛であるユルグとロダンへチラリッと視線を送った。彼等も俺の言い淀んだ事を察して話を続けた。


「確かに、その様な理由で脱退したのならお嬢様の名誉を傷付ける可能性は高い」


「エリザベートお嬢様はジャクソン王子と婚約関係にある。そのお嬢様を護衛するフィデリオ殿が女性関係で問題があるにも関わらず護衛となれば……」


「男女の関係を勘繰る連中も出てくるでしょう。そして、仮にお嬢様を貶めたい連中が居たとすれば、そう言う類の噂は致命的な汚名へとなり得るでしょうな」


 バルダーレス学園長みたいな友人や親戚付き合いの感じの勘ぐりでは無い。貴族の勘ぐりは誹謗中傷や名誉毀損の類だ。


「少なくとも学園内でジャクソン王子がお嬢様を冷遇したと言う認識が無い限りは挽回は難しいと考えます」


「そう言う事ですわ。正直そんな下らない事で時間を費やしたくありませんわ……」


 想像しただけで頭が痛くなると言わんばかりにエリザベートは頭を抱えながら大きくため息をこぼした。


「でも、それが人間関係で1番厄介な事でもあるから迂闊に噂されたくは無いな……。さて、そう言う噂が立てられた時のお二人さん、その感想をお聞かせ願えるか?」


「いや〜ん! ボクってばモテモテ〜!!」


「うっわぁ……」


 年頃の乙女の様に悪ふざけ込みで恥じらうローズとドン引きするルカの2人は対照的だった。


「うっわぁ……ってなんだよ!? 流石のボクも傷付くんだよ!?」


「はいはい、乙女乙女っすね……」


「もう! そんな事を言うと女の子にモテないんだぞー!」


「いや、別に今更モテてもっすよ……」


 愛称ルカ事、ルカロディウスはリオと出会って冒険を重ねる中で少しずつ人間不審が改善したが、それでもやっぱり過去の傷により女性不審が少しあった。


 友人であるフィデリオの様に好きな女性へアプローチや想いを考える度に脳裏に浮かぶ前の一団の出来事が過っていて消極的になっていた。


 そう言う意味ではローズも似た様な経験をして来たが、これだけハッチャケたのは彼女にとって今の仲間達は良い人間関係だったからだろう。


 2人の漫才じみた態度に笑いが起こる。凄く重かった空気が少し和らいだ。


「まぁ、そう言う事だ。ちなみにだが俺の悪名は最近強まってな……。ピクシーとの関係崩壊、あれが引き金になったのは単純な俺の思慮不足だろうな……。


 俺自身はピクシーとはそこまで親しくしていないし入学試験から距離も取って接していた。だから、この前の授業で彼女があそこまで怒るとは思っていなかった……。


 当然、そこは失敗したなぁと反省しているつもりだ。俺に取っては知人の1人くらいの認識だったが、まさかそこまで俺に入れ込んでくれているとは……。複雑な気分だ……」


 ステータスにあった好感度チェックにも+だったボルトスやミルクとは違い、あの時既に-だったから縁が切れたと勝手に思っていたから余計に複雑な気持ちだった。


 結果としてみれば俺は彼女の面子を潰したことになる。それは俺を友人に思う彼女にとっても酷い事だしその後の対応も裏切りと思われても仕方ない事だった。


「彼女は私達貴族クラスでも一目を置かれる存在だったわ。可憐な容姿は勿論だけど、快活で人懐っこい性格や魔法に対する真摯な態度も評価されていたわ」


「当の本人は過去に貴族となんかあったらしいから流石にアメリア派と繋がらないと思いたいけど……」


「十中八九違うでしょうね。彼女、交流会の時にジャクソン王子やアメリア達と一緒の一団だったわ」


「つまり、旧態依然の貴族達とアメリア派は違うと間近で感じ取った訳か……。


 それじゃ、あの時どう言い訳して取り繕ってもどの道衝突は免れなかったって事か……。上手くいかんな……」


 まさか、ピクシーの事にこんなにも頭を抱える事になるなんて微塵も思って無かっただけに反省した。

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