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探検の書 [祝780,000PV突破!]  作者: 火取閃光
第5章 魔法公国
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5-40 再会

 二ヶ月振りの再会。


 だが、俺自身としてはもっと長く感じた。


 それほど、迷宮内生活が過酷で濃密だったのだと改めさせられた。


 俺は彼等へ、なんて謝れば良いか言葉を探した。言葉が詰まりながらも、決心して話しかけた。


「……ひ、久しぶり、だね……。その「久しぶり、ですって……!!」 っ!?」


 冷たく、静かな怒りを燃やしながら、ファーラは俺の言葉を遮った。そして、仲間達をしっかりと見ると、全員似たり寄ったりの表情を浮かべていた。


「……今まで、何してたんすかっ……! リオッ!!」


「っ!? ご、ごめ「謝罪は聞いていないっす!!」 っ!?」


「本当に、何していたんだよ! ボク達がどれだけ心配したと思ってんの!?」


「……ったく。何が"気持ちを整理する為に独りにさせて下さい。探さないで下さい,,ですか……! こんな置き手紙一つで、私達が納得するとでも思っていたのですかっ! 馬鹿にするのも大概にしなさい!!」


「そ、そんなつもりは……!」


 仲間達の憤りは正しい。その為、彼等の言葉を否定しようにも、その後に続く言葉が思い浮かばない。


「リオ、貴方があの戦いでどれだけ傷付き、悲しさと怒りで頭がグチャグチャになっていたか、私達にも分かるわ……。でも、貴方は私達の団長よ?


 そして、私達は貴方の仲間よ? そんなに私達が頼らないかしら……!? 団長が、仲間が苦しんでいるのに、支えられないくらい、私達は信用出来ないかしら!?」


「そ、そんな、訳、無いだろ……!」


 彼等からここまで心配されたのは、純粋に嬉しく思う。それに、彼等の事は人間性を含めても信用は出来る。しかし、同時に、それとこれは別だと思い、気持ちが鬩ぎ合う。


「それなら、リオが隠している、言えないでいる事って何っ!? エリザベートさんと共有している、私達に言えないでいる隠し事って何っ!?」


「……」


 彼等は中途半端とは言え、俺やエリザベートが抱える転生者問題に関わっている。


 巻き込んだ手前、俺にはその全てを伝える義務がある。しかし、同時に、俺達を転生させたであろう邪神やその手下達は、強大で邪悪とも呼べる存在だ。


 伝えると言う事は、彼等の逃げ道を断つ事に他ならない。俺は彼等が好きだし、幸せになって欲しいとも思うからこそ、安易に伝える事が正しくのか分からなかった。


「何で黙るんすかっ……!? 答えるっすよ! リオ!!」


「ぐっ……!」


 迷い、躊躇い、沈黙を貫いていると頬にダメージ負った。


 数メートル吹き飛んで、ようやく止まった時に正面を向くと、そこには俺を殴りつけた姿勢のルカが、泣きそうな表情でこちらを睨み付けていた。


「強硬手段っす……! リオが隠し事を言うまで、殴るのをやめないっすよ……!!」


 ルカがそう言うと、側に居るファーラやローズ、ギル達も構えて戦闘体制に入った。


「ぺッ……。お前等、ふざけんなよっ……!!」


 歯が折れたのか、口から血が流れ落ちるのを拭きながら、俺は怒りを露わにした。


「「「「っ!?」」」」


 大地に亀裂が入る。


 空間を押しつぶさんとするその原因は、フィデリオの魔力威圧だと知りルカ達は、冷や汗が垂れた。


「確かに、お前等の言う通りだ……。二ヶ月前の対応が、正しかったとは言わねぇ。お前等を心配させた事や隠し事をしている俺が悪いとも思う……。


 だがなっ! 俺にだって、そんなの分かってんだよ!! お前等だって人に言えない事の一つや二つ、あんだろ!! 俺だってな……全部ぶちまけた方が楽だって分かってんだよ!


 でもな、異世界転生(これ)は、そんな単純な話じゃねぇんだよ……! 信用とか、信頼とかじゃなくて、言いたくても安易に言えない事なんだよっ……!!


 それなのに……それなのにっ……!! 何も知らない奴等が、上から物言って、勝手な事ばかり言いやがってっ……! 挙げ句の果てに、"言うまで殴る,,だぁ……?


 上等だっ……! 実力の差を今一度、分からせてやるっ……! かかって来いよ!!」


 そして、俺達は気の済むまで喧嘩した。


 Gランク迷宮を踏破した俺と、俺を探しにGランク迷宮を駆け回った仲間達。実力差自体は、そこまで開いていない。


 しかし、踏破したか、していないかのほんの少しの差がこの時は顕著に出ていた様で、四対一の喧嘩は拮抗していた。


 俺は仲間を殴り、仲間達から殴られる中、初めて仲間達と本当の意味で[仲間]になれた気がした。


 今までは、ビジネスライクとまでは言わないけど、一歩引いた所から仲間達と接していた気がしていた。


 俺は多分、仲間達に嫌われて、離れたく無かったんだと思う。それほど、彼等が好きだった。


 異世界転生なんて特殊な経緯で生まれ直さなければ、と後悔するほど仲間達が好きなんだと気付かされた。


 喧嘩の勢いも次第に弱くなる。


 お互いに色々あって心身ともにボロボロだ。


 息も絶え絶え、肩で息をする。


 顔や身体はアザだらけ。


 もう流石に、殴り合う気力は無い。


「(……もう、(コイツ)等との関係は終わりか……。嫌だな……)」


「往生際が、悪いっす……!!」


「いい加減……話してよっ……!!」


 俺は彼等の本気の目を見て、諦めに近い感情を抱き構えを解いた。


「……分かった、分かったよ! 話せば良いんだろっ……!」


「やっと……話す気に……」


「手のかかる……団長ですね……」


「俺は……俺とエリーさんは、別の世界から転生した存在なんだ……」


 俺は正座をして、まるで懺悔でもする様なか細い声で隠し事を伝えた。

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